京都におけるWikipedia TownとWikipedia ARTSの取り組み

Outside viewpoint
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京都永運院におけるWikipediaタウンの様子
Photo by Kumiko Korezumi, freely licensed under CC BY-SA 4.0.

2012年にイギリスのモンマスから始まったWikipedia Townですが、日本では少し違った内容で各地で取り組まれるようになってきました。2013年2月に横浜市で開催されたのをきっかけに、伊那市(長野県)森町(北海道)京都市など各地での取り組みが始まっています。今回は、私もよく参加している京都の事例をご紹介します。

京都では、2014年2月のインターナショナルオープンデータデイ京都会場の開催をきっかけに、オープンデータ京都実践会というグループを運営主体として「京都まち歩きオープンデータソン」というイベントを2か月に1回くらいの頻度で実施しています。内容は、京都のまち歩きを行い、地域の情報をWikipediaに編集するWikipedia Townと、OpenStreetMapのマッピングパーティを組み合わせることが多く、参加者はどちらか興味がある方を選択し、それぞれの編集を行います。OpenStreetMapは、2004年にイギリスで発足した、自由に利用できる地図を誰でも編集できるプロジェクトで、Wikipediaの地図版と紹介されることもあります。

まち歩きでは、地元のボランティアガイドなどのレクチャーを受けます。参加者はまち歩きを通じて、地域の歴史を知ったり、意外な魅力を発見し、そういったことをWikipediaの記事に書きたいと思うわけですが、Wikipediaは人から聞いたことを記事には書けませんので、図書館の資料を参照しながら記事を編集し、出典を明記します。そのようなWikipediaを編集する上での注意事項はベテランのウィキペディアンがレクチャーしてくれます。

イベントを運営するオープンデータ京都実践会のメンバーは、ベテランのウィキペディアンや、OpenStreetMapのベテランマッパー、オープンデータの推進活動に関わっている人、地域活動に関わっている人、IT関係者などがいますが、私はライブラリアンとして参加しています。事前に記事になりそうなテーマに関連した資料を用意したり、地域資料の調べ方のレクチャーを行ったり、当日のレファレンスにも対応しています。公共図書館は、地域の資料を重点的に収集していますので、Wikipedia Townの会場としては最適で、京都まち歩きオープンデータソンではこれまでに3回京都府立図書館を会場として実施しました。今年は京都の伏見地域をテーマとして、9月13日に藤森神社を会場として1回目のイベントを開催しました。この時は、京都市立図書館からたくさんの地域資料をお借りしました。

Wikipedia Townでは、今までWikipediaを閲覧するだけだった参加者が、地域の情報を自分が編集して、世界に向けて発信できたということで、喜びを感じる人が多いです。また、様々な参加者がグループになって、協力しながら一つの記事を編集する作業は楽しく、パソコンが不得意な人も助けを借りながら、まち歩きで撮影した写真をWikimedia Commonsにアップロードしたり、記事の内容について議論したりと、それぞれの役割を果たしながら作業を行っています。このようにしてできたWikipediaの記事は、地域にとっては新たな地域資源や観光資源となります。

今年の4月には新しい取り組みとしてWikipedia ARTSというイベントを開催しました。Parasophia 2015(京都国際現代芸術祭2015)の主会場となっている京都市美術館で現代芸術を鑑賞し、美術館の向かいにある京都府立図書館で、Parasophiaに出展しているアーティストの情報をWikipediaに編集するという内容です。出展作品を鑑賞し、お気に入りの作品のアーティストについて図書館の資料などで調べてWikipediaの記事として編集することで、現代アートをより身近にそして深く理解するきっかけとなったのではないでしょうか。

様々なバックグラウンドを持つ人たちが集まって、お互いに学び合い、対話しながら地域の情報を編集、発信するWikipedia Townは、地域への愛着を育み、人が出会い交流し、新しいものを生み出すイベントでもあります。また、その成果を世界中の人が自由に利用できる、そのようなWikipediaの仕組みを活用して、これからも魅力的なイベントを開催していきたいと思います。

是住久美子京都府立図書館所属ライブラリアン

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