東京23区の公共図書館をウィキペディアの編集に活用する #9 豊島区立駒込図書館

東京23区の公共図書館をウィキペディアの編集に活用するシリーズ第9弾。今回は豊島区立駒込図書館を訪問しました。

執筆にあたって

図書館の意義が問われる時代です。出版不況が続き、オープンアクセス化が推進され、人工知能が台頭する現代において、図書館はどのような存在であるべきなのでしょうか。

それを探るためには、図書館の活用記録、すなわち「図書館のおかげでこんなことができた」という記録が、様々な観点から作成される必要があると私は考えています。未来を描くためには過去を知る必要がありますし、過去を知るためには資料が必要だからです。

そのような思いで「東京都の公共図書館をウィキペディアの編集に活用する」シリーズを立ち上げました。このシリーズでは、私 Eugene Ormandy が東京23区の様々な公共図書館を訪問し、その資料を活用してウィキペディアを編集する模様を、ウィキメディア財団のブログ Diff の記事としてまとめます。

本シリーズが、図書館の意義や未来を探るための参考資料となれば幸いです。

調査方針

図書館を訪問する前に、その土地に関するウィキペディア記事数本に目を通し、図書館の資料を用いて加筆修正できそうな箇所の目星をつけます。また、図書館を訪問した際は、その箇所をレファレンスカウンターで示し、役立ちそうな資料を教えていただくこととします。

事前準備

今回は豊島区立駒込図書館を訪問することにしました。訪問に際し、事前に下記のウィキペディア記事に目を通しました。

今回の目標は「[[染井霊園]] に何か出典を追加すること」とします。図書館を訪問する前にとりあえず [[Category:駒込]] は追加しておきました。

図書館訪問

駒込駅にて下車。JR山手線東京メトロ南北線が通る便利な駅です。大きい駅なのですが息苦しさはなく、個人的にはかなり好きな駅の一つです。

Wikimedia Commons [[File:Komagome Station, Tokyo.jpg]] (Eugene Ormandy, CC-BY-SA 4.0) https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Komagome_Station,_Tokyo.jpg

駒込図書館は駒込駅から歩いて3分程度。建物に入るとすぐ、ソメイヨシノに関する展示「ソメイヨシノアーカイブ」がありました。アーカイブには染井霊園の説明もあります。これは期待できそうです。

豊島区立駒込図書館。Wikimedia Commons [[File:Komagome Library, Tokyo.jpg]] (Eugene Ormandy, CC-BY-SA 4.0) https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Komagome_Library,_Tokyo.jpg
ソメイヨシノアーカイブ。Wikimedia Commons [[File:Somei-Yoshino Cherry Archive.jpg]] (Eugene Ormandy, CC-BY-SA 4.0) https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Somei-Yoshino_Cherry_Archive.jpg

図書館は3階にあります。入口の前には色々なチラシが置かれていました。豊島区にあるトキワ荘マンガミュージアムの「デビルマン×マジンガーZ展」のチラシがあるかと思えば、東京都の主催する蚊の講習会のチラシ、さらには神奈川近代文学館の「本の芸術家・武井武雄展」のチラシまでありました。様々な情報が、目につきやすい場所にまとめられているのは素敵ですね。

図書館に入ると、まずは児童書のコーナーがありました。少し進むと「ソメイヨシノライブラリー」なる展示が。その名のとおり、ソメイヨシノに関する本がまとめて置かれています。分類も少し変わっていて「桜と日本人」「全国の桜」「駒込・染井」など、桜に特化したものでした。ちなみに、好きな桜スポットのアンケート結果も張り出されていたのですが、我らが染井霊園は第5位でした。

新刊コーナーも充実していました。気になっていた『ポピュラー音楽の社会経済学』『続・アーカイブズ論』が置かれていて、嬉しかったです。

なお、私が愛してやまないプロレス本はあまり置かれておらず、訪問した日には4冊程度しかありませんでした。もしかしたらプロレス好きが大量に借りているからかな?と思い、駒込図書館のOPACで「プロレス」と検索しましたが、ヒット数はわずか。残念。ただし、他の図書館ではあまり見たことがない馳浩『黒幕』があり、驚きました。

閑話休題。レファレンスカウンターにて「染井霊園の歴史について調べているのですが、ソメイヨシノライブラリーを調べればいいでしょうか?」と質問したところ、いくつか本を紹介していただきました。

  • 伊藤榮洪『ぶらり中山道巣鴨 : 歴史・文学散歩』豊島区、2013年。全国書誌番号:22253981
  • 伊藤榮洪、堀切康司『豊島区史跡散歩』学生社、1994年。ISBN 431141966X
  • 籠谷典子、真珠書院 編『東京10000歩ウォーキング : 文学と歴史を巡る no.28(豊島区 染井霊園・巣鴨コース)』明治書院、2007年、56頁。ISBN9784625624025
  • 林英夫『豊島区の歴史』名著出版、1977年。全国書誌番号:78022085

その後、図書館のPCエリアの利用申請を行い、上記資料を活用してウィキペディア記事を編集しました。『東京10000歩ウォーキング』と『豊島区の歴史』で「歴史」の節を補強し、残りの2冊で染井霊園に眠る著名人に出典付けをしました。無出典で列挙された著名人に、ひたすら出典を付与していくのはなかなか骨の折れる作業でした……。編集の差分はこちら

ちなみに、[[染井霊園]] のウィキペディア記事には写真がなかったので、現地に行って入口を撮影し、ウィキメディア・コモンズにアップロードした上で、ウィキペディアの記事に活用しました。

Wikimedia Commons [[File:Somei Reien, Tokyo.jpg]] (Eugene Ormandy, CC-BY-SA 4.0) https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Somei_Reien,_Tokyo.jpg

まとめ

とても過ごしやすい図書館でした。地域の名物に関する情報がまとめられているのも素晴らしいですね。駒込の街も好きなので、また訪問したいです。