雑誌専門図書館の大宅壮一文庫で、スイーツをテーマとしたウィキペディア編集イベント WikipediaOYA を開催

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2022年11月19日、東京都世田谷区の雑誌専門図書館大宅壮一文庫にて、スイーツをテーマとしたウィキペディア編集イベント WikipediaOYA を開催した。本稿ではその模様について詳述する。

大宅壮一文庫の書庫に並ぶ大量の雑誌 ( Eugene Ormandy, CC BY SA)

イベント構成

イベントの流れは以下のとおりである。

11:00〜11:20 

大宅壮一文庫の職員による、検索システム Web OYA-bunko の解説

11:20〜13:00 

大宅壮一文庫の書庫ツアー

13:00〜14:00 

各自昼食

14:00〜16:00 

調査・執筆・撮影

16:00〜17:00 

ディスカッション

イベントの運営は、稲門ウィキペディアン会に所属する筆者(企画立案者)、日本語版ウィキペディア管理者のAraisyohei、大宅壮一文庫職員、その他の図書館関係者からなるチームで行なった。また、大宅壮一文庫の作業スペースが限られていることと、新型コロナウイルスの感染が拡大していたことをふまえ、イベントは招待制とした。

イベントには、武蔵大学准教授の北村紗衣や、早稲田Wikipedianサークルのメンバーをはじめとするベテランウィキペディア編集者が参加し、スイーツをテーマとした記事を執筆した。

WikipediaOYAは、今回が2回目の開催であった。第1回 WikipediaOYA のレポート記事は以下のとおりである。

検索システムの解説

まずは大宅壮一文庫の職員が、独自の検索システム Web OYA-bunko についてレクチャーを行った。簡単検索、詳細検索、分類別検索、目録検索という4つの機能を紹介したのち、Web OYA-bunko が準拠する雑誌記事索引や大宅式分類法について簡単な解説を行った。

Web OYA-bunko の詳細については、大宅壮一文庫のウェブサイトでも確認できる。

書庫ツアー

レクチャー終了後、大宅壮一文庫の書庫ツアーを実施した。大宅壮一文庫は閉架式の図書館であるため、利用者は通常、書庫を見ることはできない。しかし今回は特別に見学が許可された。

大宅壮一文庫の書庫 (Eugene Ormandy, CC BY SA)

書庫は圧巻であった。所狭しと並ぶ大量の雑誌に、参加者たちは圧倒された。ウィキペディア編集者は、資料として使いたい雑誌が全巻揃っていることに目を輝かせ、別の図書館から参加した司書は、大宅壮一文庫の独特な書架、出納方法に驚いていた。参加者からは「ひとつの棚を見るだけで1日が終わってしまう」「この書庫に住みたい」といった声すら上がった。

書庫の様子は、大宅壮一文庫が公開している YouTube動画でも見ることができる。

調査、執筆、撮影

書庫ツアーののち、ウィキペディア編集者たちは調査・執筆を開始した。今回のイベントの執筆テーマは「スイーツ」である。ウィキペディア編集者たちは Web OYA-bunko を活用して、スイーツに関する記事の立項、既存の記事への加筆を行なった。なお、今回編集した記事は、ウィキペディア上のイベントページにまとめられている。

ウィキペディア編集者たちが調査、執筆を行なっている間、他の図書館の司書からなるチームは、大宅壮一文庫の動画撮影を行った。具体的には、大宅壮一文庫特有の複写方法や、職員インタビューなどを撮影した。この動画は後日、Araisyohei のYouTubeアカウントにアップされる予定である。

なお、第1回 WikipediaOYA でも以下の動画を作成している。

ディスカッション

最後に、図書館内にある故大宅壮一の部屋でディスカッションを行なった。ディスカッションでは、各自がイベントの感想、編集したウィキペディア記事、調査で苦労した点、大宅壮一文庫の特徴などについて話した。参加者からは「書庫に圧倒された」「好きな雑誌が全巻揃っていて嬉しかった」「雑誌を辿ることで、流行の変遷を追うことができた」「大宅壮一文庫の検索システムは、ウィキペディアの編集にとても役立つ」という声が上がった。

印象的だったのは、ウィキペディア編集者が調査方法について説明したのち、大宅壮一文庫の職員が「他にこのような調べ方もできる」というアドバイスをしたことだ。例えば、フランスのチョコレートケーキについての情報を集めるために、件名項目体系の「16世相>009菓子」で検索を行なったウィキペディア編集者に対しては、「04世界>084フランス・世相風俗>004衣食住、美容」で検索する方法もあると紹介した。また、雑誌の種類ごとにスイーツのとりあげ方が異なっていると指摘したウィキペディア編集者には、雑誌の種類を限定した調査も可能だと紹介していた。

豊富な資料、独自の調査システム、そして素晴らしいレファレンス体制といった大宅壮一文庫の魅力が浮き彫りとなったディスカッションであった。なお、大宅壮一文庫の職員はディスカッションののち「利用者の声を直接聞くことができる機会は少ないので、とても嬉しい」と述べた。

ふりかえり

WikipediaOYA 運営チームが掲げる目標は「ウィキペディア、ウィキペディア編集者、大宅壮一文庫以外の図書館関係者、大宅壮一文庫の全てにメリットがあるイベントにすること」である。

ウィキペディアおよびウィキペディア編集者にとってのメリットはわかりやすい。ウィキペディアにおける記事が充実するし、編集者たちは便利な検索ツールを知ることができるからだ。また。外部の図書館関係者にとってのメリットは、大宅壮一文庫という特殊な図書館を見学できることだろう。図書館の資料を活用してウィキペディアを編集する利用者の声を直接聞けることも、あまりない機会だと思われる。

それでは、大宅壮一文庫にとって WikipediaOYA のメリットとは何か。筆者は「ウィキペディア編集を通して大宅壮一文庫の魅力が明らかになり、それがアーカイブされること」だと考えている。大宅壮一文庫を活用してウィキペディア記事を編集し、その活用方法をディスカッションで共有し、それらをイベントページやブログ記事などにアーカイブする。これにより、大宅壮一文庫の魅力が浮き彫りになるとともに、イベント参加者以外にもその魅力を伝えることが可能になる。WikipediaOYA が大宅壮一文庫にとって、広報材料獲得の契機となり、さらに自館の魅力を再発見する機会となれば、企画立案者、そして大宅壮一文庫のファンとして、これほど嬉しいことはない。

第2回 WikipediaOYA は、ある程度目標を達成できたのではないかと思っている。ありがたいことに、様々な方からお褒めの言葉も頂けた。また、「楽しかった」「勉強になった」という声を聞けて、大変嬉しかった。今後も全ての参加者が満足してもらえるようなウィキペディアイベントの運営に努めたい。

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