大宅壮一文庫でウィキペディア編集イベントを開催(2023年10月21日)

2023年10月21日、雑誌専門図書館の大宅壮一文庫で、飲食店をテーマとしたウィキペディア編集イベント WikipediaOYA を開催しました。ありがたいことに、今回で3回目の開催です。

大宅壮一文庫 (Eugene Ormandy, CC BY-SA 4.0)

参加者

イベントには、ウィキペディアン8名が参加しました。初回から皆勤賞の方も、今回初めて参加される方もいらっしゃいました。

データベース紹介

まずは、大宅壮一文庫の職員である鴨志田浩さんが、大宅壮一文庫独自の索引・分類体系、および独自のデータベース Web OYA-bunko を紹介してくださいました。また、7月にリニューアルされたばかりの Web OYA-bunko については、変更点や新たな活用可能性も説明してくださいました。

大宅壮一文庫のユニークな検索システムは、ウィキペディアンの強い味方です。特にサブカルチャーに関するトピックや、有名な喫茶店のような「単著が作られるほどではないが、ある程度資料はあるトピック」について編集する時は、国立国会図書館サーチ以上に役立ちます。このような活用例について詳しく知りたい方は、ウィキペディアンの Keeezawaさんが執筆した記事「Web OYA-bunkoが調べ物に便利すぎてヤバい」や、私が執筆した「雑誌専門図書館の大宅壮一文庫をウィキペディア記事の編集に活用する」をご覧ください。

書庫見学

続いて、書庫を見学しました。大宅壮一文庫はいわゆる「閉架式」の図書館で、利用者は書庫に入れないのですが、今回はご厚意で特別に見学させていただきました。

Eugene Ormandy, CC BY-SA 4.0
Eugene Ormandy, CC BY-SA 4.0
Eugene Ormandy, CC BY-SA 4.0
Eugene Ormandy, CC BY-SA 4.0

個人的には、昔のファッション誌の背表紙に記載された流行語に興味を惹かれました。例えば、2001年の『non-no』の背表紙には「豆顔」という言葉があったのですが、私はこの言葉を全く知りませんでした。いわゆる「死語」について調べる上でも、大宅壮一文庫は大変役立つのだなと感じました。

昼食

書庫見学ののち、お昼休憩。参加者の皆さんと一緒に、八幡山の中華料理店「味仙」に行きました。このお店は明治大学の体育会系学生御用達とのことで、料理は超大盛りでした!

味仙 (Eugene Ormandy, CC BY-SA 4.0)

編集

お昼ご飯ののち、13時過ぎから調査編集を開始。1階のPCで各自が調査を行い、2階の閲覧スペースで黙々と編集を行いました。みんなでワイワイ話しながらウィキペディアを編集するイベントもありますが、今回は他の図書館利用者もいたので、おしゃべりはほとんどせずに作業に取り組みました。

ディスカッション

編集作業は16時に終了。故・大宅壮一の書斎(現在は職員用のスペース)へ移動し、成果発表とディスカッションを行いました。参加者の皆さんはそれぞれ、執筆で苦労したことや、大宅壮一文庫がいかに編集に役立ったかについて発表し、職員の鴨志田さんが随時アドバイスを行いました。

特に話が盛り上がったのは「飲食店についてのウィキペディア記事と、その飲食店を経営する名物店主のウィキペディア記事がほぼ同一の内容になってしまう場合、どのように書き分けるか」でした。これはとあるウィキペディアンからの質問だったのですが、参加者一同、大いに悩んでしまいました。

興味深かったのは、大宅壮一文庫も似たような問題に直面しているということです。例えば飲食店に関する雑誌記事を、大宅式分類法「22028006 食べ歩き」と分類するか、「16011001 飲食業一般」と分類するかで悩むことがあるとのこと。「分類する」という作業の難しさは、ウィキペディアに限った話ではないのだなあと感じました。

作成された記事

今回のイベントでは、キッチンオトボケラドリオ不純喫茶ドープといった飲食店のウィキペディア記事のほか、配膳ロボットといった一風変わった記事も立項・加筆されました。詳しい成果については、日本語版ウィキペディア上のプロジェクトページ [[プロジェクト:アウトリーチ/GLAM/WikipediaOYA20231021]] をご覧ください。

キッチンオトボケ (Eugene Ormandy, CC BY-SA 4.0)
ラドリオ (Araisyohei, CC BY-SA 4.0)

感想

大宅壮一文庫とウィキペディア編集の相性の良さを再認識したイベントでした。「飲食店」というテーマのもとで様々な記事に着手するウィキペディアンと、ウィキペディアンからのどんな質問にも必ずユニークなアドバイスを提供する大宅壮一文庫の応酬は、さながら白熱したジャズ・セッションのようでした。共同作業によって想像以上の成果が生まれていく様子を目にするのは、企画者冥利に尽きますね。

ありがたいことに、WikipediaOYA も3度目の開催となりました。このように継続してイベントを開催できるのは、ひとえに大宅壮一文庫の皆様、特に鴨志田浩さんのおかげです。この場を借りて、改めて御礼申し上げます。今後ともよろしくお願いします。

参加者からのコメント

最後に、プロジェクトページに寄せられた参加者のコメントを紹介します。引用元は日本版ウィキペディア [[プロジェクト:アウトリーチ/GLAM/WikipediaOYA20231021]] 2023年10月25日 (水) 19:47‎ (UTC) 版です (CC BY-SA 4.0)。

  • 3回目のWikipediaOYAでした。今回もとても楽しかったです。「飲食店」というテーマのもとで、様々なウィキペディア記事が整備される様子は非常に興味深く(まさか配膳ロボットの記事が立項されるとは……)、ウィキペディアンのどんな要望にも何かしらの回答を与えてくれる大宅壮一文庫のシステムやレファレンス体制は感動的でした。今後も開催できれば幸いです。–Eugene Ormandy会話) 2023年10月21日 (土) 13:55 (UTC)
  • 大宅壮一文庫でのエディタソンははじめての参加となります。今回編集した記事はウェブ出典が微妙ですが、文庫の検索システムを利用して関連記事のある雑誌を見つけられてよかったです。今後も開催される場合はぜひ参加させてください!–ネイ会話) 2023年10月22日 (日) 07:52 (UTC)
  • あまり空気を読まずに配膳ロボットを立てましてすいません。日経の系列誌が配膳ロボットについて継続的にかなり詳しい記事を載せているので出典じたいは豊富だったのですが、出典のバラエティが少ないと思っていたところ、大宅壮一文庫では日経系列以外の出典を見つけることもでき、また司書の方のアドバイスによるキーワード検索で「配膳ロボット」という検索ワードでは見つからない出典も発見することができました。さすが専門図書館だと思い、感心いたしました。–さえぼー会話) 2023年10月22日 (日) 09:07 (UTC)
  • 四海樓を加筆しました。まだ活用できていない記事があるので後日より充実させたいです。書庫見学の際、ファッション誌の背タイトルから当時の流行を読み取ることができると気がつきました。今後何かしらの形で生かせればと考えています。–Lakka26会話) 2023年10月22日 (日) 12:25 (UTC)
  • Bar BenFiddichを立項しました。WEB上に非常に詳しい記事があったため大宅壮一文庫で参照した資料は補足的に使う形になりましたが、11件もの雑誌がヒットしてくれたおかげで充実した記事になりました。小学生並みの感想ですが書庫見学はとても楽しかったです。ことがら検索などは活用してみると色々発見があり面白そうなので、積極的に活用していきたいと思います。–Keeezawa会話) 2023年10月22日 (日) 12:47 (UTC)
  • リモート参加者です。昨年地元に帰郷しましたもので、せっかくですので地元の民宿青塚食堂を書かせていただきました。本イベントのみならず、翌日に開催されたWikipediaブンガク10井伏鱒二でもWebOYAを活用させていただき、おかげ様で双方とも良い資料に巡り逢うことができました。リアル参加したかったのですが、金銭的な問題のみならず、距離的なことも考えますと、どうしても前日の金曜日に休みを取る必要があり、仕事がとても休める状況ではありませんでしたので断念しました。次回こそはと思っております。–逃亡者会話) 2023年10月22日 (日) 20:46 (UTC)
  • 昨年秋のWikipediaOYAに続き、2回目の参加となります。当日は記事を完成させられなかったのですが、目当ての飲食店について多数の雑誌資料を見つけることができました。資料を探す際に使う検索システム「Web OYA-bunko」は、今年7月のリニューアルにより、昨年よりも操作方法がわかりやすくなっており、初心者としてはありがたかったです。–Kinstone会話) 2023年10月23日 (月) 08:48 (UTC)
  • 当日は資料探しで終わってしまい、記事を完成させられませんでした。良い資料を入手出来ましたので何とか形にしたいと思っています。また書庫見学で戦前の雑誌の豊富な所蔵を拝見し、大宅壮一文庫所蔵の戦前の雑誌を使って何か記事を立ててみたくなりました。–のりまき会話) 2023年10月23日 (月) 12:14 (UTC)
  • 毎回スタッフ参加させていただき恐縮です。毎度のことながら下ごしらえをしないと記事が作れない性でして、なんとか形にできてかな、と思います。ラドリオは、以前のエディタソンの昼食の際にお伺いさせていただいて気になっていたお店です。今回、このような形で再開できてとてもうれしく思います。ありがとうございました。–Araisyohei (talk) 2023年10月25日 (水) 00:12 (UTC)