稲門ウィキペディアン会の Eugene Ormandy です。2024年6月、ウィキデータ編集中に発見・報告した VIAF 項目のミスマッチングが、2024年8月に修正されていたので、その経緯や感想をまとめつつ、具体的な修正手法について検討を行います。なお、本稿では VIAF についての説明は割愛しておりますので、気になる方は日本語版ウィキペディア「バーチャル国際典拠ファイル」などをご覧ください。
経緯
2024年6月、ウィキデータを編集していたところ、参照した VIAF の項目にミスマッチングを発見したので、VIAF のフィードバック用メールアドレスに連絡しました。具体的な経緯は、ウィキメディア財団のブログ Diff に寄稿した記事「ウィキデータ・クエリビルダーを活用してタンザニアの都市に関するウィキデータ項目を改善する」にまとめているので、該当部分を引用します。
ウィキデータ項目の識別子欄を充実させるため、世界各国の典拠データを集約するバーチャル国際典拠ファイル (VIAF) でも「Isaka」と検索したのですが、この時 VIAF 上のミスを発見しました。
具体的には、上記検索でヒットしたパーマリンク: http://viaf.org/viaf/255512734のエントリで紹介されていた2つの典拠データが、異なるものを指し示していたのです(2024年6月21日時点)。具体的には、マダガスカルの「イサカ」を指し示すウィキデータ項目 (Q55979840) と、アメリカ合衆国ニューヨーク州の「イサカ (Ithaca)」を指し示す国立国会図書館典拠データ検索・提供サービス (ID:00628216) がまとめられていました。ということで、VIAF のフィードバック用メールアドレスに連絡しておきました。
Eugene Ormandy「ウィキデータ・クエリビルダーを活用してタンザニアの都市に関するウィキデータ項目を改善する」『Diff』2024年6月21日。
修正
2024年10月、ふと「そういえば数ヶ月前に VIAF に報告したミスマッチングって修正されたのかしら」と思ったので、上記のパーマリンク: http://viaf.org/viaf/255512734 にアクセスしました。結論を先に言うと、修正は行われていました。具体的な内容は以下のとおりです。
- パーマリンク : http://viaf.org/viaf/255512734 がパーマリンク : http://viaf.org/viaf/130173208 にリダイレクトされるようになった。
- 前者のパーマリンクに紐づけられていた、アメリカ合衆国ニューヨーク州の「イサカ (Ithaca)」を指し示す国立国会図書館典拠データ (ID:00628216) が、後者のパーマリンクに紐付けられた。修正作業が行われたのは、2024年8月4日(履歴欄より)。
感想
人類にとって最も重要な情報ハブの一つである VIAF が改善されてよかったです。私の指摘を受けて今回の修正作業が行われたのかどうかは不明ですが、もしそうであるとすれば「ウィキデータ編集者は VIAF の改善をサポートしうる存在である」ということを示す事例を一つ作れたのではないかと思います。
とはいえ、リダイレクトという措置が妥当だったかについては、私はまだ判断できません。というのも、これはマダガスカルの「イサカ」を示す VIAF 項目が実質的に消失したことを意味するからです。改めて整理しましょう。
- リダイレクト前のパーマリンク : http://viaf.org/viaf/255512734 には、マダガスカルの「イサカ」を指し示すウィキデータ項目 (Q55979840) と、アメリカ合衆国ニューヨーク州の「イサカ (Ithaca)」を指し示す国立国会図書館典拠データ (ID:00628216) が紐づけられていた。
- リダイレクト後のパーマリンク : http://viaf.org/viaf/130173208 には、アメリカ合衆国ニューヨーク州の「イサカ (Ithaca)」を指し示す、世界各国の典拠データが紐づけられている。
- アメリカ合衆国ニューヨーク州の「イサカ (Ithaca)」を指し示す国立国会図書館典拠データは、リダイレクト後のパーマリンクに紐付けられた。
- リダイレクト前のパーマリンクには、マダガスカルの「イサカ」を指し示すウィキデータ項目のみが残った。
各国の国立図書館が作成した典拠データのみを取集することを原則とする VIAF としては「ウィキデータしか紐づけられていない項目」を維持させるのは相応しくないと判断し、今回のリダイレクト措置を講じたのでしょう。その意図は理解できるのですが、マダガスカルの「イサカ」を指し示す VIAF 項目のパーマリンクを自館のウェブサイト等で参照していた機関にとっては「マダガスカルの『イサカ』について説明するために付与したリンクが、いつの間にかニューヨーク州の『イサカ』を説明するものになっていた」という事態が生じたわけです。混乱が生じた可能性、そして今後生じる可能性は否定できません。
あくまで妄想ですが、もし私が VIAF 担当者だったら、リダイレクトによる解決は行わず、当該パーマリンクに「この項目はマダガスカルの『イサカ』について説明している。この項目は、国立図書館が作成している典拠データがない状態であるにもかかわらず誤って立項されたものである。ただし、パーマリンクシステムの維持のため削除やリダイレクト等は行わず、項目として残存させたうえウィキデータをリンクする。今後、国立図書館が作成する典拠データでマダガスカルの『イサカ』を示すものがあればリンクする」と明記するかなと感じました。
とはいえ、現在のリダイレクト措置においても、国立図書館が作成する典拠データでマダガスカルの「イサカ」を示すものが誕生すれば、リダイレクトは解消されるはずでしょう。そんな日が来ることを期待しています。
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