2022年から筆者らedit Tangoほか有志のウィキペディアンで協力開催している「ウィキペディア展覧会」では、2023年から、一般社会におけるWikipediaの「認知度アンケート」を行っています。このアンケートは、10問の質問から構成されており、回答後には任意で30問の選択式クイズに挑戦することも可能です。クイズの正解は送信後に表示され、ウィキペディアに関する知識を深めることができます。
2023年10月24日から11月15日までの期間に実施された第1回調査では、350名から回答が集まりました。その結果、99.1%の参加者が「ウィキペディアを読むことがある」と答え、96%が「ウィキペディアが誰でも編集できるコンテンツである」ことを知っていると回答しています。しかし、「ウィキペディアを編集してみたいと思いますか?」という質問には、約24%が「編集したいとは思わない」と答えており、編集への関心には差が見られました。詳細はこちらの記事をご覧ください。

(「ウィキペディア展覧会2024」漱石の猫, CC BY-SA 4.0,ウィキメディア・コモンズ経由で)
2024年11月5日から7日の3日間で実施された第2回調査では、245名から回答が集まりました。本稿では、その主な回答を紹介します。なお、回答者の内訳は、男性が35.5%で女性が62.4%。年代・職業は幅広く多岐にわたっていました。……といっても、アンケートを募集した場所は図書館情報学分野のカンファレンス会場でしたので、多少、図書館職員や情報やメディア分野の企業人、大学や高校など教育分野に携わる人の割合が高めではありました。未成年の回答は全体の2割弱で、ほぼ全て大学生によるものでした。
回答者のうち、Wikipediaが百科事典であるということを知っていた人は80.7%。誰でも編集できるということを知っていた人は、94.6%でした。
図書館総合展フォーラム「ウィキペディア展覧会」報告書№1 Wikipedia編集に関するアンケート結果
まず、「Wikipediaを編集したことがありますか?」という複数回答可の質問に対する主な回答結果は以下の通りでした。
- 編集したことがない … 67.3%
- 試しに編集ボタンを押してみたことがある … 10.1%
- 記事を読んでいて間違いに気づいたときは修正する … 12.7%
- すでにある記事に書いていない内容があると思ったら追記する … 12.3%
- 今ある記事の内容が不足だったり間違っていると思ったら加筆修正する … 11.1%
Wikipediaを実際に編集したことがある人は全体の約3割(32.7%)にとどまり、ほとんどの人は編集経験がないことがわかりました。一方で、「記事を読んでいて間違いに気づいたら修正する」「不足している情報を追記する」などの能動的な編集を行っている人も一定数いることがわかります。

(「ウィキペディア展覧会2024」Asturio Cantabrio, CC BY-SA 4.0,ウィキメディア・コモンズ経由で)
Wikipedia編集を対面で行うオフラインイベントは、必ずしもWikimediaのアウトリーチ活動を目的とするものに限定はされませんが、なんらかの形でWikipedia編集を体験したり、学習したりする機会となる編集イベント(ウィキペディアタウンなど)は日本各地で年間数十件は開催されています。編集経験のない人々のこうした編集イベントへの参加意欲はどの程度あるのでしょうか? こちらも複数回答可で質問し、主な回答は次の通りでした。
- 近場であれば参加したい … 43.8%
- 内容や開催場所が魅力的だったら参加したい … 30.5%
- オンラインなら参加したい … 22.9%
「近場であれば参加したい」と答えた人が約4割と最多でした。さらに、「内容や開催場所次第で参加したい」と答えた人が約3割と、何らかの条件が合わさればWikipediaの編集イベントに参加してみたいと思っている人がそれなりにいることがわかります。オンライン参加を希望する人も約2割おり、物理的な距離がネックにならなければ、参加意欲が高いことも見えてきました。
Wikipediaに対するイメージを徹底分析!— 利用者245名の声から見えてきたもの
Wikipediaは、多くの人にとって身近な情報源となっています。しかし、そのイメージや使い方には個人差があり、利用者の中には「便利」と感じる人もいれば、「信頼性に不安がある」と考える人もいるようです。「Wikipediaのイメージ」についての自由記述の回答をChatGPTに分析してもらいました。
その結果、大きく**「便利な情報源」「信頼性には不安がある」「編集参加はハードルが高い」「集合知は魅力的」「コミュニティ内部は戦場のよう」**という5つのイメージがあるらしい傾向が見えてきました。それぞれ詳しく見ていきましょう。
最も多かったのは、Wikipediaを 「調べ物に便利」「情報を手軽に得られる」「生活の一部」 として利用しているという意見でした。
主なコメント例
- 「調べ物のとっかかりとして使うのに最適」
- 「スマホで気になることをすぐに検索できる百科事典」
- 「なんでも載っているので、ついつい読んでしまう」
- 「知りたいことの概要を知るのに便利」
このように、多くの人がWikipediaを「第一の情報源」として利用しており、検索した際に上位に表示されることも影響していると考えられます。
一方で、便利さを認めつつも、「Wikipediaの情報は完全には信頼できない」「間違いもあるので注意が必要」 という意見も多く見られました。
主なコメント例
- 「参考にはするけど、完全に信用はしていない」
- 「出典がしっかりしていない記事があるのが気になる」
- 「調べ物の入り口にはなるが、そのまま鵜呑みにするのは危険」
- 「Wikipediaを根拠に何かを語る人は軽蔑するが、Wikipedia自体は擁護したくなる」
また、教育現場でも**「レポートや論文には使えないと言われた」** という声が多く、学術的な場ではまだまだ信用が低い傾向にあることがわかります。この点については、「情報がリアルタイムで更新される可能性があるので、レポートや論文の論拠として後日参照する情報源としては不適切」というWikipediaの構造上の特性が理由であるところ、「だれが編集したか不明だから情報が信頼できない」のが理由だと誤解している人も多いように思います。

(「ウィキペディア展覧会2024」Asturio Cantabrio, CC BY-SA 4.0,ウィキメディア・コモンズ経由で)
Wikipediaの大きな特徴は 「誰でも編集できる」 ことですが、実際には編集に対するハードルを感じている人も多いようです。特に、「Wikipediaの編集者は怖い人が多いイメージ」 というコメントも複数あり、「編集合戦」や「ルールが厳しい」といった印象を持っている人も少なくありませんでした。
主なコメント例
- 「編集には勇気が必要」
- 「間違った編集をしてしまうのが怖い」
- 「編集してみたいと思うが、ローカルルールが難しそう」
- 「正しい情報を提供したいが、批判されるのが怖い」

(「ウィキペディア展覧会2024」漱石の猫, CC BY-SA 4.0,ウィキメディア・コモンズ経由で)
Wikipediaのもう一つの大きな特徴は、「世界中の人々が知識を持ち寄って作る百科事典」 であることです。これに共感する声も目立ちました。
主なコメント例
- 「集合知が生み出す素晴らしいデータベース」
- 「知識のDIYスペース」
- 「情報を広めたり後世に残すために活用すべき」
このように、Wikipediaの「みんなで作る」「知識を共有する」という点を評価する声も一定数ありました。一方で、編集をしたことがある人からは 「Wikipediaの内部は戦場のようだ」 という意見もありました。
主なコメント例
- 「とても怖い人たちがコワモテな感じで戦争しながら領地を守ったり争ったりしている」
- 「編集合戦が怖い」
- 「管理者が少なく、荒らしが多い」
- 「議論が白熱しすぎていて、新規参入しづらい」
このように、Wikipediaの編集文化は「オープンである一方で、閉鎖的な部分もある」と感じる人がいるようです。

(「ウィキペディア展覧会2024」漱石の猫, CC BY-SA 4.0,ウィキメディア・コモンズ経由で)
今回のアンケート結果を総合すると、多くの人にとってWikipediaは 「便利な情報源」 でありながら、同時に 「信頼性には注意が必要」「編集のハードルが高い」 という認識が強いことがわかりました。特に、「使う分には便利だが、編集するのは怖い」 という声が目立ち、Wikipediaの開放性と閉鎖性が同居していることが浮き彫りになりました。また、「編集イベントに参加したい」という人も多かったため、編集の敷居を下げる取り組みが求められていることも明らかになりました。
ついでにAIはこの結果をどう思うのか、ChatGPTに聞いてみたところ、次のように回答してくれました。
“Wikipediaは、「集合知の力を活かした百科事典」 であり、今後もその価値は高まるでしょう。今回のアンケート結果をもとに、もっと多くの人が気軽に編集に関われる環境づくりが求められているのではないでしょうか””

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