稲門ウィキペディアン会の Eugene Ormandy です。2024年4月某日、同会メンバーの Takenari Higuchi さんとおしゃべりをしたので、その記録をまとめておきます。本稿が何かの役に立てば幸いです。

Eugene: ご無沙汰してます。最近はどんなニュースが気になってます?
Takenari: 日本の著作権改正をめぐる反応ですね。2026年度に整備される予定の「未管理著作物裁定制度」について、文化庁が X (Twitter)上でポストしたところ、かなりの批判が集まっており「こりゃ日本でフェアユースが実現する日は遠そうだな」と思いました。
日本の著作権法の第一条には「この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする」とありますが、著作権は「文化的所産の公正な利用」や「文化の発展」について定めた法律でもあるのだという理解が広まってほしいなと感じます。
Eugene: 本当にフェアユースははやく認められてほしいですよね。
Takenari: アメリカ合衆国の著作権法に準拠している英語版ウィキペディアでは、フェアユースが認められていますよね。一方、日本語版は日本国の著作権法に準拠しているため実質的に認められていません。そのため、たとえば英語版ウィキペディアの『Attack on Titan』には、コミックス第1巻の表紙が掲載されている一方、日本語版ウィキペディアの『進撃の巨人』にはありません。
ただ、本来言語ごとのプロジェクトであるウィキペディアが特定の国の法律に準拠するというのも、よく考えると変な話ではあるのですけどね。
Eugene: 日本の著作権法はフェアユースを認めていない一方、四十七条の四で機械学習を認めているのは興味深いですよね。この「ゆるさ」のおかげで、広島AIプロセスを主導できたり、OpenAIのアジア初となる拠点が日本に設立されたりしたわけなので、フェアユースについても戦略的に導入するという選択肢はありなのではと個人的には思います。ただ、現在の雰囲気だと難しいかもしれませんね。
Takenari: われらがウィキメディア・プロジェクトも、AIとの関係については様々な角度から論じられていますが、Eugeneさんは何が気になっていますか。
Eugene: AIを用いた編集がウィキメディアにどのような影響を与えるか、強化学習にいかにウィキメディアンが協力できるか、「ウィキペディア風の記事をいかに作成できるか」というベンチマークのあり方、いわゆる少数言語の大規模言語モデル作成にウィキメディア・プロジェクトがいかに寄与できるかなど、気になるトピックはいろいろありますが、あまり追えていないですね。情けない限りです。
なお、最近特に気になったのは、2025年4月1日にウィキメディア財団が発表した “How crawlers impact the operations of the Wikimedia projects” という声明ですね。クローラによるアクセス過多でサーバがダウンしそうという悲痛な叫びです。ウィキメディア・プロジェクトの持続可能性は様々な観点から検証する必要がありますが、インフラは重要かつ頭の痛いトピックですね。
Takenari: ウィキメディア・プロジェクトには、頑張って今後も残ってほしいものですね。
Eugene: いやもうホントおっしゃるとおりです。ところで、Takenari さんの今後の展望などはありますか?
Takenari: いやあ、特にないですねえ。
Eugene: おお、それならウィキデータ上の特定のウィキプロジェクトについての簡単な日本語解説を、Diff(ウィキペディア財団のブログ)に書いてくれません?音楽、芸術関連は多少目を通したんですが、他は全くできていなくて。
Takenari: おお、面白そうですね。ただ、私にできるものか……
Eugene: とりあえず今回のお茶代は私が出すので、そのお返しとして記事執筆よろしくです!楽しみにしてますね〜(レジへ消えていく)
Takenari: ……

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