なぜ若者はウィキペディアを編集したがらないのか?

2023年5月18日Malgorzata Gramatnikowska 著(WMPL

ポーランド語版ウィキペディアの年次集会(オフ会)を略称で(W)zlot と呼んでいます。「ポーランド語版ウィキペディア – 春のミートアップ」(ポーランド語)にはポーランド全国から編集者が集まり、興味深く示唆に富んだ講演やパネル討論会、会議を開き盛況でした。その一つにウィキメディア ・ポーランド協会(ウィキポルスカ)提供の「若者とウィキメディア – なぜ若者は私たちのプロジェクトの共同制作に参加しないのか?」という題名のセッションがありました。登壇者はポーランド語版ウィキペディアの編集者層から、最年少管理者のカクペル・シマンスキ氏(16歳 Kacper Szymański)、青少年活動家で研究者のズザ・カルツ氏(21歳 Zuza Karcz)です。両名とも編集経験が豊富なウィキペディアンと対峙し、ウィキメディアのプロジェクト群に若者の参加を阻害する要因について大胆に語りました。まずは両名の診断をご紹介しましょう。

セッション番号RD 98ウィキメディア・ポーランド協会 – 春のミートアップ会場風景(Rdrozd撮影、CC BY-SA 4.0
  1. ウィキペディアの評判があまり良くない点。カルツ氏の指摘では、ウィキペディアは知識源としては二流という考えが、依然として根強く残っています。信頼できる情報源と認めない中等教育校や大学の教員が、生徒にウィキペディアへのアクセスを禁じる事例もしばしばあります。ウィキメディア・ポーランド協会は財団教育チームの活動を通じてこの信念と闘っていて、人々の意識を変えるにはやるべきことが山積みという残念な現状があります。シマンスキ氏によると、ウィキペディアを編集する人たちに対するもう1つの固定観念があるそうです。一般に「本の虫」、オタクと見なされています(この記事の執筆者自身も本の虫なので、それ自体は悪いことではない)。しかしウィキのコミュニティの実態ははるかに多様であると世界に伝えること、「ウィキペディアン」のイメージを変えることには価値があるはずで、ここからシマンスキとカルツ両氏が提案した別の結論につながります。
セッション番号JJ11 Wiosennyウィキメディア・ポーランド協会 – 春のミートアップJcubic撮影、CC BY-SA 4.0
  1. ウィキペディアは〈顔なし〉である点。若い登壇者の専門性から眺めて情報をどう吸収するか比べると、若者世代は年上の人たちと異なる方法を身につけているといいます。生まれたときからSNSがあり、無味乾燥な事実よりも生身の人間が語った物語(ストーリー)を好む傾向があります。ただしウィキペディアで、そういう態度は認められるでしょうか? 百科事典『ブリタニカ』のTikTokアカウントはフォロワー数300万人超という事実を見ると、これが成立すると証左したと言えませんか。若者はインターネット上の知識に娯楽性も求めています。これら両方の要素を同時に与えると一石二鳥です(ただし〈鳥〉の実態はお菓子が詰まったピニャータだと考えてください)。さて、若者がウィキメディアのプロジェクト群の単なる読者から編集者の活動に踏み出すには、例えばハロウィンの決まり文句「お菓子をくれなきゃイタズラするぞ」(トリック・オア・トリート)ではありませんが、見返り(メリット)があれば良いのでしょうか? この質問には、次の点が答えになるはずです。
セッション番号RD 74、ウィキメディア・ポーランド協会 – 春のミートアップRdrozd撮影、CC BY-SA 4.0
  1. ウィキペディアやウィキメディアのプロジェクト群を編集しても何のメリットもない点。どうも、そう感じるようです。カルツとシマンスキ両氏によると、現在の若者がボランティア活動に参加するかどうか選ぶとき、決め手はその組織がどんな利益を提供しているかになりがちです。中高生の場合、学校で内申書の評価点が加算されるとか、大学生はインターンシップ修了で単位が取れるなら、ボランティア活動はその選択肢の1つです。あるいは、すでに社会人になった人なら、そのような活動を Linkedin に載せたり、履歴書に書けるかどうかに意味があります。しかし財団研究チームの指摘によると、ここでは利点追求ばかりでなく価値観も重要な要素です。より良い世界を主体的に築きたい、自分たちはすべての人の役に立てると感じたら、若者には動機になります。その上で、自分はどんな知識を貢献できるかと自問しては? ウィキペディアのすべてはその1点に集約されます。ウィキメディア運動のキャッチフレーズから使命そのものが読み取れます。「地球上のすべての人が人類の知識の総和にアクセスできる世界を想像してみてください……」 – 自分一人でも、その理想をもくもくと実現できるのです。ただ、それを自分自身で認めようとしても、何かが欠けていて動けないなら、それは何か。若い参加者を新しく巻き込もうとする場合、相手がこのユニークなコミュニティの一員になりたくなるような、グッとくる〈物語〉(ストーリー)なのです。若い人たちに、君たちは重要な存在なんだと伝え、皆で協力し合うとこんなことが達成できるよと見せていきませんか。

以上、私たちの経験を皆さんと共有できて嬉しく思います。何か話したいことがある皆さん、直接、私に連絡してください、ご遠慮なく。malgorzata.gramatnikowska@wikimedia.pl