お前はそれでいいや : Eugene Ormandy と Takenari Higuchi のウィキペディア雑談会

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稲門ウィキペディアン会Eugene Ormandy です。2024年9月27日、早稲田WikipedianサークルTakenari Higuchi さんと食事をしながらウィキペディアについてのおしゃべりを楽しんだので、その模様を抜粋して紹介します。

Uraniwa, CC0
Takenari Higuchi, CC0

選挙のウィキペディア記事

Eugene Ormandy: つい先ほど自民党総裁選挙の結果が発表され、石破茂氏が第28代総裁に選出されましたね。数日前には立憲民主党でも野田佳彦氏が新代表になりました。今後、日本の政治に大きな動きがありそうです。

Takenari Higuchi: 私は選挙好きのウィキペディアンなので、選挙そのものの動向はもちろんのこと、選挙がどのようにウィキペディアに反映されるかにも関心があります。そのため、日本語版や英語版ウィキペディアの記事をしばしばチェックしています。

選挙記事を読んでいて、個人的に気になるのは構成ですね。特に英語版ウィキペディアでは「候補者確定に至るまで」「候補者の表」「選挙の動向」という構成の記事が散見されるのですが、途中で表が挿入されることで、選挙全体の流れを追いにくくなっているのではという印象を受けます。

Eugene Ormandy: なるほど。私だったらリード文に候補者一覧表を挿入して、沿革について連続して書くかなと思いますが、実際の記事を見ていないのでなんとも言えませんね。いくつか読んでみようと思います。

Takenari Higuchi: 選挙記事の編集においては、重要な政治家たちの人間関係をどの程度遡って、どの程度詳細に書くかも悩みどころですね。たとえば羽田孜小沢一郎の切っても切れない関係などです。ある事件における当事者間の関係をどの程度遡って書くかは、Eugene さんがお好きなプロレス分野の記事でも難しいポイントですよね。

Eugene Ormandy: たしかに、いわゆる「コラコラ問答」に至るまでの長州力橋本真也の確執を詳細に書こうと思ったら、いくらページがあっても足りなさそうです!

事件のウィキペディア記事

Takenari Higuchi: そういえば、アントニオ猪木がプロレスラーに「お前はそれでいいや」って言った事件って何でしたっけ。

Eugene Ormandy: 2002年に札幌で行われた、いわゆる「猪木問答」です。あれ本当に面白すぎますよね。

(このあと、頼まれてもいないのに Eugene Ormandy が数分間にわたり猪木問答を熱演)

猪木問答が発生した北海道立総合体育センター。2007年撮影。(もんもん、CC0)

Eugene Ormandy: プロレスファンのウィキペディアンが直面する難しさの1つは、猪木問答のようなプロレスにおける「事件」をどのような名称で立項するかです。先述の「コラコラ問答」についても確たる名前があるわけではなく「ナニコラ問答」「タココラ問答」など、様々な呼ばれ方がされていますからね。「正式な名前がつけられているわけではないものの、そこそこ知名度が高く、さらに歴史においてもそれなりに存在感がある事件」をどのように名付けるか、そしてどの程度記述するかは、ウィキペディアに限らず書き物一般に共通する難しさでしょうね。

インタビューの難しさ

Takenari Higuchi: 私は友人と2人でポッドキャスト「ミリしらBL大辞典」を運営しているのですが、対話をコンテンツ化するのってやっぱり難しいですね。たとえば話し相手から予想外の反応が返ってきた際、ちょっとうろたえてしまうことがあります。

Eugene Ormandy: ポッドキャストとは勝手が異なると思いますが、私もウィキペディアンのインタビュー記事の作成という「対話のコンテンツ化」をしばしば行っています。その際に意識しているのは、「事故が起こらないよう事前に台本を書くが、その場のアドリブに対応できるよう台本の存在をある程度忘れること」と「基本的に自分を消し、相手の話を引き出すための手段としてのみ自分の話をする」という2点ですね。

Takenari Higuchi: なるほど。たしかに台本を意図的に忘れておくのは効果がありそうです。また、相手を引き立たせるために自分の振る舞いをコントロールするという姿勢は、非常にプロレス的ですね。後進の育成のために自身のキャラクターを巧みに変化させる佐山聡(初代タイガーマスク)を思い出しました。

Eugene Ormandy: あの佐山聡と比べられるのは大変恐れ多いのですが、たしかに私のインタビュー姿勢は、プロレスラーから大いに影響を受けています。

彼らにとって重要なのは会場を盛り上げることであり、それを評価した団体からまた契約してもらうことです。試合の勝敗ももちろん大事ですが、最も重視すべき目標ではありません。

私はこの考え方をインタビューにも適用しています。最も優先すべきは、インタビュー相手から面白い話を引き出すこと、そしてインタビュー記事を価値あるものにすることであり、私がウィキペディアに関する私見を延々と語ることではありません。また、インタビュー現場において、相手の話を引き出す手段として自分の話をした場合であっても、記事にまとめる際に自分の話を大幅にカットすることもままあります。下記の記事はその典型例ですね。

ちなみに、私が尊敬するプロインタビュアー、プロレスライターの吉田豪さんも、著書でインタビューをプロレスに喩えています。

ボクがよく比喩に使うように、インタビューはプロレスなのである。

プロレスとは世間からは「どうせ八百長でしょ?」と舐めてかかられたり、ファンもファンで「真剣勝負だよ!」という幻想を持ちすぎたりで正しく理解されることの少ない特殊なジャンルなんだが、そのどちらでもあるしどちらでもない、なんとも微妙なバランスがインタビューに似ているとボクは思う。

いや、実際「どうせこんなの八百長なんだから」とばかりに、何の刺激も面白みもない宣伝インタビューに徹する人もいるし、「真剣勝負なんだから!」とばかりに取材相手にガチを仕掛けにいって本気で怒られる人もいる。

でも、いいインタビューとは、緊張感のある攻撃を仕掛けたり、相手のキツい技を受けきったりしつつも、最終的にはどちらにもプラスになるようないい着地点に持っていく、そういうものだとボクは思っている。

--吉田豪『続 聞き出す力』日本文芸社、2016年、22-23ページ。

Takenari Higuchi: Eugene さんはインタビューの際「もっと自分の話をしたいのに!」と思うことはありませんか?

Eugene Ormandy: 全くないですね。というのも、自分の考えなどはブログ記事などでいつでも自由にまとめられるからです。インタビューの際は「インタビューでしかできないこと」を追求したいですね。あえてたとえるなら、1人で書くブログ記事は自分の美意識(勝利)を追求する「総合格闘技」で、インタビューや対談などは相手の良さを明示してオーディエンスを盛り上げる「プロレス」という感じでしょうか。

Takenari Higuchi 今後の目標

Eugene Ormandy: Takenari さんの今後の目標ってあります?

Takenari Higuchi: 他の人が模倣できるような構成の良質な記事を書きたいなという思いがありますね。現在「良質な記事」に選ばれている記事を読んでみると、他の記事で真似しにくい構成となっているものが散見されます。この状況は改善したいですね。

Eugene Ormandy: 今後のご活躍も楽しみにしてます。今日はありがとうございました。

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