東京23区の公共図書館をウィキペディアの編集に活用するシリーズ第6弾。今回は荒川区立南千住図書館を訪問しました。
執筆にあたって
図書館の意義が問われる時代です。出版不況が続き、オープンアクセス化が推進され、人工知能が台頭する現代において、図書館はどのような存在であるべきなのでしょうか。
それを探るためには、図書館の活用記録、すなわち「図書館のおかげでこんなことができた」という記録が、様々な観点から作成される必要があると私は考えています。未来を描くためには過去を知る必要がありますし、過去を知るためには資料が必要だからです。
そのような思いで「東京都の公共図書館をウィキペディアの編集に活用する」シリーズを立ち上げました。このシリーズでは、私 Eugene Ormandy が東京23区の様々な公共図書館を訪問し、その資料を活用してウィキペディアを編集する模様を、ウィキメディア財団のブログ Diff にまとめます。
本シリーズが、図書館の意義や未来を探るための参考資料となれば、これほど嬉しいことはありません。
調査方針
図書館を訪問する前に、その土地に関するウィキペディア記事数本に目を通し、図書館資料を用いて加筆修正できそうな箇所の目星をつけます。また、図書館を訪問した際は、その箇所をレファレンスカウンターで示し、役立ちそうな資料を教えていただくこととします。
事前準備
今回は荒川区立南千住図書館を訪問することにしました。訪問前に、下記のウィキペディア記事に目を通しました。
- [[南千住]] – 南千住図書館がある街。参照した版は2023年4月8日 (土) 06:35 (UTC) 版。
- [[南千住浄水場]] – 南千住にある浄水場。参照した版は2023年2月15日 (水) 09:09 (UTC) 版。
- [[南千住警察署]] – 南千住にある警察署。参照した版は2023年3月17日 (金) 14:25 (UTC) 版。
今回のテーマは「ウィキペディア記事 [[南千住浄水場]] に、何が出典を追加すること」とします。
図書館訪問
荒川区立中央図書館から20分ほど歩いて南千住図書館へ。同じ建物内には荒川ふるさと文化館があります。

2階が図書館の児童フロア、3階が図書館の一般フロアという構成。一般フロアの入口付近には「南千住図書館図書館員のおすすめ本コーナー」という展示がありました。訪問した日のテーマは音楽。村上春樹の『村上ソングズ』や、宮下奈都の『羊と鋼の森』が紹介されていました。
また、入口には「荒川区の読書のまちづくり」というポスターも。荒川区立図書館の歴史がわかりやすくまとめられていて勉強になりました。他にも、奥の細道文庫という俳句本の特集や、荒川区出身の作家である吉村昭の特集が組まれていました。図書館独自の企画は面白いですね。
今回もウィキペディアの編集を始める前に、私が愛してやまないプロレス本の棚を確認したのですが、その質の高さに度肝を抜かれてしまいました。まず目に止まったのは、大仁田厚『人生に必要なことは、電流爆破が教えてくれた』。そしてジャスト日本『インディペンデント・ブルース : 月で生まれ輝くレスラーたちの物語』。さらには高木三四郎『年商500万円の弱小プロレス団体が上場企業のグループ入りするまで』やロッシー小川『〈実録〉昭和・平成女子プロレス秘史』。そうです。南千住図書館は、新日本プロレスや全日本プロレスといった、いわゆる「メジャー」以外のプロレス団体を取り上げた書籍もきちんとカバーしているのです。さらに、雑誌コーナーには「世界最高の雑誌」と名高い『週刊プロレス』が!これでプロレスの主要な流れもばっちりカバーできます。完璧。何も言うことがありません。プロレスファンは絶対に南千住図書館へ!!!
プロレスのみならず、クラシック音楽のチョイスも一味違っていました。ニコラウス・アーノンクールが指揮するハイドン『アルミーダ』のCDを見かけた時は思わず「シブい……」と呟いてしまいました。
閑話休題。ウィキペディアのための調査に移ります。レファレンスカウンターで「南千住浄水場について記載がある資料はありますか」と質問したところ、『荒川区史 下』を紹介していただきました。ありがたいことに、私が資料を読んでいる間も司書の方は色々と調べてくださり、追加で『証言に基づく東京下水道史 資料編』『東京近代水道百年史』を紹介してくださいました。
編集は続く
分量的に、その場で編集することはできないと判断し、資料を複写して家に持ち帰ることに。後日、上記の資料を用いて、ウィキペディア記事 [[南千住浄水場]] を加筆しました。差分はこちら。

まとめ
とにかく最高のプロレス図書館でした。また、レファレンス対応も非常に丁寧だったので、プロレスファンやウィキペディアンは是非!