イベントレポート2024 / №19 島原 Wikipedia Town

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長崎県島原市は、火山活動で形成された雲仙岳の麓に位置し、地質的に豊かな湧水に恵まれ「水の都」と呼ばれています。街のいたるところを流れる湧水の小川を色鮮やかな鯉が泳ぎ、キリシタンの弾圧や島原の乱の舞台として知られる島原城などの歴史的景観と相まって、観光客からも人気のエリアと言われています。

(「島原湧水を泳ぐ錦鯉」663highland, CC BY-SA 3.0 http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/

2024年11月10日、「島原ウィキペディアタウン〜みんなでつくろう島原の百科事典〜」は、島原城築城400年関連事業の一環として開催されました。主催者のレポートはこちらです。

edit Tango参加イベント2024 / №19 長崎県島原市 島原 Wikipedia Tawn〜みんなでつくろう島原の百科事典〜

このイベントは、一般社団法人島原青年会議所のまちづくり委員会が企画し、島原図書館が共催、島原市と島原市教育委員会が後援する形で行われました。参加者は、島原市民4名、佐世保市にある長崎国際大学の博物館学芸員課程に在籍する学生11名、そして島原青年会議所のメンバーら総勢20名以上。ほとんどの参加者にとって、これが初めてのウィキペディア編集体験でした。

午前中は、事前に選定されたテーマごとにグループ分けし、まちあるきを実施。写真撮影など記事作成に必要な素材を集めました。午後からは、島原図書館で文献調査を行い、ウィキペディアの記事編集作業を進めました。

新規立項された記事は、「浜の川湧水観光交流館・銀水」、「本光寺」、「島原水まつり」の3記事。いずれも立項後は1週間以内にメインページ「新しい記事」に掲載されました。また、「島原城」や「松倉重政」など、既存の記事の加筆も検討されました。

今回のイベントでは、他のウィキペディアタウンでは見聞きしたことのない、ユニークな導入方法が試みられていました。グループで自己紹介を兼ねた「アイスブレイクタイム」でチーム作りをし、まちあるき取材は各グループがそれぞれ独自に行います。このグループミーティングの進行役は、アイスブレイクの際にいちばん適任と思った人を「しゃかしゃかぽん」という掛け声に合わせて指差しで決めるという、島原青年会議所の伝統的なリーダー選出法が採られ、笑いとともに自然に参加者間のコミュニケーションが深まっていました。

その一方で、グループミーティングに入らない立場、かつ、他県民であるウィキペディアンの講師陣には、難しい感触のイベントともなりました。Wikipediaの基本方針である「検証可能性」や「典拠の明示」が特に重要であることを理解するのは、初心者にとっては元々難しい部分があるものですが、外野の声はできあがってしまったコミュニティの内側には届きにくいものです。結果、かなり厳しめに指摘をしなくてはならない場面もありました。スムーズな編集体験とWikipediaの方針の理解を両立する難しさを感じるところもありましたが、参加者の一人は「ウィキペディアに悩まされた1日だったが、有意義な時間だった。また参加したい」と最後には語ってくれました。方針理解というその最初の壁さえ乗り越えてしまえば、対面の関係で培われたコミュニティの強さは編集活動の活性化につながっていくことでしょう。

(「しゃかしゃかぽん」 漱石の猫, CC BY-SA 4.0 https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0

イベントを成功に導いたのは、地域の力と専門家のサポートです。島原市教育委員会の学芸員・吉岡慈文さんは、事前説明会の講師を務めるとともに、当日のまちあるきや記事作成のアドバイザーとして全面的に協力。限られた作業時間の中で、地域住民と大学生が協力しながら記事を仕上げることができました。

紙などに書いて情報を整理するのは時間的にはロスが多いですが、けっしてたくさん書いたらよい編集、というわけでもないので、その場のコミュニティのつながりが強いイベントでは、いきなりWikipediaに書くのではなく、いったんほかの場所で情報を整理し客観視する時間をとることも必要なのかもしれません。

同日には島根県の離島・知夫村と、東京都世田谷区烏山でもウィキペディアタウンが行われていました。新規立項記事をみるかぎり、抜群によい編集結果だったのは約半年間で3回目のウィキペディアタウン開催であった知夫村で、この企画では島と無関係な外部のウィキペディア講師は入っていません。地域の人みずからの編集活動が重要であると、改めて感じるところがありました。

島原市のウィキペディアタウンは、島原青年会議所にとって初めてのウィキペディアを活用した事業で、主催者は地域の魅力を発信する新たな手段として可能性を感じることができたと評価し、今後も地域住民主体の編集活動を続け、島原の価値を世界へと伝えることが重要であると考えています。今後、知夫村同様、島原地域にもともと根付いているコミュニティにおいて着実にウィキペディア編集者が育ち、地域発信のモデルケースとなることを期待しています。

(島原の郷土菓子「かんざらし」 Omochi-omochi, CC BY-SA 4.0 https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0

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