ウィキメディア財団の製品・技術部門で年次計画を考えた

ウィキメディア運動の直面する最も差し迫った問題として私が信じるところに関して、去る11月、広く皆さんと対話しました。すなわち、ウィキペディアをはじめウィキメディアの全プロジェクトは多世代にわたる存在であると、私たちはどのようにすれば保証できるでしょうか? 時間を割いてこの質問を真剣に検討して、直接、私に答えてくださった皆さんに感謝申したく、また皆さんの回答にじっくりと目を通しましたので、私の方からも学んだことを共有しようと考えました。

第一にボランティアの皆さんがなぜ貢献するか、理由はひとつに絞れません。複数世代のボランティア育成には、人々がなぜ私たちのプロジェクトに時間を費やしてくれるのか、多くの理由をもっと掘り下げて理解するべきです。次に、私たちがどんな点で他と差別化されているか焦点を当てるべきです。インターネット上やプラットフォーム上では新世代の観衆の注目を集めようと先を争うあまり、偽情報や誤情報が蔓延しているとしても、私たちには信頼できるコンテンツを提供する能力があります。一例として、もし情報の欠落が不公平や差別や偏見に根ざしていた可能性があるなら、私たちは人類の知識の総和を集めて世界に届けるという使命のため、それらをも拾い上げ確実に使命を果たそうとしています。インターネットは、人工知能と豊富な経験値によってめまぐるしく変化していきますが、私たちのコンテンツはその中できちんと機能し、その重要性を保つ必要があります。最後にこの活動に対する資金供給を長く保つには、製品と収益を横断する共通戦略を築き、長命な資金提供の方法を見つけなければなりません。

これらのアイデアは2024年-2025年のウィキメディア財団年次計画に反映する予定であり、本日、皆さんとその最初の部分を共有したく、製品・技術の取り組み目標の草案の形でお見せします。昨年と同様、私たちの年次計画は全体として観衆とプラットフォームの技術面のニーズを中心に据えているのですが、果たして焦点を当てた課題が正しいかどうか、皆さんのフィードバックをお待ちしています。この数ヵ月を費やしてTalking:2024やメーリング・リスト、トークページやコミュニティのイベントなどの場で、今後1年間の製品・技術戦略に関してコミュニティの皆さんからアイデアを聴き集めており、それに基づいて組み立ててあります。 メタウィキで目標の草案全体に目を通してください

ここでいう「目標」とは、当財団が来年度に取り組む製品技術プロジェクトを形作る高次の方向性です。当財団の戦略方向性を意図的に広範に示してあり、要点は、多くの注力分野を想定できる中で当財団の提案としてどのような課題分野を来年度は優先すべきか表しています。現状、これを皆さんと共有して、当該年の予算や測定可能な目標の確定前に、私たちの初期段階の考え方の形成にコミュニティの皆さんからご協力いただきたいと考えます。

フィードバック

特にフィードバックを期待する分野の1つは「ウィキ体験」と名付けた一連の作業です。(「Wiki Experiences」。) 「ウィキ体験」とは人々が直接、ウィキを使うとき、それぞれの人が寄稿者や消費者あるいは寄付者のどの立場であっても効率的な方法を提供し、改善し、革新する方法と関連します。これには中核の技術と機能を支える作業が含まれ、ボランティア編集者 — 特に拡張権限を預かる編集者 — の体験向上に繋がるように、もっと良い機能とツールを、翻訳サービスを、プラットフォームの更新を手がけていきます。

ここでは計画をめぐる直近の論議から一部をまとめ、また私たちの発想にどのように磨きをかけるべきか、皆さん全員の考えを助けるよう、以下の質問を置いてみます。

  1. ボランティアとしてウィキメディアのプロジェクトに参加するなら、やりがいを感じる体験であるべきです。さらにオンラインの協働作業という経験は、ボランティアの皆さんが何度でも戻ってくる主な理由であるべきだと私たちは考えます。皆さんが無償の編集にやりがいを感じるため、お互いに協力して信頼できるコンテンツを構築するために、欠かせないものはいったい何でしょうか?
  2. 私たちのコンテンツの信頼性は、世界に贈るウィキメディア固有の貢献の一部を構成し、これがあるからこそ、人々は私たちのプラットフォームに何度もアクセスしコンテンツを利用し続けるのです。コミュニティはプロジェクトごとに品質のガードレールを設定しており、その範囲内に収まりつつ、信頼に足りるコンテンツをより迅速に伸ばすには、何を構築するとよいでしょうか?
  3. 関連性を保ちながら、ウィキメディアが大規模な他のオンライン・プラットフォームと競争するには、新世代の消費者にコンテンツと自身のつながりを感じてもらう必要があります。どうすれば、読者や寄付者にとってコンテンツが見つかりやすくなり、操作も楽になるでしょうか?
  4. 虐待がオンラインに蔓延する今の時代、コミュニティもプラットフォームも、そのためのシステムも、確実に保護する必要があります。それと並行して一方で私たちはコンプライアンス義務の進化に直面し、他方で世界の政策立案者は個人情報の保護、自己同一性やオンラインの情報共有を根付かせようとしています。これらの課題にきちんと対処するには、虐待と戦う能力をどのように改善すれば良いでしょうか?
  5. メディアウィキ(MediaWiki)とはソフトウェアのプラットフォームでありインタフェースであり、ウィキペディアが機能するように働くため、公開で大規模な多言語コンテンツを作成し修正し保存と発見ができるようにするため、常にサポートが必要です。今年、何を決定しプラットフォームをどのように改善すると、このMediaWiki を持続可能にできるでしょうか?