カーソルを使わずにWikipediaを編集したい

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Wikipediaを編集しているとき、「この操作、もう少し楽にできないかな」と思うことはないだろうか。

wikitextで文章を書きながら、括弧の中の文字を変更したり、文字や段落を削除したりする時。あるいは、PCの画面を分割して、ブラウザで文献を読みながら、もう片方のアプリでテキストエディタを開き、ウィンドウを切り替えながら文章を書くとき。

そのたびにマウスやトラックパッドに手を伸ばすのは、意外と小さなストレスになることもある。

そこで今回は、私が最近使っている「できるだけマウスやトラックパッドでカーソルを動かすことなくPCを操作する」ためのツールを紹介したい。特に、Wikipediaのように文章をたくさん編集する人には、意外と相性がいいかもしれない。

なぜこんなにもカーソルを使いたくないのか

私がカーソルの使用をあまり好まない理由は、単純に操作が手間だからだ。

私は現在MacBookを使っているが、例えばアプリのウィンドウの大きさを調整するとき、画面の隅にある小さなボタンを探してクリックする必要がある。ボタン自体が小さいうえに、そこまでカーソルを移動させるために、いったんカーソルの位置を探さなければならない。

ウィンドウを分割するときも同じだ。まずウィンドウの形を全画面の半分に分割するために、また画面の隅の小さいボタンと、それを押すためのカーソルを探さないといけない。

分割してからも大変で、ウィンドウをマウスやトラックパッドでドラッグして、ちょうどいい位置に配置する必要がある。2つ程度ならまだ管理できるものの、3つほどアプリを開いていると、きれいに配置できなかったり、そもそも同時に表示することを諦めたりしていた。

テキストの編集も、もう少し効率化できないかなと思っていた。

例えば、標準的な選択機能とDeleteキーだけで文字を消そうとすると、消したかった文字が全部消せなかったり、逆に残したかった文字まで消しすぎたりすることがある。

また、範囲選択をするためにはトラックパッドを押しながらカーソルを動かす必要がある。これも一回一回は小さな操作だが、カーソルの位置によっては動かしている途中でトラックパッドの端に到達してしまい、これ以上横に移動できない…選びたい場所を全部選択するには一度選択を解除してやり直さないと…みたいなこともよくあった。

一方、私は大学でAIや情報学を学んでいることもあり、プログラミングをしている人がPC作業を効率化するためのさまざまなツールを使っているのを目にする機会が時々ある。

そんな中で自分も真似して色々なツールを触っているうち、これはウィキメディア・ムーブメント界隈の方にも使ってもらえるかもしれないな、と思うものも見つけた。

作業の効率化に関しては、最近だとAIを使っている人も多い。もちろんAIにやってもらった方が早い、いわゆる「AI向き」な作業もある。一方、AIの出力したテキストにもハルシネーションが含まれている可能性はある以上、テキストを確認・修正する作業は残るだろうし、そのためにファイルを開いたり、ウィンドウを切り替えたりする作業は必要になる。そうした部分を少しでも快適にできないかと調べていく中で、私は主に Aerospace と Vim という2つのツールを使うようになった。

今回は、この2つについて紹介したい。

プログラミングに興味のない方でも、もしWikipediaをWikitext(Wiki記法)で編集しているのであれば、意外と参考になる部分があるかもしれない。

①Aerospaceでスクリーンを整理する

まず紹介したいのが Aerospace である。

Aerospaceは、macOSでウィンドウをキーボードから操作するためのウィンドウマネージャだ。ウィンドウを画面の左右に配置したり、複数のウィンドウを整理したりといった操作を、マウスやトラックパッドを使わずに行える。(ちなみにWindowsだと使えない。別の解決策もあるみたいなので、それも参照)

Aerospaceの特徴としては、これがタイル型のウィンドウマネージャーであることが挙げられる。

例えばあるアプリを開いている状態で別のアプリを開くと、それが自動的に画面をぴったり半分に分けた形で表示されるのだ。
アプリとアプリの間に変な隙間が入ることがないので、画面を綺麗に整頓した状態で作業に取り組める。

左:Wikipediaのページを開いたブラウザ、右:テキストエディタ(VS Code)。キーボード操作だけでウィンドウを綺麗に表示できる。また、例えば右で文章を編集している時、左のブラウザが見たくなったら、Option+hを押せばカーソルを使わずにブラウザの操作に移行できる。(写真:筆者撮影)

2つ、3つと多くのアプリを同時に起動していても、それぞれを自動的に並べて表示できる。もちろん設定を変更して、それぞれのアプリの大きさを変えることもできる。

私の場合、ウィンドウを分割しているとき、左側にはブラウザなどの情報を参照するアプリ、右側にはVS Codeなど文章を書き込むためのアプリを置いていることが多い。Aerospaceを使うと、こうした「いつもの配置」もキーボードから簡単に再現できる。

フルスクリーンにしたり、一時的にウィンドウを別の場所に移動したりするのも、画面上の小さなボタンを探す必要がない。Wikitextを編集しているときも、ブラウザで資料を確認しながらテキストエディタで文章を書く、といった作業がかなり楽になった。

また、Aerospaceには「ワークスペース」という考え方があり、作業ごとにウィンドウをまとめておくこともできる。私は個人作業用のワークスペースとユーザーグループ運営作業用のワークスペースを分けて、後者ではユーザーグループ用のアカウントでChromeプロファイルが使えるようにしている。これを使うと個人的な作業からユーザーグループ関連の業務への移行がスムーズに行えるようになった。

②Vimで編集を高速化する

次に紹介したいのが Vim である。

Vimは、キーボードだけでテキストを編集するためのテキストエディタとして長い歴史を持つソフトウェアである。現在ではVimから派生したNeovimなども広く使われている。

ここで少しややこしいのが、VimとNeovimは似ているが別のソフトウェアだという点である。

私は現在、VS CodeにNeovimのプラグインを入れて使っている。そのため、厳密にはVimそのものをエディタとして使っているわけではない。

ただ、私が主に使っているのはVim/Neovimの「キーバインド」と呼ばれる操作方法なので、今回はまとめて「Vim」と呼ぶことにする。

Vimはあまり人に強要すると「Vimハラ」と呼ばれることもあるので、決して人に無理やり勧めるつもりはない。それでも私がこのブログでVimを紹介するのは、やはりこの機能の便利さにある。

例えば、[[五足の靴]]とは九州旅行の様子を示した紀行文で…という文章を書いていたとする。ここでci[ という3つのキーを押すと、括弧の中身にあたる「五足の靴」の4文字分を一気に消して、[[ ]]だけを残せる。さらに、そのまま [[ ]]の中にカーソルが残り、括弧の中の文字を入力できる。

WikipediaのWikitextでは、文中にリンクを書くために [[ ]] を頻繁に使うと思うが、リンク先を変更したいときなどに、この操作が結構使える。

また、dwというキーを押せば、カーソル位置から次の単語までをまとめて削除できる。

dwだけなら1単語しか消せないので Deleteキーとそれほど大きな違いにはならないが、d7wくらいになれば7単語分をまとめて削除できる。

これが意外と快適。Deleteキーを何度も押して、「あ、消しすぎた」となることも減った。文字を一つずつ削除するのではなく、自分が消したい単位を指定して一気に操作するという感覚が良い。

他にも、私がよく使う操作には次のようなものがある。

  • V → }:ある位置からブロック単位で範囲選択する。}を連打すれば複数のブロックを選択することもできる。同じ作業をトラックパッドでやろうとすると、数秒間押し続けないといけなくて大変
  • Shift + { もしくは }:段落・ブロック単位で移動する。一段落にそこそこ文章がある場合、段落の間をサクサク移動できる
  • zz:カーソル位置が画面中央になるようにスクロールする。ztだとカーソル位置が画面上部に来る。見やすい
  • f+(任意の記号。.や,など): 現在のカーソルの位置から次の記号(.や,)まで一気に移動。文末を修正したり、次の文へ素早く移動するのに便利
V}で段落だけ選択。設定を調整すれば、このままブラウザにコピペも可(写真:筆者撮影)

一つひとつの操作の持つ機能は些細なものだ。それに操作は複雑だし、私自身も覚えるのには少し手間がかかった。しかし、こういうツールがあるからこそ、AIが文章の大部分を出力するような時になっても、文章を書くことが楽しめる部分もあると思う。そう思って私はVimを使っている。

また、Vimの持つ欠点の一つとして、日本語との相性がそこまでよくない。dwで消したいはずの単語が正しく認識されずに中途半端に消されたり、fを使って次の句読点まで飛びたい時に、や。を入力するために日本語入力に切り替えないといけなかったり。そこは少し工夫が必要だが、専門的な用語も増えるのでここでは割愛。

この記事を読んでVimに興味が湧いた人がいれば、wikitextをVimを使って編集する練習用のファイルをいくつか作ってgithubで公開しているので、よければ触ってみて欲しい。リンクはこちら。

それに、こういうのは私が一人で応用の仕方を考えるよりも、元々Wikipediaを頻繁に編集してきてwikitextの記法に慣れている方のほうが、うまい使い方をすぐに思いつきそうだ。そんな経験ある人を中心に、ツールの活用法が広まってくれたらなと考えている。

おわりに

今回紹介したのは、数あるPC操作の効率化ツールの中でもほんの一部である。

私自身もまだまだ知らないツールがたくさんあり、試している途中だ。AerospaceやVimがすべての人に合うわけでもないと思う。だからこそ、用途や好みに合わせて、自分にとって使いやすいツールを探してみてほしい。

そして、それぞれがどんなツールを使い、どんなふうに日頃のウィキメディア・ムーブメントへの参加を効率化しているのかも、ぜひシェアしてもらえるとうれしい。

余談:こんな感じのDiff記事を音声入力で書いている人もいるそうな。そっちの方が早いのは目に見えているので、自分もアウトプットのスピードを上げられるよう努力しなくては…。

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