オープン・ソース・カンファレンス京都に向けて行った安全対策

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OSC京都の会場である京都リサーチパーク。J o, CC BY-SA 3.0 ウィキメディア・コモンズ経由で。https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Kyoto-Research-Park-01.jpg

Wadakuramonさん、VZP10224さんのお二人が既にDiffで発表してくださった2024年7月27日のオープン・ソース・カンファレンス京都 参加について、別の方向からご報告したいと思います。

すなわち、イベントにおける安全対策の取り組みという面です。


まず、今回のオープン・ソース・カンファレンス(以下OSC)には、下記のような前提条件がありました。

  1. 参加希望者には関東や東海地方の在住者が数人いる。開催地の京都までは日帰りでは少々遠く、泊まる必要があるメンバーが多い。
  2. 今回は未成年も参加する。

簡単に言えば、宿泊を伴い、未成年も参加するということです。

特に、未成年が参加するのですから、安全対策は必須です。

そのため、私たちユーザーグループは、7月27日のOSC開催から、1月以上前にイベントの安全対策に取り組みました。

まず、関東在住の未成年Aさん(仮名)が参加表明をしてくださいました。今回のイベントとその前後の宿泊は、Aさんが初めて行う新幹線での一人旅になります。私たちはAさんの普段の発言や行動から、国内での一人旅を行う十分な能力があると考えました。

とはいえ、未成年であることから、ユーザーグループ(以下UG)で、保護者の方に了解を取る必要があります。

同時に重要なのは、ユーザーグループが現在、「公認ユーザーグループ」であることです。何か事故やトラブルを起こすと、トラブルの当事者以外にも、ウィキペディアを始めとした日本語コミュニティ、またウィキメディア財団それに世界中のウィキメディア運動参加者など、多くの方に影響を及ぼす可能性があります。

危険項目リストをつくりながら思い出したこと

まず、私が、考え得る限りの危険をリストアップしました。

危険は、考え出せばキリがありません。地震や天災、火事、事故、犯罪の被害に遭うなどに関しては、災害は自治体、火事や事故は消防、犯罪は警察といったプロにお願いすることにします。

私は、イベントでの事件やトラブルに対して、少々ナーバスになっていました。それは、昔、関わった小さなイベントでの「事件」を思い出したからでもあります。

素人主催の小さなイベントでの「事件」

ずいぶん前ですが、友人が主催した、ごく小規模な同人誌即売会イベントを手伝ったことがあります。企業の主催イベントに参加したのではありませんし、イベントを仕切った経験がある人物もいませんでした。当時の私たちはとても若く、楽観的すぎました。つまり、トラブルの可能性をまったく考えていなかったのです。

イベント自体はエンターテイメントを主題にしたもので、20人ほどの参加者がなごやかに楽しんでいました。

しかし、持病をお持ちの方がいて、途中で激しい痙攣を伴う発作を起こしました。転げまわって痙攣する参加者の方に、主催者側にいた私は、とにかく焦ってしまったことだけを覚えています。幸い、参加者の中に看護師の方がおられ、落ち着いた対処をしてくださって、何とか無事に終わらせることができました。後で発作を起こした方に伺ったところ、イベントが楽しみだったので、持病を抑えるための薬は眠気が起きるから飲まなかったそうです。

想定される危険事項をリストアップ、対策を考え、叩き台としてパンフレットにまとめる

私はGoogleドキュメントに危険そうな事柄のリストをつくり、他のメンバーやAさんの保護者に見てもらうためのパンフレットを作っていきました。

前述のイベントのときのような経験をしたためか、まず思い浮かんだ「危険事項」は、

  1. 体調の悪化

です。

これは持病をお持ちの方には、普段飲んでいる薬などの確認をお願いするという形を取ることにしました。さらに不安がある方はスタッフにあらかじめお知らせくださいとお願いしました。

※ 現時点での反省: 持病がある方には自己申告をしていただき、「お薬手帳」や「かかりつけ医」などをうかがうのが良いかもしれません。プライバシーを尊重して、『お薬手帳や健康保険証、かかりつけ医、連絡先などをひとつにまとめておいてください』といった形で依頼するのが良さそうです。

道に迷う、会場にたどり着けない、メンバーとはぐれる

  1. イベント参加にあたって重要なのは、OSC京都の開催情報や主催者、また現地での集合時間や集合場所、宿泊場所などの情報がはっきりわかることです。これらを明確にパンフレットに記入します。
    • 宿泊施設について: 今回は宿泊が必要なので、会場である「京都リサーチパーク」のそばに、10人ほどが泊まれる一軒家旅館を借りました。部屋は三つあり、宿泊部屋は男女できっちり分けることにしました。
    • 今後の方針としても、夫婦や家族以外の異性の宿泊部屋は必ず別室にすることにします。LGBTなどのジェンダーの方が参加する機会があれば、また別に考える必要があるでしょう。
  2. さらに、責任者としてUGの年長者3人の名前と携帯電話番号を記入しました。これは緊急連絡先でもあります。
  3. 個別行動を行なっても、連絡を密に取り、情報交換を行えば、危険は減ると考えられます。いざとなればタクシーを使うように頼みました。

参加者間トラブルの可能性-UCoCと「安全であるべき場所の方針」

私たちはイベントの安全に関しては、ウィキメディアプロジェクトの方針 – ユニバーサル行動規範(UCoC) と「友好的であるべき場所の方針 の2つを参考にしようと考えていました。

  1. ユニバーサル行動規範(UCoC)やイベントの安全対策は、『嫌がらせや望ましくない行動の禁止』すなわち『参加者が、他の参加者に何らかの形で危害を加える』ことを防止するための対策がメインです。
  2. これに関しては、「ユニバーサル行動規範」および「友好的であるべき場所の方針」をコピーペーストして、パンフレットに転記しました。

参加者には、このふたつの規範および方針を読んでいただくようにお願いします。万一あまりにも違反行動を行う方がいらっしゃれば、イベントから追放することもありえます。

正直なところ、1番怖かったのは熱中症

ご存知の通り、夏の京都の暑さは過酷です。OSC京都のある週の予想最高気温は摂氏40度にもなります。個人的に1番不安を感じたのは熱中症です。

京都に詳しいメンバーによると、「OSCの会場と宿は近いし、どちらも冷房があるからそこまで心配しなくても平気」とのことでした。

京都リサーチパークは、事務所セミナー会場が集まったビルで、休憩場所やコンビニもあるので、確かに心配しすぎだったかもしれません。熱中症予防のための塩分とブドウ糖の入ったタブレットなどを用意しました。

メンバーで安全対策オンライン会議

OSCの1ヵ月程度前、他のメンバーに叩き台のパンフレットを見てもらい、オンライン会議を行いました。

基本的には、今回のイベントは、OSC京都という株式会社びぎねっと 様が行う催しへの参加です。ですから、OSC京都のイベントで起きたトラブルは、OSC京都のイベントスタッフの方に相談すると決定しました。

また他に、その場で決まったのは、イベント時のアルコール禁止です。

OSC京都ではイベント終了後に、アルコールも出る軽い打ち上げ兼交流会が予定されていました。未成年の方も参加するため、アルコールはやめておこうということになりました。

20歳以上のメンバーばかりのときは構わないようにも思えますが、トラブルの元になりかねないことは確かです。特に日本にルーツを持つ日本人は、かなりの割合でアルコールに弱い人がいます。健康への影響とともに、酔ったときにはトラブルを起こしやすい精神状態になるのはご存知のとおりです。

そのため、メンバー間では、原則禁止にします。

アルコールの好きな成人メンバーが、1人で電車で帰る際にビールを飲んだりするのは自由ではないかと思います。

このオンライン会議の後、参加用パンフレットをさらに書き換えました。Aさんにお願いして、参加用パンフレットを保護者の方に見ていただくように頼みました。

Aさんの保護者とオンライン会議

UGメンバー間での安全対策オンライン会議後、Aさんの保護者の方から、ユーザーグループとオンラインで会議をしたいという申し出をいただきました。

保護者の方にとって私たちはどこの誰だかわかりません。私を含め、成人メンバー2人でAさんおよび保護者とオンライン会議を行いました。ウィキメディアの目的や活動、『UCoC』や『安全であるべき場所の方針』の紹介もしました。

幸い、保護者の方は、Aさんにたくさんの経験をして欲しいと考えておられ、ご快諾いただけました。

保護者の方には、念のために緊急連絡先をうかがい、また、現地到着など1日2回程度連絡を取り合うことを約束しました。

イベント当日とその後

当日は、A4の紙一枚に、UCoCの英語版と日本語版を印刷したチラシを作成し、セミナー会場で配りました。

イベントは無事に終りました。

未成年のAさんは京都で帰りに寄りたい場所があるとおっしゃっていました。どこに寄るか尋ねると、ものすごくマニアックな博物館です。ベテラン司書のWadakuramonさんですら聞いたことがないそうです。さすがウィキメディアンですね。

おそらくイベントでは、思いもかけない事態が起こるのだろうと考えています。今後もユーザーグループでは、さらなる安全対策に取り組んでいく予定です。

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