早稲田Wikipedianサークルが文学作品記事の勉強会を開催

2022年6月22日、大学生・大学院生のウィキペディア編集者からなる早稲田Wikipedianサークルは、文学作品のウィキペディア記事に関するオンライン勉強会を開催した。

勉強会では「文学作品のウィキペディア記事を執筆してみたいが、どのように書けばよいかわからない」というサークルメンバーLakka26の相談に対し、同じくサークルメンバーのTakenari Higuchi, Eugene Ormandyらが、自身の執筆経験などをもとに回答した。本稿では、その模様をレポートする。

Jorge Royan, CC BY-SA 3.0, Wikimedia Commons “File:A Baroque library, Prague – 7555.jpg” https://commons.wikimedia.org/wiki/File:A_Baroque_library,Prague-_7555.jpg

あらすじについて

まずは日本語版ウィキペディアのガイドライン [[Wikipedia:あらすじの書き方]]を読み、「現在形をベースにする」「大袈裟な修辞は使わない」といったルールを確認した。当たり前のように存在するぶん、その詳細を意識することのなかった「あらすじ」について再考する機会になったという声があがったほか、このガイドラインは「あらすじとは何か」というエッセイとしても面白いという声もあがった。

その後Lakka26から、原典を出典として「あらすじ」を作成すると、それはもはや自分の創作となってしまうのではという懸念が示された。これに対しEugene Ormandy, Takenari Higuchiは、Lakka26の指摘のとおり「原典からどの部分をピックアップするか」という判断に編集者の独自性が表れてしまうため、ウィキペディア記事のあらすじを作成する際は、信頼できる二次資料に記されたあらすじを参考にするのがよいだろうという意見を示した。

なお、上述のような独自性を [[Wikipedia: 独自研究は載せない]] に違反するものとみなすか、それとも [[Wikipedia:中立的な観点]] に違反するものとみなすかは、解釈が分かれるだろうという声もあがった。

評価について

次に、文学作品の評価をどのように書けばよいかについて話し合った。

Lakka26は、自身がウィキペディアに書こうと思っている文学作品について「評論はいくつも集めたが、これらをどのようにまとめればよいか迷っている」と相談。

これに対しTakenari Higuchiは、自身が執筆した漫画記事 [[サンルームにて]] を取り上げ(本記事は良質な記事に選出されている)、「反響」「批評」「影響」といったテーマごとに評論を分類する方法があると示した。なお、これらはどのような基準で分類されるのかという質問に対しては、主に時系列で分類していると回答した。

一方、Eugene Ormandyは、同じく自身が執筆した指揮者の記事 [[アルトゥル・ニキシュ]] を取り上げ(同じく良質な記事)、評価者の属性ごとに評価をまとめる方法を示した。当該記事では「作曲家からの評価」「指揮者からの評価」のように評価節が分類されているが、それぞれのセクションに、Takenari Higuchiが指摘したような「(同時代の)反響」「(後世への)影響」が時系列順に組み込まれていると指摘した。

有用な資料について

Lakka26からは「個別の文学作品についての情報を集めるには、作家の伝記よりも、雑誌記事の方が役に立つ」という指摘があった。特に比較的マイナーな文学作品については、作家の伝記ではあまり取り上げられず、むしろ文学雑誌などにおける評論の方が、より多くの情報を含んでいるということであった。

これを受けて、雑誌記事を用いて[[名曲喫茶クラシック]]などの喫茶店記事を執筆しているEugene Ormandyは、雑誌専門図書館・大宅壮一文庫のデータベース “Web OYA-bunko” の有用性を指摘した。

まとめ

今回の勉強会では、文学作品のウィキペディア記事について、あらすじ、評価、有用な資料という観点から分析を行った。より良い記事のあり方や、記事作成のテクニックについて、それぞれのウィキペディアンが意見を共有することができたほか、各自がウィキペディアのガイドラインを読み直す機会にもなった。なお、今回の勉強会を受けて、Lakka26は後日文学作品のウィキペディア記事 [[ひかりごけ]] の大幅加筆を行った。

サークル活動を通して、ウィキペディアンの成長をサポートできたのは大変喜ばしい。今後も勉強会や編集講座を通して、ウィキペディアの発展やウィキペディアンの成長に貢献できれば幸いである。