稲門ウィキペディアン会の Eugene Ormandy です。2025年2月16日、東京都中央区立晴海図書館を訪問し、所蔵資料をウィキペディアの編集に活用したので、その模様をまとめます。

経緯
友人のウィキペディアンである門倉百合子さんが登壇する「『70歳のウィキペディアン:図書館の魅力を語る』著者による講演会」というレクチャーを聴講するため、2025年2月16日に東京都中央区の晴海図書館へ行くことに。せっかくなので、晴海近辺の写真を撮影してウィキメディア・コモンズにアップロードしたり、図書館の蔵書をじっくり観察したりすることにしました。ちなみに、写真撮影の様子は「東京都中央区晴海を散歩しながらウィキペディア用の画像を撮影する」というブログ記事にまとめたので、ご興味ある方はそちらもどうぞ。
図書館散策
快晴の晴海を散歩しつつ、晴海図書館が入る晴海区民センターに到着。エレベーターで3階へ行き、正面の図書館入口を抜けると、目の前には図書館に関係する書籍の特設コーナーがありました。レイ・オルデンバーグ『サードプレイス コミュニティの核になる「とびきり居心地よい場所」』のような古典から、『アーキビストとしてはたらく』のような近刊まで揃えられており、非常に興味深かったです。もちろん、上記のような「硬い」書籍だけではなく、親しみやすい書籍も並べられていました。

入口の左側には、雑誌コーナーおよび児童エリアがありました。子どもたちが楽しく過ごせそうな、素敵な雰囲気でした。なお、児童書の音楽関連書籍をチラッと確認してみたところ、ヤマハの「音楽家の伝記 はじめに読む1冊」シリーズの書籍が複数並べられており、クラシック音楽オタクとして非常に嬉しかったです。子ども時代にこんな図書館が近くにあったら、足繁く通っていたでしょうねえ……。

その後は、入口右側の一般書エリアへ。自分の関心分野について、どのような書籍があるかを確認しました。
私が最近関心を抱いているのは、テック業界の動向です。ということでまずは、日本十進分類法「007 情報科学」の棚を確認。かなり充実していて驚きました。「うちはITの社会教育に力を入れるぞ!」という図書館の声が聞こえたような気がします。なお、「これは絶対に読まなければ!」と思い続けてはや1年が経過している『The CODE : シリコンバレー全史 : 20世紀のフロンティアとアメリカの再興』も配架されており、読むべき本になかなか手をつけない己の自堕落さを再認識しました。

閑話休題。続いて確認したのは「760 音楽」の棚です。私はクラシック音楽オタクで、特に演奏史に興味があるので、それに関連する書籍をざっと眺めたのですが、こちらももはや腰を抜かすレベルで充実していました。セザール・フランクやエイトル・ヴィラ=ロボスといった、著名ではあるもののモーツァルトやベートーヴェンほどの世界的知名度はない作曲家の本格的な評伝や、指揮者オタク界隈で話題になった、指揮者ジョージ・セルについての400ページ超の伝記が配架されていたのです。他にも、クルト・ヴァイルの伝記が複数あったり、クシシュトフ・ペンデレツキやカロル・シマノフスキをはじめとする現代ポーランド音楽についての書籍があったりして、心の中でオペラの観客よろしく「ブラボー!!!」と叫びました。

なお、実際に配架されていたクラシック音楽本を以下にいくらか示しておきます。オタク諸氏なら舌を巻く骨太なチョイスだと思います。
- ヴァンサン・ダンディ 著ほか. セザール・フランク, アルファベータブックス, 2022.12. 978-4-86598-103-2. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I032502415
- 木許裕介 著. ヴィラ=ロボス : ブラジルの大地に歌わせるために, 春秋社, 2023.3. 978-4-393-93228-5. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I032698240
- マイケル・チャーリー 著ほか. ジョージ・セル : 音楽の生涯, 鳥影社, 2022.6. 978-4-86265-932-3. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I032196095
- 田代櫂 著. クルト・ヴァイル : 生真面目なカメレオン, 春秋社, 2017.8. 978-4-393-93209-4. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I028399207
- 大田美佐子 著. クルト・ヴァイルの世界 : 実験的オペラからミュージカルへ, 岩波書店, 2022.3. 978-4-00-022645-5. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I031992208
- ダヌータ・グヴィズダランカ 著ほか. 現代ポーランド音楽の100年 : シマノフスキからペンデレツキまで, 音楽之友社, 2023.12. 978-4-276-11217-9. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I033219024

そして、私が愛してやまないプロレスについての書籍も確認。アントニオ猪木、ジャイアント馬場、力道山、国際プロレスといった、いわゆる「往年のプロレス」についての書籍が多く、2025年時点の現役プロレスラーたちの自伝等(口の悪いプロレスファンが言うところの「提灯本」)はあまりありませんでした。しかし、間違いなく現役プロレスラーの中で最も筆が立つ TAJIRI 選手による、素晴らしいルポタージュ『戦争とプロレス : プロレス深夜特急「それぞれの闘いの場所で」・篇』があったのには感心しました。

その後、4階のTeens&Youthエリアを散策。こちらも様々な書籍があって感心しました。特に、定評ある明石書店の「エリア・スタディーズ」シリーズ(たとえば『アイルランドを知るための70章 第3版』など)が数十冊揃っている光景は圧巻でした。
また、空間のデザインも魅力的でした。例えば表紙が見えるような配架(いわゆる面陳)が多くなされており、視覚的に楽しい雰囲気が醸し出されていました。また、友人たちと利用できる4人がけの作業スペースもあり、本好きのティーンエイジャーはもちろん、本にあまり馴染みがない人も多いに楽しめる空間だと感じました。なお、図書館内の様子は、同館の設備の納入を担った株式会社イトーキのウェブページでも確認できるので、興味がある方はどうぞ。
ウィキペディア編集
館内散策ののち「せっかくなら図書館の資料を活用して、晴海もしくは中央区に関するウィキペディア記事を加筆しよう」と思い立ち、郷土資料の棚へ。今までの経験上「郷土情報のうち、ウィキペディアに短時間でパパッと加筆できるのは『市町村史に書かれた、現代に近い時代の文化施設に関する情報』」と認識していたので、迷うことなく『中央区史』の下巻を手に取り、後半部分に書かれた文化施設に関する記述を確認。ちょうどブリヂストン美術館(2025年時点の名称は「アーティゾン美術館」)に関する記述があったので、日本語版ウィキペディア「アーティゾン美術館」に加筆しました。なお、加筆直後の版は2025年2月16日 (日) 04:28 (UTC) 版です。

まとめ
東京都中央区立晴海図書館を訪問し、その資料を活用してウィキペディア記事を加筆した経緯についてまとめました。ウィキペディアの編集に関する記述はほんのわずかですが、何卒ご容赦くださいませ。「ふむふむ、こいつは自分がそこそこ知っている分野の小規模加筆にはなかなか手を出さないタイプのウィキペディアンなんだな」なーんてメタ的な楽しみをしてくださる方がいれば幸いです。
末筆にはなりましたが、晴海図書館はとても良い施設でした。ウィキペディアのネタ探し、資料収集にも大いに活用できると思います。ご興味ある方はぜひ足を運んでみてくださいませ。
おことわり
本稿は晴海図書館の宣伝記事ではありません。もちろん、本稿の執筆にあたって晴海図書館から報酬などは得ていません。あくまで一介の利用者による図書館レビューです。念のため明記しておきます。

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