Japan Wikimedia Conference 2025 聴講記録

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稲門ウィキペディアン会の Eugene Ormandy です。2025年2月22日、東京都の駒澤大学で開催された「Open Source Conference 2025 Tokyo/Spring」内のイベントとして、Wikimedians of Japan User Group が開催した Japan Wikimedia Conference 2025 を聴講してきたので、その模様をレポートします。

なお、本会議については、主催者のひとり VZP10224 さんも「Japan Wikimedia Conference 2025の開催」というレポートを作成しています。こちらも併せてご覧ください。

稲門ウィキペディアン会のロゴ。(Uraniwa, CC0)

経緯

昨年来お世話になっている、Wikimedians of Japan User Group の VZP10224 さんよりイベントの案内があったので、知人である登壇者たちの近況確認を兼ねて伺うことにしました。

マレーシアのコタキナバルで開催された ESEAP Conference 2024 にて発表する VZP10224 さん。筆者 Eugene Ormandy も同席した。(Eugene Ormandy, CC0)

到着

会場到着後、ウィキメディアンたちとのおしゃべりを楽しみました。Wikimedians of Japan User Group の皆さんや、ウィキメディア財団の中山純子さん、書籍『70歳のウィキペディアン : 図書館の魅力を語る』の著者である門倉百合子さん、ポーランドのウィキマニア2024でご一緒した Takehiko さん、酒飲み仲間のKeeezawa さんなどと旧交をあたためました。

会場外観。(Eugene Ormandy, CC0)

レクチャー

オープンソース・カンファレンスのシステムに則り、 Japan Wikimedia Conference 2025 は「セッション45分、休憩時間15分」が3セットという形で行われました。登壇者は事前発表のとおり4名でしたが、最初と最後に、主催の Wikimedians of Japan User Group のメンバーより挨拶がありました。以下、ごく簡単にレポートをします。

0 Kizhiya さん

最初のセッションでは、まず Wikimedians of Japan User Group 代表の Kizhiya さんが日本語で挨拶を行いました。インターネット環境への不満、そして市民でも方針等に意見を表明できるウィキメディア・プロジェクトへの希望を背景に、ユーザーグループを設立した経緯について説明されました。

オープニングセッションの様子。(User:barsaka2, CC BY-SA 4.0)

1 さえぼーさん

ついで、シェイクスピア研究者でウィキペディアンの北村紗衣さん(ハンドルネームは「さえぼー」)が「なぜ日本のテレビ番組は何もわかっていないのに、ウィキペディアを編集することにこだわるのか?」と題した発表を日本語で実施。企画としてウィキペディアを編集する日本のテレビ番組について紹介しました。なお、北村さんはダブリンに滞在中のため、発表は事前録画形式で行われました。

また、この発表は、2024年にポーランドで開催された国際会議「ウィキマニア2024」でも行われたものです。こちらの英語発表については、YouTubeで公開されていますので興味がある方はぜひ。

2 アラン・アンさん

次の45分のセッションではまず、ウィキメディア・ドイツ協会の職員であるアラン・アンさんが「Wikidata, the World’s knowledge Graph」と題した発表を事前録画形式で実施。アランさんは英語で話し、日本語字幕がつけられました。アランさんはウィキデータの基礎について解説したのち、WikiFlix などのウィキデータを活用したサービスを紹介しました。

ちなみに、アランさんは2024年に来日し、ゲーテ・インスティトゥート東京で開催されたウィキメディア・プロジェクトのシンポジウムに参加しています。日本のウィキメディア・ムーブメントと世界をつなぐ重要人物の1人と言えるでしょう。

アラン・アンさん。(Alan Ang (WMDE), CC BY-SA 4.0)

3 坂ノ下さん

その後、Wikimedians of Japan User Group および OpenStreetMap Foundation Japan のメンバーである坂ノ下勝幸さんが「あなたの知らないウィキメディアコモンズ活用」と題した発表を日本語で実施。オープンストリートマップウィキメディア・コモンズについての解説を実施しました。私はオープンストリートマップにはあまり明るくないので、「オープンストリートマップは地図というよりデータベース」という指摘には蒙を啓かれました。

坂ノ下さんのレクチャーの様子。(Shinji Enoki, CC BY-SA 4.0)

また、ウィキメディア・コモンズが、さまざまなデジタルアーカイブのハブとして機能しうるという指摘には大いに共感しました。実際、私は東京都東久留米市立中央図書館で講師を務めたウィキメディアレクチャーにて、似たような指導をしています。以下、レクチャーのレポートより引用します。

ウィキメディア・コモンズの独自性として私が強調したのは、「クリエイティブ・コモンズ・ライセンスゆえ資料の二次利用が可能」という点と、「カテゴリ機能のゆえ様々なユーザーがアップロードした資料を横断的に検索できる」という2点です。

(略)強調した点の2つ目、カテゴリ機能については、まず「Aさんが自分のブログにアップロードした図書館の写真、Bさんが X (Twitter) にアップロードした図書館の写真、そしてCさんが別のSNSにアップロードした図書館の写真を比較したいと思った時、いろいろなページにアクセスしないといけないから大変ですよね」と説明。その後「もし全員がこれらの画像をウィキメディア・コモンズにアップロードしてくれれば、ひとまとめで検索ができるのです」と述べました。さらに「これを助けてくれるのがカテゴリ機能です。それぞれの写真にきちんとカテゴリを付与すれば、そのカテゴリページにアクセスするだけで、それらを比較することができるのです」と説明し、実際にいくつかのカテゴリページを提示しました。

また、私が以前気晴らしに執筆したブログ記事「ウィキメディア・コモンズにおける BIG BOX 高田馬場」もお見せし、カテゴリがきちんと機能すれば、このように街の変遷を辿ることもできるのだと示しました。

Eugene Ormandy「東久留米市立中央図書館「ウィキペディア東久留米 ~まちの写真を載せてみよう~」開催記録」『Diff』2024年10月15日。
2007年に撮影された BIG BOX 高田馬場。(Hykw-a4, CC BY-SA 3.0)
2023年に撮影された BIG BOX 高田馬場。(Eugene Ormandy, CC BY-SA 4.0)

4 イヴォンヌ・クリスティーヌさん

最後のセッションではまず、ウィキメディア財団職員のイヴォンヌ・クリスティーヌさんが「ウィキメディア・ムーブメントを垣間見て」という発表を英語で実施。こちらはオンラインのライブ方式でした。また、同じくウィキメディア財団職員である中山純子さんが日本語の通訳を担当しました。

発表では、ウィキペディア以外のウィキメディア・プロジェクトや、世界各地のアフィリエイツ(「ウィキメディア運動提携団体」が定訳とされています)の状況が説明されました。また、会場からの質問にも通訳を介して対応されました。

イヴォンヌさんのレクチャー(ビデオ)の様子。ウィキメディア財団の中山純子さん(画面右)が通訳を実施。(Shinji Enoki, CC BY-SA 4.0)

5 VZP10224 さん

最後に、主催者の1人である VZP10224 さんが挨拶。ウィキメディア・プロジェクト、そしてウィキメディア・ムーブメントをより広めていきたいと宣言されて、会はお開きとなりました。

感想

充実したイベントだったと思います。初心者にとってはやや難しいところがあったかもしれませんし、ベテランにとっては知っている内容が多かったかもしれませんが、このような会議が開かれたということ自体に大きな意味があるかと思います。また、それぞれ発表形態が大きく異なる中、適切に対応されていたのにも感心しました。

登壇者の皆様、親イベントであるオープンソース・カンファレンス運営スタッフの皆様、何より本イベントの企画・運営をしてくださった Wikimeidans of Japan User Group の皆様に、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。私はユーザーグループには参加していませんが、今後も適宜協力・提携できればと存じます。

まとめ

2025年2月22日に Wikimedians of Japan User Group が開催した Japan Wikimedia Conference 2025 について、一介の参加者の視点からレポートしました。本稿が何かの役に立てば幸いです。

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