辞書の記録を編む

2023年9月3日、早稲田WikipedianサークルLakka26 さんに、辞書に関するインタビューを実施しました。

インタビュー

Eugene Ormandy: 本日はよろしくお願いします。まずは、Lakka26 さんの来歴について教えてください。

Lakka26: 国語辞典に関するウィキペディア記事を充実させたいと思い、大学入学を機に早稲田Wikipedianサークルに入会して編集方法を学びました。実際に調査・編集をして驚いたのは、辞書に関する情報がきわめて少ないことですね。つまり、ウィキペディアの出典として活用できる、辞書をテーマとした新聞記事や書籍の数が少ないのです。特に旺文社国語辞典の情報量には衝撃を受けました。

Eugene Ormandy:たしかに「辞書に関する本」ってぱっと思い浮かばないですね……。

Lakka26: もちろん、積極的にアウトリーチを行っている辞書関係者もいらっしゃいます。たとえば、三省堂国語辞典の編集者で、早稲田Wikipedianサークルでも大変お世話になっている飯間浩明先生や、『日本人の知らない日本一の国語辞典』などを著した松井栄一先生ですね。また、見坊行徳さんが編集された『三省堂国語辞典から消えたことば辞典』は人気も高く、多くの方に読まれているようです。

Eugene Ormandy: なるほど。ところで、Lakka26 さんは実際の辞書編集者のお話を聞く機会もあるそうですが、その際に感じることはありますか。

Lakka26: 辞書編集の技術や方法論が、出版社内で完結してしまっているということですね。それらの知見は是非、論文や書籍といった、人の目に触れる形でまとめてほしいなと思います。そのような資料があれば、辞書に関するウィキペディア記事も充実しますしね。

Eugene Ormandy: ウィキペディアンとして強く共感します。ちなみに Lakka26 さんは、実際に辞書を編集されることにご興味はあるのでしょうか。

Lakka26: はい。もちろん興味はあります。しかし、最近は編集そのものよりも、辞書編集についての過程や、辞書についての言説をきちんと記録したいという思いの方が強いですね。先ほどお話ししたように、世間に知られていないことが辞書の世界にはまだまだ沢山ありますから。

また、そのような記録は、新しい辞書好きを獲得することにもつながると思っています。私は辞書好きのコミュニティに所属しているのですが、最年少のメンバーは私なんですよね。これはすなわち、新しいメンバーが入ってこなかった場合、辞書好きが共有している知見は私で途絶えてしまうということです。そのような事態を避けるためにも、このファンダムではどのようなことが話されているのか、そもそもファンダムは何を愛好しているのかを、まずは他の人もわかるように明示しなくてはいけないと思っています。

Eugene Ormandy: 素晴らしい志だと思います。辞書のアーキビストとしてのご活躍を期待しています。

まとめ

このインタビューののち、Lakka26 さんはご友人とともに辞書尚友という学生団体を立ち上げ、ブログメディア note を活用したアーカイブ活動を開始されました。「ごあいさつ【ご挨拶】」という投稿における「学生団体『辞書尚友』は、辞書が好きな大学生により設立された、辞書の研究、記録、普及活動を行う団体です」という一文には、本インタビューで Lakka26 さんが語った志が見事に反映されているなと個人的には感じました。

Lakka26 さんの素晴らしい行動力には、脱帽の一言です。ウィキペディアを通して、このような優秀な方と協働できることを嬉しく思います。