ウィキペディアタウン士別にオンラインで参加する

2023年5月21日に、北海道士別市立士別図書館にて、地元の風物に関するウィキペディア記事を編集するイベント「ウィキペディアタウン」が開催されました。筆者は現地に赴くことはできませんでしたが、オンラインで少しだけ参加したので、その模様をまとめます。

濃い赤色の部分が北海道士別市。Wikimedia Commons [[File:Shibetsu in Hokkaido Prefecture Ja.svg]] (ja:User:Lincun, GFDL) https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Shibetsu_in_Hokkaido_Prefecture_Ja.svg

イベント概要

[[利用者:さえぼー]] としてウィキペディアで活動する、武蔵大学准教授の北村紗衣さんが、イベントで講師を務めました。地元の方のほか、編集に慣れた関東のウィキペディアンも参加したとのこと。イベントの詳細は、ウィキペディア上のプロジェクトページにまとめられています。

参加の経緯

私も参加したかったのですが、当日に別用があったため断念。そこで、オンラインで参加することにしました。具体的には、イベントの数日前に、士別市に関するウィキペディア記事をいくつか加筆し、プロジェクトページに追記しました。

余談ですが、イベントの数日前には、写真撮影をする予定だった場所の付近でヒグマが出没したようです。「もしかしたらイベントが中止になるかもしれない……」と思ったので、せめて次回につながるような、何かしらの成果物は作っておこうと考え、急いで編集に着手しました。

北村紗衣さんのツイート。ウェブアーカイブはこちら

調査方法

このようなウィキペディア編集イベントにおいて苦労するのは、編集できるトピックを探し出すことです。特に、あまり馴染みのない分野であれば尚更です。実際、私は士別市に行ったことがなく、知識も皆無なので、編集できそうなトピックについての勘はまったく働きませんでした。

これが例えば、私が愛するクラシック音楽についてのイベントであれば、下調べをしていない状態でも「あのピアニストの記事はあまり充実していなかったから、資料Aを使ってBについて加筆しよう」といった道筋がいくつか思い浮かびますが、士別市の場合、全く思い浮かびません。

そのため、情報収集が鍵となります。私が採用した作戦は、まずウィキペディア記事 [[士別市]] の内容を確認した上で、[[Category:士別市]] に収録された記事を閲覧するというもの。つまり、士別市の基本的な情報をインプットしたのち、士別市に関するウィキペディアは現時点でどの程度作成されているのか把握するという作戦です。

日本語版ウィキペディア [[Category:士別市]] 2022年1月9日 (日) 13:46 (UTC) 版。2023年5月21日アクセス。

この時点で編集する記事を確定し、ターゲットを絞って調査を開始してもよかったのですが、上手くいかない可能性が高そうだと感じたので、大まかなキーワードで調査をすることにしました。「早い段階で調査トピックを確定し、特定のキーワードで資料を検索するも、資料がなかなかヒットせず、いたずらに時間を浪費した」という経験を何度かしているので、同じ失敗はしたくないなと考えた次第です。

ちなみに、そのような失敗談の一つは、東京都の荒川区立中央図書館を訪問した時の記事で紹介しています。興味がある方はご覧ください。

調査には、新聞データベースを用いました。具体的には、朝日新聞のデータベースである「朝日新聞クロスサーチ」で「士別」というキーワード検索を行いました。表示された記事は2000本。新しい記事から順に、気になったものを確認しました。

しかし、ウィキペディアに反映できそうな記事はありませんでした。選挙結果や野球大会の結果など、ウィキペディアには反映しにくい、報告記事が多かったのです。

そこで、ちょっとした工夫をしました。記事の表示を「新しい順」ではなく「古い順」にしたのです。これは、新聞記事を活用して何本か記事を作成したことがあるウィキペディアンとしての経験知ですが、昔の新聞記事は、良い意味でも悪い意味でも面白い内容のものが多く、ウィキペディアに活用しやすいのです。

早速、役立ちそうな記事を発見。まずは「北海道・士別に文部大臣賞 全国高校新聞コンクール」という新聞記事を活用して、ウィキペディア記事 [[北海道士別高等学校]] を加筆しました。『士別高校新聞』がコンクールで文部大臣賞を受賞したことについて追記しています。次いで、「マコの北極みやげ 和泉雅子さんが北極の民具類を博物館に寄贈」という記事を活用して、ウィキペディア記事 [[士別市立博物館]] を加筆。タイトルのとおり、役者の和泉雅子さんが、北極の民具類を博物館に寄贈したことについて追記しました。

なお、上記のウィキペディア記事はともに、[[Category:士別市]] を漁った時点で、その存在を確認していました。このような事前調査をしていなかった場合、新聞記事を読んでも「これはあのウィキペディア記事に活用できそうだ」と気付けなかったと思います。

せっかくなので、別のデータベースを活用して、他にも加筆をすることにしました。活用したデータベースは Maruzen ebook Library。このデータベースには、私が在籍する放送大学電子ブック・電子ジャーナルサービスを通してアクセスしました。朝日新聞クロスサーチの時と同様、「士別」でキーワード検索。『北海道文学事典』を活用して、[[桜井勝美]] を加筆しました。士別市文化賞を受賞した件について追記しています。

なお、国立国会図書館デジタルコレクションやその他データベースを活用して、さらに調査をすることもできましたが、そこまでの余力はなかったので断念。言い訳じみていますが、ウィキペディアの魅力は、プロセスさえ適切であれば、断片的な調査であっても社会の役に立つことだと私は思っています。専門知を身につけていない、飽き性な私であっても、ウィキペディアなら改善することができるのです。

まとめ

繰り返しになりますが、ウィキペディア編集イベントにおいて苦労するのは、編集するトピックの選定だと私は感じています。もしかしたら、イベントに限らず、ウィキペディア編集一般について言えることかもしれません。

本稿が、イベントを開催したい方や、編集に悩んでいるウィキペディアンのお役に立てば幸いです。

参考

イベントに際し、まったく知らない分野についてのウィキペディア記事を編集した時の方法論については、下記の記事でも紹介しています。興味があればご覧ください。