私たちは、日本の神奈川県横浜市にある、神奈川近代文学館と神奈川県立図書館で定期的にエディタソンを開催しており、今回ウィキメディア財団の助成金報告に当たり、これまでの経緯をまとめたので報告する。

Rapid Grants
ウィキメディア財団の助成金制度があることを知り、Araisyoheiさんと協力しながら2020年2月に初めてRapid Grantsを申請した。慣れない英語での手続き、契約書への電子署名、海外送金など苦労したが、無事承認され2020年4月1日に合計¥154,741($1,410)の助成金が支給された。
当初、申請期間は2020年4月1日~2021年3月31日だったが、COVID-19のためイベント開催の延期かキャンセルの要請があり、2020年10月1日~2021年9月30日に申請期間を変更した。申請時には、期間中に3回以上の人物記事エディタソンの開催を構想していたが、実際に開催できたのは2回だった。開催できなかったのは、2021年3月に実施を検討していたWikiGap エディタソンで、その代わりに神奈川県立図書館主催のWikiGapに関するオンライン講演会が開催された。2回のイベントでは、会場費(文学館の中会議室使用料、下見時の観覧チケット代)、ポケットWi-Fiレンタル料、資料印刷費、講師旅費、茶菓子代、などに充てた。
助成金を受ける以前は参加者から参加費を集めて経費に充てていたが、助成金のおかげで、参加者の負担が減った。イベント開催回数が少なかったことや、感染症拡大防止のため各回の参加人数を少なくする必要があったことから、支給された助成金の全額を使うことはなく、残金は¥110,981($999.06)となった。
残金は次のサイクルの助成金に充てるべく申請した。2サイクル目の助成金は2021年10月に申請し、承認された。
2021年11月16日~2022年10月31日の期間中に3回の人物記事エディタソンを開催した。そのうち1回はオンラインイベントになった。WikiGapオンライン2022では、助成金をZoomの有料アカウントの契約と参加記念グッズ(缶バッジとステッカー)製作費に充てた。Wikipediaブンガク7・8では、会場費(文学館の中会議室使用料、下見時の観覧チケット代)、ポケットWi-Fi、資料印刷費、講師旅費、おやつ代、などに充てた。
神奈川の人物記事エディタソン
助成金を受けた 神奈川のエディタソンには、2系統のイベントがある。一つはWikiGap、一つはWikipediaブンガクだ。
WikiGap in Kanagawa
日本の神奈川県立図書館には、豊富な女性関連資料がある。これを活用して女性に関する記事を充実させるイベントだ。県立図書館の協力を得て、2019年から始まり、3月3日(雛祭り 女児のためのお祭り)の前後に開催されるのだが、COVID-19の影響で、2020年、2021年には開催できなかった。2022年も対面イベントの開催は困難な状況で、オンラインイベントを開催した。
WikiGapオンライン2022は、3月3日から国際女性デーである3月8日までの期間に、参加者がそれぞれ好きな場所で女性に関する記事を立項したり加筆したりするイベントだ。基本的に一人(単独)でWikipediaの記事の編集ができる人の参加を想定したプログラムである。Wikipediaの編集経験はないがWikiGapの理念に関心がある人にも参加しやすいプログラムを用意したいと考え、期間中の3月6日にZoomによる初心者向けミーティングを設定した。
3時間のミーティング中に初心者が実際に編作業を体験するには十分なサポートが難しいと判断し、ウィキペディアの基礎に関する説明と編集デモンストレーションのみを実施した。また、質疑応答の時間を設け、わからないことを聞きやすい雰囲気を心がけた。
ミーティングに参加した初心者が、その後実際に加筆にチャレンジした事例もあり、ミーティングを設定してよかった。期間中、23名が参加し、新規記事45、加筆18件の成果があった。
ウィキペディアブンガク
神奈川近代文学館の特別展を観覧し、展示内容に関連する人物や事柄に関する記事を充実させるイベントで、2018年から開催されており、2022年10月までに8回開催されている。これまで、ウィキペディアブンガクでは、以下のテーマについて取り扱った。
- WPB1: 山川方夫(2018年2月25日)
- WPB2: 寺山修司(2018年10月8日)
- WPB3: 松本清張(2019年4月21日)
- WPB4: 中島敦(2019年10月6日)
- WPB5: 大岡昇平(2020年4月26日を延期、2020年10月25日開催)
- WPB6: 新青年(2021年4月25日)
- WPB7: 吉田健一(2022年5月5日)
- WPB8: 川端康成(2022年10月10日)
2022年には、WPB7吉田健一とWPB8川端康成を開催した。各回は、午前中に神奈川近代文学館で学芸員による解説を聞いた後で特別展を観覧し、午後は神奈川県立図書館に移動して調査執筆活動を行うのが基本だ。
WPB7の開催時は、県立図書館が新棟建設中で利用できなかったため、午後も文学館で調査執筆を行った。文学館の閲覧室にも関連資料は揃っており、スタッフも事前に資料を集めて持ち込んだ。WPB8の開催時には、県立図書館の本館がオープンし、新しい会場で調査執筆することができた。
WPB7は参加者 14名、新規記事 6、加筆記事 13。WPB8は参加者 13名、新規記事 7、加筆記事 8となった。これにより、累計の新規記事 52、加筆記事 30となった。

両イベントに共通する目的は次の通りだ。
- Wikipediaの記事を充実させたい
- Wikipediaの編集者、理解者、応援者を増やしたい
- 近代文学館や県立図書館といった施設を活用する機会をつくり、存在意義をアピールしたい
最後に、アウトリーチ活動に対して助成金プログラムを実施しているウィキメディア財団には感謝の意を表したい。