ウィキペディア編集者のお手製マニュアル集

この記事では、日本語版ウィキペディアの編集者たちが作成した、便利なマニュアルをいくつか紹介します。記事の書き方に悩んでいるウィキペディア編集者や、エディタソンを開催したい図書館関係者、ウィキペディアについての調査を行うジャーナリスト・研究者の参考になれば幸いです。

Wikimedia Commons [[File:Knitting with hands by Shagil Kannur.jpg]] (Shagil Kannur, CC-BY-SA 4.0) https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Knitting_with_hands_by_Shagil_Kannur.jpg

参考文献をまとめたマニュアル

はじめに、参考文献をまとめたマニュアルを確認してみましょう。ウィキペディア編集に役立つ資料や、その収集方法が紹介されています。

まずは、日本語版ウィキペディア管理者の1人であるネイさんが作成された [[利用者:ネイ/参考文献]] に目を通してみましょう(原稿執筆時に参照した版はこちら)。インターネットで無料で手に入る資料がリストアップされている、大変便利なマニュアルです。主に紹介されている資料は、ネイさんの執筆分野である、イギリスで活躍した人物に関係するものですが、昔のブリタニカ百科事典など、他の分野の編集者の役に立つものもあります。

続いては、要塞騎士さんの利用者ページの「主に使用している参考文献」節に目を通してみましょう(原稿執筆時に参照した版はこちら)。このページでは、新聞データベースや Web OYA-bunko などが紹介されています。単なる列挙にとどまらず、どの図書館でデータベースを利用可能かについてもまとめてある、親切なマニュアルです。要塞騎士さんの執筆分野である各種事件に限らず、さまざまな分野の調査に役立つことでしょう。

なお、私もウィキメディア財団の公式ブログ Diff にいくつかマニュアルを寄稿しています。ご笑覧ください。

記事の書き方についてまとめたマニュアル

この章では、具体的な執筆方法をまとめたマニュアルを紹介します。

まずは、さえぼーさん(シェイクスピア研究者の北村紗衣さん)が作成された [[利用者:さえぼー/人物記事フォーマット]] を確認しましょう(原稿執筆時に参照した版はこちら)。このマニュアルでは、人物記事を作成する際の章立てや、出典の表記方法が例示されています。なお、このマニュアルは、女性に関するウィキペディア記事を充実させるイベント WikiGap のために作成されたものです。

遡雨祈胡さんが作成された [[利用者:遡雨祈胡/記事の書き方]] というマニュアルもおすすめです(原稿執筆時に参照した版はこちら)。図書館の使い方から出典の収集方法、題材の決め方まで幅広く説明された、素晴らしいマニュアルです。なお、このマニュアルは、Swanee さん、Kinstone さん、私 (Eugene Ormandy) による対談記事を受けて作成されたものだそうです。ありがたい限りです。

また、みっちさんが作成された [[利用者:みっち/記事の書き方]] も、興味深いマニュアルのひとつです(原稿執筆時に参照した版はこちら)。記事の構成や出典の表記方法などのほか、ウィキペディアに関するみっちさんの意見・批判等も記されています。

なお、私が参加している早稲田Wikipedianサークルも、文学作品記事の書き方についてのマニュアルを作成しています。記事を改善する方法についてのマニュアルなので、上記のような「ゼロから指導する」タイプのものとは少し異なりますが、どなたかのお役に立てば幸いです。

授業用マニュアル

ウィキペディアは、大学などでリテラシー教育の教材として活用されることもあります。その際、教員が授業用のページをウィキペディアに立項します。先述のさえぼーさんが作成された [[利用者:さえぼー/英日翻訳ウィキペディアン養成セミナー]] や(原稿執筆時に参照した版はこちら)、Maimaikokekokko さんが作成された [[利用者:Maimaikokekokko/2022年度日本文学科情報検索演習]] などです(原稿執筆時に参照した版はこちら)。

このような授業ページは、受講者以外も活用することがあります。例えば Kinstone さんは先述の対談にて、さえぼーさんの授業ページを通してウィキペディアの方針や記事の書き方を勉強したと語っています。

私は北村さんの「英日翻訳ウィキペディアン養成セミナー」のページに掲載されていた各種マニュアルを読んで学んだので、「書きながら覚える」というより、初めからある程度体系的に編集スキルを身につけられたのではないかなと思います。

最初に記事を執筆したときは、北村さんのゼミの受講生が作成した記事のソースコードを印刷し、それを真似しながら書いていました。このときソース編集で一通りの編集方法を覚えたので、その後もビジュアル編集機能は使っていません。

なお、早稲田Wikipedianサークルも、初心者向けレクチャーのレポート記事を作成しています。こちらもどなたかの参考になれば幸いです。

ウィキペディアの歴史についてまとめたマニュアル

記事の執筆に関するマニュアルのみならず、日本語版ウィキペディアの歴史についてまとめたマニュアルも存在します。

なんといっても、[[利用者:青子守歌/ウィキペディア20年の歴史]] が圧巻です(原稿執筆時に参照した版はこちら)。これは日本語版ウィキペディア管理者の1人である青子守歌さんが、ウィキペディア20年イベントに際して作成した年表で、様々な観点から日本語版ウィキペディアの歴史を学ぶことができます。また、Suisui さんが同イベントに寄せたコメント [[利用者:Suisui/Wikipedia20周年に寄せて]] も、黎明期のウィキペディアの雰囲気を知ることができる、非常に興味深い資料です(原稿執筆時に参照した版はこちら)。他にも、ウィキペディアに関する方針の策定過程を Yapparina さんがまとめた [[利用者:Yapparina/方針化・ガイドライン化過程調査結果]] も、ウィキペディアの動向を知る上で大変役に立ちます(原稿執筆時に参照した版はこちら)。

なお、早稲田Wikipedianサークルも活動の歴史をまとめています。ご笑覧ください。

まとめ

この記事を書くにあたり、改めて各種マニュアルに目を通しましたが、とにかく面白かったです。素晴らしいインフラを整備してくださったウィキペディア編集者の皆様に、心より感謝申し上げます。