本稿では、津軽地方の駄菓子「大王当て」のウィキペディア記事を立項した経緯や、その調査方法などを紹介します。ウィキペディアに関心がある方のお役に立てば幸いです。
きっかけ
『日本経済新聞』の記事を毎日1本ピックアップして、ウィキペディアの参考文献として活用するという極めて面倒臭いプロジェクトに、私は1人で取り組んでいます。なお、本稿を執筆している2023年6月時点で、絶賛挫折中です。
2023年4月26日の『日本経済新聞』を読みながら、私は頭を抱えていました。なぜなら、ウィキペディアに活用できそうな記事が1つもなかったからです。
唯一可能性があったのは、大王当てというお菓子を紹介した「くじ見張るのは閻魔大王 青森・津軽特有「当物」駄菓子の伝統守る」という文化面の記事。しかし肝心の大王当ては、ウィキペディアに立項されていませんでした。
ないのなら 作ってしまえ ウィキペディア
ないのなら 作ってしまえ ウィキペディア
ないのなら 作ってしまえ ウィキペディア
頭の中でこだまするクソ川柳に導かれ、私はいつの間にか「大王当て」のウィキペディア記事を作り始めていました。
調査執筆
ウィキペディア記事を作成するうえで重要なことは、出典を複数用意することです。出典が一つしかない記事は、著作権や中立性に問題がある可能性が高く、「単一の出典」テンプレートを貼られてしまいます。
そのため、日本経済新聞の記事以外で、大王当てを取り上げた「信頼できる情報源」がないか探すことにしました。まずはグーグルで「大王当て and 新聞」と検索した結果、いきなり朝日新聞や弘前経済新聞の記事がヒット。この3つの新聞記事で、記事の骨格は作れそうだと感じました。幸先の良いスタートです。
なお、ここでのポイントは単に「大王当て」ではなく「大王当て and 新聞」と検索したことです。ウィキペディアの参考文献として活用する資料は「信頼できる情報源」でなくてはいけないので、このような検索をしました。「ウェブ新聞」であれば、ある程度の質は担保されていますからね。
日本経済新聞、朝日新聞、弘前経済新聞で記事の骨格を作成したのち、その他のウェブ資料で肉付けを行いました。具体的には、グーグルおよびグーグルブックスで「大王当て」と検索してヒットした資料です。なお、国立国会図書館デジタルコレクションでも検索しましたが、意外にもヒットしませんでした。
下書きの具体的な作成方法ですが、はじめから章立てを決定することはせず、まずは大王当てに関する情報を「概要」節に列挙しました。
資料に記載された情報をある程度下書きに反映したのち、いくつかの節に分類して、標準空間(普通のウィキペディア記事が存在する空間)に投稿しました。最終的に、章立ては「概要」「沿革」「製法」「文化的背景」となりました(投稿時の 2023年5月15日 (月) 15:00 (UTC) 版)。なお、この記事は投稿後、メインページ新着記事に選出されました。
余談ですが、ウィキペディアンの逃亡者さんが [[蓬莱屋 (とんかつ店)]] という記事を作成した時も、「はじめは概要節に情報を列挙し、分量が増えたら節を分ける」という方法を採用しています。
逃亡者
現時点(インタビュー時に参照したのは 2023年5月19日 (金) 23:24 (UTC) 版)では、「沿革」「特徴」「著名人による評価」「創作作品での扱い」という章立てになっていますが、下書きに着手した段階からこの構成にしようと決めていたわけではありません。
まずは蓬莱屋に関する情報を下書きに列挙し、ある程度長くなったら章を分けるという方法で執筆を進めました。なお、私は他にもいくつか飲食店記事を書いていますが、 [[キッチン友]] 程度の長さであれば、細かく章を分けることはしませんね。
Eugene Ormandy「【インタビュー】とんかつ屋のウィキペディア記事を編集する」より引用。
まとめ
ウィキペディア記事 [[大王当て]] を立項した経緯や、調査執筆の方法を紹介しました。執筆に悩むウィキペディアンや、ウィキペディアに興味のある研究者、ジャーナリストのお役に立てば幸いです。