稲門ウィキペディアン会勉強会 #1 管理活動のモチベーションなど

2023年3月、稲門ウィキペディアン会は第1回勉強会を開催しました。勉強会では、ウィキペディアの管理活動のモチベーション、ウィキメディア・ムーブメントに関する言論の少なさ、ウィキメディア・プロジェクトに関するメタデータについて意見を交わしました。

参加者

ウィキペディアの管理活動のモチベーション

まずは、ウィキペディアにおける「管理活動」のモチベーションについて話し合いました。管理活動とは主に、誤字の修正や記事の削除といった、記事執筆以外の活動を指します。

はじめに、多数の記事を執筆しつつ、日本語版ウィキペディアの管理者(ボランティア)の1人としても活動するネイさんが、管理業務は「気づいたらやる」程度のモチベーションで行っていると述べました。

それを受けて Eugene Ormandy が「ウィキペディアは執筆者だけでは成立しないプロジェクトである以上、管理活動はとても重要だ」と指摘し、「記事の執筆は行わないが、管理活動は行う」という利用者もコミュニティにとって欠かせない存在だとコメント。

また、McYata さんが「メインページ新着記事良質な記事といった、記事を執筆する利用者のモチベーションとなる仕組みは複数存在する一方、管理活動を行う利用者にとってのモチベーションとなるものは、感謝賞くらいしかないのでは」と指摘し、そのような利用者がやりがいを感じ、継続的に活動してくれるような仕組みが生まれてほしいと述べました。さらに、感謝機能の使用をもっと奨励したり、多機能化(具体的な感謝ポイントを選択肢から選べるなど)したりした上で、感謝が送られた数や、感謝を送られた人数を集計できたら面白いかもしれないともコメント。

なお、管理活動のモチベーションとなりうる機能について、後日ネイさんが以下のリンクを共有してくれました。

ウィキメディア・ムーブメントに関する言論の少なさ

続いて、ウィキメディア・ムーブメントに関する言論の少なさについて、Eugene Ormandy が意見を述べました。

Eugene Ormandy はまず、ウィキペディアやウィキメディア・コモンズなどの動向(ウィキメディア・ムーブメント)に関する日本語の言論・報道が極めて少ないと指摘し、知名度や影響力を考慮すれば、ツイッターやフェイスブックと同程度の報道があって然るべきとコメント。

その上で、「ウィキメディア・ムーブメントに関する報道等を増やすためには、報道機関が参照できる一次資料を作成する必要があると思い、ウィキメディア財団のブログ Diff に寄稿するようになった」と述べました。

なお、実際に寄稿した Diff 記事は以下のとおりです。ウィキペディア編集イベントの記録や、ウィキペディア編集者の対談記事などを作成しています。

また、「図書館論におけるウィキペディア」という記事について「多くの人に読まれる記事ではないし、調査も不十分だが、自分より優秀な研究者等が、より詳細な研究をするための踏み台となれば嬉しい」という思いで執筆したと紹介しました。

ウィキメディア・プロジェクトに関するメタデータ

勉強会では、ウィキメディア・プロジェクトに関するメタデータについても話が及びました。ウィキデータウィキメディア・コモンズの各種事例を参照したのち、ウィキメディア・プロジェクトのメタデータを作成する場合「素人がメタデータを作成する以上、表記ゆれや誤記の恐れがある」「メタデータを付与されるコンテンツの内容が大幅に変わる可能性がある」という2点について注意する必要があるだろうという結論になりました。

また、ネイさんは「ウィキペディアについての計量的な調査を本格的に行う場合、[[Wikipedia:データベースダウンロード]] を活用する方法もある」とコメント。この機能を利用するとウィキペディアの記事をすべてダウンロードでき、データ分析に活用できます。なお、特定のソフトウェアを用いてオフラインでウィキペディアを閲覧することもできます。

さらにネイさんは後日、テータベースのほかに、メディアウィキの [[API]]というページも紹介してくれました。これはプログラムでウィキメディアのデータを取得する手段の1つで、範囲や条件を指定できるので、一気にすべて入手するデータベースダウンロードとはまた異なります。なお、APIを使った分析の一例として、投稿記録ページ最下部の「編集状況」があります。

まとめ

様々なテーマについて学ぶことができた、大変有意義な勉強会でした。個人的には、ネイさんが教えてくれた [[Wikipedia:データベースダウンロード]] に興味をもちました。これを活用すれば、様々なサービスが展開できるのではないかと思います。

ウィキペディアに興味のある方や、実際にウィキペディアを編集している方にとって、この記事がお役に立てば幸いです。