アジア・アフリカ図書館をウィキペディアの編集に活用する

稲門ウィキペディアン会Eugene Ormandy です。2024年1月、東京都三鷹市にあるアジア・アフリカ図書館を訪問してウィキペディア記事を編集しました。本稿では、その模様をレポートします。

訪問の経緯

知の宝庫である図書館と、誰でも編集できる百科事典ウィキペディアの相性の良さは、日本でも少しずつ知られてきています。実際、各地の図書館で様々なイベントが開催されているほか、司書自身がウィキペディアの編集に携わる「1Lib1Ref」というキャンペーンも展開されています。

私もウィキペディアンとして各種イベントに協力しているのですが、個人的は特に、専門図書館とウィキペディアの提携に注目しています。というのも、専門図書館の豊富な蔵書や独自の分類体系、そして司書の専門知をいかせば、ウィキペディアを劇的に改善できるのではないかと感じているからです。実際、これまでに大宅壮一文庫三康図書館、さらには東京国立博物館で編集イベントを開催したのですが、どれも素晴らしい成果があがっています。

「ウィキペディアに協力してくれる専門図書館がもっと増えてほしいけど、そもそも東京にどんな専門図書館があるのかあまり知らないんだよな……」「個人的に関心のある、アジア分野に強い専門図書館の力を借りたいなあ」と思いながら国立国会図書館のサービス「リサーチ・ナビ」を眺めていたところ、「アジア情報機関ダイレクトリー」なるサービスを発見。日本国内のアジア関係資料所蔵機関が紹介されていたので、東京都内で気になる機関を探しました。

そこで見つけたのが、上述のアジア・アフリカ図書館です。この図書館はアジア・アフリカ財団が運営を行っており、火曜、土曜、日曜しか開館していないとのこと。とても面白そうなので、とりあえず1人で行ってみることにしました。

いざ訪問

JR吉祥駅から小田急バスに乗り、アジア・アフリカ学院駅で下車。さっそく図書館へ……といきたいところですが、まずは腹ごしらえ。近くの焼肉屋で石焼ビビンバを食べました。

図書館の近くにあった焼肉屋。(Eugene Ormandy, CC0)

お腹いっぱいになったので、いざアジア・アフリカ図書館へ。閑静な住宅街にある綺麗な建物です。ちなみに、隣には三鷹市立南部図書館があります。

アジア・アフリカ図書館。(Eugene Ormandy, CC0)

まずは、ざっと蔵書を確認。閲覧席が5つほどしかない小さな図書館ですが、資料は充実しており感動しました。国ごとにまとめられているので、調査にも便利です。

蔵書確認を一通り済ませたのち、これらを活用してどのウィキペディア記事を編集するかを考えました。理想を言えば、複数の資料を用いて新しい記事を1本サクッと立項したかったのですが、昼食後の眠気で集中力が削がれていたため、難易度の高い新規立項ではなく、既存の記事への小規模加筆を行うことに。具体的には、以前立項した「2005年のトルクメニスタンにおける図書館の閉鎖」というウィキペディア記事に、新たに追加できる参考資料がないかを探すことにしました。ちなみに当該記事の立項の経緯は、ウィキメディア財団のブログ Diff にまとめているので興味があればご覧くださいませ。

まずは書庫の「中央アジア」のコーナーを確認。一般的な公共図書館に比べればかなり充実していたのですが、それでもやはり、同館の他の棚に比べると少し弱い印象。そもそも、中央アジアに関する書籍があまり出版されていないのだろうなと感じました。とりあえず『中央アジアを知るための60章』という書籍に収録された、トルクメニスタンに関連する記事を読んでみましたが、図書館閉鎖に関する記述はありませんでした。

そこで、職員の方にレファレンスを依頼しました。具体的には「2005年にトルクメニスタンで行われた図書館の閉鎖に関する資料を探しています。ウィキペディアに載っている参考資料は全て目を通しました。資料の言語は日本語だとありがたいですが、英語でも大丈夫です」とお伝えし、調査をしていただきました。

残念ながら、すぐには良い資料が見つからなかったのですが、専門家等に確認の上、もし情報見つかった際には連絡していただけることになりました。これこそ専門図書館の強みですね。

せっかくなので、何かしら編集はしておこうと思い、上述の『中央アジアを知るための60章』を活用してウィキペディア記事「ルーフナーマ」を加筆しました。トルクメニスタンの初代大統領が執筆した本です。

まとめ

素敵な図書館でした。また行こうと思います。また、数人で訪問して、小規模なエディタソン(ウィキペディアの編集イベント)なども開催できたら素敵だなあと思いました。