日本の学生ウィキペディアンサークルが同人誌を刊行

Translate this post

2019年に発足した早稲田Wikipedianサークルは、日本の学生ウィキペディアンサークルの草分けです。早稲田大学の学生であったEugene Ormandyさんが発起人ですが、メンバーには他大学の学生や、社会人も含まれています。2022年にはサークル卒業生により稲門ウィキペディアン会が設立されました。この2つのグループが、先だって同人誌を刊行しました。

同人誌『Wikipediaの向こう側』

『Wikipediaの向こう側』書影(ながまき, CC BY 4.0)

本書の書誌事項は次の通りで、各章の内容は以下に記します。Wikipediaの向こう側 / 早稲田Wikipedianサークル, 稲門ウィキペディアン会 編集, 早稲田Wikipedianサークル, 稲門ウィキペディアン会 発行, 2026年5月, 94 p ; 21 cm

I ウィキペディアという場

まず第I章では、様々な背景を持つウィキペディアンが、それぞれのウィキペディアとの関わりを書いています。中国古典研究者のGynaecocracyさんは「ウィキペディアは解放の夢をみるか」で、ウィキペディアの「絶えず加筆され、無限の対話を繰り返す中で、よりよい状態へ向かっていく可能性」を指摘されています。次の辞書マニア、Lakka26さんは「ウィキペディアは辞書批評の手段である」で、辞書の敵であると考えていたウィキペディアに関わることで、辞書を客観視できるようになったそうです。3人目のginryousouさんは「ウィキペディアの制約が生む多様性」で、制約の存在が記事の多様化を促進するという主張を検討されています。

II ウィキペディアの内部

第II章は、具体的にウィキペディアの中に踏み込んだ論考です。小学校4年からウィキペディア編集を続けているコヨミヤさんは「五大新聞紙系列のウェブサイト出典使用数調査」で、記事の出典に使われる新聞系サイトを詳細に分析されています。次に日本近世史専攻のうらにわさんは「ウィキメディア・コモンズへの貢献:ライセンシングを考える」で、画像などをアップロードできるウィキメディア・コモンズの著作権の扱いについて、丁寧に解説されています。

III いま、何が起きているか

第III章では、実際に日本語版ウィキペディアで現在起きている事象が取り上げられました。管理者の舌先現象になりますさんは「日本語版ウィキペディアで起きた「生成AI問題」」で、2023年ころから発生している生成AIによる記事の問題点と対処を整理されています。次に韓国から日本に留学されたAspere(アスピア)さんは「外の視線から見た、日本のウィキメディア運動:その多様性と可能性、そして日本の国際化について」で、日本のウィキメディア・コミュニティの特徴を実にわかりやすく紐解いてくださっています。

IV 私たちとウィキペディア

第IV章は学生サークルを主導されているお二人の話です。中学1年からウィキペディアを書き始めたりんさんは、「ウィキペディアでの活動を振り返って」で等身大の経験を語られています。また日本を代表するウィキメディアンの一人と言って過言ではないEugene Ormandyさんは、「早稲田Wikipedianサークルの歴史:ペーパーカンパニーから互助会へ」でサークルの沿革を文字にすることで、記憶を記録とされています。

【対談】早稲田Wikipedianサークルと辞書尚友

最後に収められた対談はEugene OrmandyさんとLakka26さんによるもので、学生サークルの運営方法についてのヒントを披露してくださいました。

感想

同人誌というだけあって、メンバーそれぞれの持ち味が活かされた編集になっていますが、全体として現在の日本のウィキメディア・コミュニティの諸相が見事に浮かび上がる本になっていると感じました。ほとんどは2001年にウィキペディアが誕生したより後に生まれた若者たちですが、ひたひたと押し寄せてくる生成AIの波を肌で感じながらも、それぞれのまっとうな視点でウィキメディアに取り組んでいる姿勢に清々しさを覚えます。サークルの今後の活発な活動が期待されます。

Can you help us translate this article?

In order for this article to reach as many people as possible we would like your help. Can you translate this article to get the message out?