ウィキメディア財団執行部による2025年の考察

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みなさん、こんにちは。

新年を迎えるにあたり、いつものように私はみなさんにご報告したいと思います。2025年には起きるであろう多くのことがあります。生成AIのもたらす急激な変化、アメリカ合衆国や他国の政権交代、世界中で起こるであろう社会的、政治的、環境的な激変に対し、私たち皆が新しく難しい要望に対処するよう適応し続けなければなりません。

今、世界が私たちに求めているものは何か、多くの難しい質問が投げかけられています。どのように応えるべきでしょうか?全ての答えは持ち合わせませんが、昨年8月にみなさんへ宛てた私の手紙を読みなおすと、希望を持ち続けられる確かな理由がありました。

私たちの仲間とプロジェクトへの増大するリスクと脅威に立ち向かう中で、ボランティアコミュニティを如何に強化するかという問題を振り返ると、いくつかの勝利を祝えることがわかります。以下に示すように、2024年の大型選挙年の終わりに、ウィキメディアコミュニティはプロジェクトに襲い掛かった誤情報攻撃をかわしたのです。規制が強化される中で、ウィキペディアはEUデジタルサービス法に基づく最初の監査で良好な結果を残しました。そして私たちはウィキメディア財団の最優先課題として、技術要請への資金提供に有意義な前進を続けています。

このEメールの送信者は私ですが、ウィキメディア財団執行役員チームの全員で書いたものです。昨年1年間、この緊密に結束したチームは、多くの重要な課題と成功の場面でリーダーシップと責任責任を果たしてきました。

製品と技術

こんにちは!私は製品・技術チーム最高責任者のセレーナ・デッケルマンです。2022年に私が財団に参加した時、それまで何年も別々だった製品と技術部門を統合し、世界中の貢献者の皆さんの幅広く多様な要望と要求にいかに対処していくかが課題でした。それは簡単ではありませんでした!

私はウィキメディアの貢献者とスタッフに、次の3つの重要な質問をすることから始めました。過去5年間に技術チームが及ぼした最大の影響は何でしょう?現在の展望と戦略は何でしょう?そして、未来のもっとも有望な機会は何でしょう(その機会を実現させるにはどんな真実が必要は何でしょう?)

これらの会話から、技術チームが最優先としたのは、メディア・ウィキの不可欠な保全と、拡張権限を持つ編集者の支援でした。初期の成果では、5つ以上のパッチを持つメディア・ウィキのコア著者が25%増加したこと、グローバルサイトのパフォーマンスを改善するためにブラジルに新しいデータセンターを設置したことがあります。そして自動モデレーター、コミュニティ形成、アップロードウィザード、編集チェック、編集パトロールとアプリ内ウォッチリスト、ページトリアージ、コモンズ影響指標、キャンペーン・イベント、トーク・ページ改良、ダークモード、図表拡張機能、機械翻訳を含む、多くの新しいツールと機能の改善もあります。これらはみなさん方の深い協力、エネルギー、そして熱意の賜物です。ありがとうございました。

昨年は、コミュニティ要望リストを改良し通年プロセスにすることで、この軌道を継続してきました。私たちは新しく設置された製品・技術評議委員会を含め、コミュニティメンバーとより密接に連携し、私たちの仕事にとって最も影響力のある優先事項を評価してきました。また、新しい世代の人々がウィキペディアの内容をどのように読み使ってくれるかを実験したいという、ボランティアの要望にも対処しています。私たちの読者経験チームは6つの実験を実施しており、どこに時間と注意を投資するかを学んでいます。もしあなたがこの活動について考えをシェアしたいなら、どうぞこちらの記事(日本語)をチェックして私たちの次年度計画のための質問をご覧ください。

もっと長期的視野に立つなら、こちらの調査会議が、AIによって再形成されるインターネットでのウィキメディアの主要な役割について深い考察を尋ねています。合成された真実でないコンテンツが増大している世界では、人間が作成したウィキペディアの知識は、見えにくくなっているとは言え、より重要であることを私たちは知っています。ウィキメディアのプロジェクトに世界が何を必要としているかを研究者と共に深く考察した後で、ウィキペディアの五本の柱は、力強く人間的なシステムを作り、世界中に真実の情報を生み出し続けていると感じています(それはAIの訓練モデルでもあります)。

私にとっては、編集者(特に機能担当者や管理者)の減少の中でこれらの貢献者をどうやって維持していくかという、世代をわたる質問(日本語)が必要でした。急速に変化するインターネットの中で、私たちの目標と価値感に導かれ、正しい大胆な選択をすぐにするには、どうしたらよいでしょうか。これは私たち皆が行動を問いかけられています。

私はウィキメディア財団法務顧問のスティーブン・ラポートで、10年以上財団法務チームの仕事をしています。 昨年はウィキメディアの法的活動と方針にとって重要な年でした。私たちは、ウィキメディア・プロジェクトを数多くの複雑な訴訟と法的脅威から防御し、ボランティアを支援しましたが、それにはドイツでの重要な勝利(日本語)も含まれます。また現在進行中のインドの訴訟やそのほかの地域での訴訟も支援しています。財団の法務チームは、世界中の自由な知識を守るために受けた要請と対応について、年2回公表しています。

今年は、オンライン・プラットフォームの規制に大きな変化がありました。ウィキペディアはEUデジタルサービス法(DSA)に基づく初の監査を受け、その結果を公表しました。これは重要な仕事で、ウィキメディア財団の活動を網羅する、透明性、苦情処理、リスク軽減、説明責任に関するものでした。ウィキペディアは否定的評価を受けたことの無い、唯一の巨大オンラインプラットフォームでした。

昨年は選挙の年でもあり、これまでの歴史に見られないほど多くの人が投票権を持ちました。私たちは情報操作対応チームを3つの選挙(インド、EU、アメリカ合衆国)で立ち上げ、ウィキペディアを守るためにボランティアが開発した工程の有効性を強調した報告を公表しました。2024年の国連総会に先立ち、ウィキメディアは一般人の力に関するイベントを開催し、国別協会やボランティアと連携し、インターネットの将来に向け積極的な展望を推進しました。

収入と資金調達

はい皆さん、私は開発チーム最高責任者のリサ・グルーウェルで、ウィキメディア財団で仕事をしているこの13年間にたくさんの方たちにお目にかかりました。その間に皆さんは私から、この変化しつつある世界でウィキペディアを支援する収入源を多様化するための長期戦略について、聞かれたことがあるでしょう。私たちは幸いなことに、世界中から何百万ドルもの寄付金を受け取っています。先月、私たちの運動はとても重要な節目を迎えました。100万人以上の定期寄付者(多くは毎月の)から寄付を受けています。私たちの目標に対するこの支援は、ウィキペディアのコンテンツが私たちのプラットフォーム以外でより読まれる未来に立ち向かう際に、財政的に力強く支えてくれます。

2016年、私たちはウィキメディア・プロジェクトを長期的に支援するための、ウィキメディア基金の立ち上げに成功しました。それ以来、基金の資金を増加させ、賢く投資するために、寄付者とコミュニティメンバーによる委員会を設立しました。基金が1億米ドルに達した時、基金に寄付してくださった方々に対し、どのような財政支援を希望されているか伺いました。この対話から私たちは、ウィキメディア・プロジェクトの技術革新のために資金を分配する戦略を立てました。ウィキメディア基金の今年度の計画はこちらからお読みいただけます。

ウィキメディア・エンタープライズは、AIや大規模言語モデルによってさらに加速されている、劇劇に変化したコンテンツの再利用にどのように対応すべきか決定する、転換点に立っています。私たちのコンテンツはいつも再利用されてきましたが、AI企業は社会に還元する責任をあまり考えることなく、私たちのサイトを執拗にこすり取っています。ウィキメディア・エンタープライズ・チームは、法務および製品・技術チームの支援を受けながら、この問題について、またより一般的にどのようにAIを私たちの目標に沿った新しいやり方で使うかを考え、焦点をしぼったコミュニティの会話をすすめていきます。

広報

こんにちは皆さん、私は広報(コミュニケーション)部門最高責任者のアヌーシャ・アリカンです。2019年に財団に参加して以来、ウィキメディア・プロジェクトの範囲と影響力が大幅に拡大するのを見てきました。そのことで、私たちの協働の仕事に注目が集まり、私たちのモデルに対するグローバルな理解を強化する必要性が明らかになり、そして世界中のボランティアのつながりが深まりました。

昨年、広報チームはダークモードのような進化した技術ツールの展開を支援しました。またつながりを深めるためにAfrika BarazaWikiCauserieCEE Catch-Upなどのグローバルな会合の創設を推進しました。さらにはウィキメディア財団ニュースレター技術ニュース、そしてDiffを通じて、通常のコミュニケーションを深めました。私たちのチームはウィキマニア2024を成功させるために、多くのみなさん方と力を合わせました。

ウィキ祝い(WikiCerebrate)知識は人なり(Knowledge is Human)、また「ウィキペディアにはもっと女性が必要」などの取り組みにより、以前よりもオンラインで注目が集めるのが難しい中で、ウィキメディアの活動はより可視化されてきました。ウィキメディア・ブランド健全性追跡調査の分析やデータを地域の会議で共有し、最近の報告のような他の調査プロジェクトを通じて、若い知識創造者がソーシャルメディアでウィキペディアをどう評価するか調べてきました。

メディアにおいて、私たちは困難な時期を乗り越えてきました。重要なのは、ウィキペディアで「最も読まれた25記事」や、ウィキメディアを紹介する「13のウィキビデオ」のような資源を作ることで、前向きな物語を共有してきたことです。私たちのメディアに関する活動は、主要な意思決定者に地域および国際的レベルで公益プロジェクトを守る必要性を理解してもらうのを支援し、成果をあげました。

財務

こんにちは、私は最高財務責任者のジェイミー・ヴィラゴメスです。2016年からウィキメディア財団執行部メンバーです。私の名前は、ウィキメディア財団と現在のウィキメディア基金が毎年受け取る監査報告書でご覧になったかと思います。そして財務情報の共有方法を改善し続けています。今年、財務管理チームは運動推進に提供する資源を増やす予算を組みました。また2020年1月以来初めて、全てのスタッフが2025年9月に顔を合わせる機会に際し、サンフランシスコの財団事務所の規模を縮小する経費節減に取り組みます。

人事

こんにちは、私は最高人事責任者のコートニー・バス・シェリゼンで、執行部では最も新しいメンバーです。最初の勤務日はシンガポールでのウィキマニア2023で、世界中から集まったボランティアたちとの会話や会合の濃密な1週間でウィキメディアについて学びました。この視点により私は、たくさんの財団スタッフがウィキメディア・ムーブメントの出身であることや、スタッフは全員が私たち共有の使命におけるボランティア・コミュニティの中心的役割を理解することを学びました。人事部門は、スタッフの半分がアメリカ合衆国外にいるので、リモートの要望をまず支援しています。私のチームは、採用、学習と成長、活動管理、多様性と公平性と包摂性に対する財団の強い取り組みに関してマネージャーとスタッフを支援しています。そして連携団体と共有し学ぶことを誇りに思っています。

パイロットの最新情報

私からの最後のお知らせは、昨年の運動憲章起草過程についての、理事会の勧告です。昨年10月、理事会は運動憲章起草委員会により提案された責任分野で、ウィキメディア・ムーブメントがいかに、代表委員会とボランティア主導の体制で意思決定と説明責任を果たせるよう移行するかを評価する、次のステップを共有しました。

このマッピング実験は、憲章起草過程全体を通して寄せられた、賛成と反対を含むコミュニティの意見をさらに分析するために、関心を持つ利害関係者からの意見を取り入れて完了しました。これらの意見は、意思決定におけるより公正な解説と説明責任や、連携団体、ハブ、そして財団自身を含む運動主体の役割と存在についてのより明確な説明を求める要望、そして既存の助成金提供と資金調達のやり方を進化させることへのコメントもありました。

このマッピングは、10月以来進捗している次の3つのパイロットにとって、心強い支援となりました。どなたでも、リンクされているオン・ウィキの場所で詳細を知り、コメントしていただくことができます。

  1. グローバル資源配分: 今月初め、3月に暫定グローバル資源配分委員会を創設する次のステップの概要がこちらのDiff記事に投稿されましたが、それは今後1か月間での委員会への指名募集も含んでいます。これは、ボランティア主導によるグローバルな組織を試験的に設置するもので、そこではウィキメディア・ムーブメント全体の助成金と資源を配分する戦略を策定し、ウィキメディア・ムーブメントの使命を支援する地域的主題的活動と取り組みに資金を提供する提案をウィキメディア財団に行うものです。
  2. 製品・技術評議委員会 (PTAC): 10月にPTACのメンバーが発表され、その最初の対面会合が行われました。この委員会は、技術貢献者、提携団体代表者、そしてウィキメディア財団が協力して、より強靭で将来に備えた技術プラットフォームを共同定義ものです。
  3. 提携団体エコシステム: 3つ目のパイロットは運動組織のエコシステムに焦点を当てたもので、既存の提携団体やハブのような提案された組織を含み、最初のパイロットの資源配分とより密接に連携させます。これは提携団体委員会と提携団体役員を含む主要な利害関係者により始められ、私たちの運動の将来の要望のために組織をどのようにするかの理解を深めるものです。

皆さんの声を聴かせてください

これからの1年は、これまでにまして持続可能性が求められています。数か月前に申し上げた通り、困難な時であっても、私たちのグローバルコミュニティはいつも解決の道を見つけてきました。それはウィキメディア・ムーブメントが25年間近く実行してきたことです。世界が私たちを本当に頼りにしている今、一層手を取り合って行きましょう。

昨年、財団執行部は理事会、私、その他の執行メンバ―との会話の障壁を減らしてだれでも質問できるよう、「話し合い:2024」を試みました。私たちはこれを「話し合いましょう」という取り組みで継続していますので、話し合いたい方はどなたでもご参加ください。

アヌーシャが上で述べたような様々な連携手段の仕組みに加え、私たちは関心のあるボランティアの皆さんや他の利害関係者と集まる機会をもっと増やし(例えば元理事、この3月に出す財団年次計画リトリート、対面あるいはヴァーチャルでのコミュニティ会議、ウィキマニアなど)、私たちの周りで起こっている変化への対応について一緒に考えていきたいと思います。

最後に、これは四半期ごとの「ウィキメディア財団理事との公開対話」の明日の議題ですので、よろしければぜひご参加ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

Maryana

マリアナ・イスカンダー
ウィキメディア財団最高経営責任者

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