「ウィキペディアにゃウン vol.8② 文化財×Wikipedia」に参加する

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2025年10月18日(土)、京都府京丹後市で「ウィキペディアにゃウン vol.8② 文化財×Wikipedia」が開催されました。

イベント概要

主催は京丹後市周辺の丹後地方で活動する地域団体の「edit Tango」(エディット丹後)です。公共図書館などが所蔵する地域資料の情報をWikipediaに書き込み、価値のある地域情報を地域外の方や後世に伝えていこうという趣旨で活動しています。こまねこまつり内の人気企画である「てくてく我がまち再発見 こまねこウォーク」に合わせて開催され、午後には「ウィキペディアにゃウン vol.8②」の参加者のみが別会場に移動してWikipedia編集を行いました。

なお、本イベントは一般的に「ウィキペディアタウン」と呼ばれるワークショップです。「ウィキペディアタウン」とは、図書館、自治体、市民団体などによって開催されるWikipediaの編集ワークショップであり、地域の歴史や文化に関する記事を〈市民の手で〉充実させることを目的としています。

仲禅寺集落

「こまねこウォーク」では毎年、福知山公立大学地域経営学部小山ゼミの学生が解説役を務めています。学生にとっては、ゼミや図書館ではない現地を学びの場とすることで地域に対する理解を深めることになるし、参加者にとっても、学生の柔軟な発想に触れたり、地域に大学があることの意義について考えるきっかけとなります。小山元孝先生は長年にわたって神社や寺院の文化財調査に携わっており、小山先生自身が「edit Tango」のメンバーでもあります。

仲禅寺集落の入口の道路脇には石碑「嗚呼大震碑」が建っています。1927年3月7日に発生した北丹後地震において、仲禅寺は隣接する島津などとともに甚大な被害を受けた集落の一つであり、総戸数30戸のうち実に29戸が倒壊しています。地震からちょうど1年後の1928年3月7日にこの石碑が建立されていますが、北丹後地震関連の記念碑の中では最も早く建立されたものだそうです。

2019年、国土地理院は自然災害伝承碑という地図記号を新たに制定しました。現在の地形図にはこの石碑の地点にも自然災害伝承碑の記号が記されています。目に見えにくい過去の自然災害を地図上で可視化することで、災害の記録を社会全体で共有することを目的とする試みです。それでもやはり、「嗚呼大震碑」は日常で見落としてしまいがちな石碑であるため、今回のように能動的に地域の歴史を学ぶ機会ではこのような史跡に注目するようにしています。

縁城寺

縁城寺では、今村隆惠住職から本尊の由緒や特徴を聞き、さらに御朱印が持つ宗教的意味についても聞きました。私は御朱印巡りをしたことがありませんが、御朱印が寺院と参拝者を繋ぐ重要な媒介であることを理解するための貴重な機会となりました。

本堂正面の香炉や、本堂に続く参道の玉垣には「吉村伊助」という名前が刻まれていました。吉村伊助は峰山市街地にある吉村商店の当主の名跡であり、なかでも4代目吉村伊助(1873年~1928年)は商人としての活動にとどまらず、峰山町長や衆議院議員を務めた人物としても知られています。伊助の名前が寄進者の筆頭に刻まれていることは、吉村家が当時のこの地域の経済・社会の中心にいたことを物語っています。

2024年10月の同一イベント(ウィキペディアにゃウン vol.7 ものづくりの丹後)では吉村伊助も編集題材となりました。edit Tangoは丹後地方という特定地域を対象としていることで、各回のイベントが独立したものとして終わるのではなく、相互に関連しながら地域の知を積み重ねていっていると感じます。

Wikipedia編集

今回の編集題材としては、集落としての「仲禅寺」、寺院としての「縁城寺」などが選ばれており、参加者は事前に収集された文献を活用して編集を行っています。また、今回の参加者の中には、自身が居住する地域の記事を編集したいという方がいたため、この方には自身の記事に取り組んでもらいました。edit Tangoのイベントでは丹後地方の題材を扱いますが、イベントを通じて編集活動が他地域に広がっていくことも歓迎されており、このような展開自体が今回のイベントが開催された価値を物語るものです。

今回のイベントでは仲禅寺という大字の記事が新規作成されました。この記事はWikipedia日本語版内の推薦と選考を経て、10月21日にWikipedia日本語版のメインページに掲載されました。Wikipedia日本語版には一日あたり約100記事が新規作成されますが、この中から特に内容が充実していたり、出典が丁寧に付けられているなどする記事が選考され、一日あたり3~5記事がメインページに掲載されます。

一日あたり50万ビューのアクセス数があるメインページに掲載されることで、新規作成した題材を多くの方に知ってもらえるきっかけとなる上に、誤字脱字や表現の修正などを行ってもらえる可能性も高まります。自身の書いた記事が不特定多数の第三者に読まれるという経験をすることで、より質の高い記事を作成しようという動機にもなります。

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