世界の公館を順にめぐり、外国につながる

2012年5月3日 Nicholas Michael Bashour

この投稿を翻訳

文化と知識のグローバルなハブといえばワシントンD.C.です。この一帯に所在する大学や高等教育施設(英語)の件数もそうですし、美術館・博物館(英語)は30軒超、さらには蔵書数29百万件を収めた世界最大の図書館もあります。
では、文化と教育の第4のリソースとはなんでしょう? しばしば見落とされがちなこの都市—ワシントン特別区には170件超の大使館ほか外交機関(英語)があります。知識の宝庫でありながらひっそりと佇み、文化を表す実物資料や美術品を備え、主催者として 数え切れないほど豊富な、教育関連あるいは文化関連催事を5月に集中して取り仕切りします。この都市で5月というと、市長ヴィンセント・グレイ(英語) Vincent Gray が「世界の文化に意識を高める月間」に定めて外交機関から受ける特別な価値を披露しようとしています。
国際機関が蓄えた知的なエネルギーをとらえて文化や教育のリソースに注目する企画として、ウィキメディア・ワシントン特別区協会(Wikimedia DC)は先週、大使館アウトリーチ・イニシアティブ(EOI=Embassy Outreach Initiative)を立ち上げ、ワシントン欧州協会※1在ワシントン特別区エストニア大使館※2の協賛を得て記念イベントを催しました。エストニア大使館の会場ではパネルディスカッションを開き、インターネットのグローバルな自由を確保する努力を主題に、Danny Weitzner(ダニー・ワイズナー:大統領府科学技術方針部局Office of Science & Technology Policyインターネット技術担当副長官)、Marko Mihkelson, (マルコ・ミケルソン:エストニア国会外交委員会委員長)、 Ian Schuler, (イアン・シュラー:アメリカ合衆国国務省インターネットの自由事業局長)、Rebecca MacKinnon(レベッカ・マッキノン:新米州基金B・L・シュワルツ上席特別研究員、ウィキメディア財団諮問委員)を迎え、司会進行はAdam Kushner(アダム・クシュナー『ナショナル』誌副編集長)が務めています。(※:1=Washington European Society。2=Estonian Embassy in Washington。3=White House Office of Science & Technology Policy。Foreign Affairs Committee of the Estonian Parliament。Senior Manager for Internet Freedom Programs at the US State Department。Bernard L. Schwartz senior fellow at the New America Foundation、Wikimedia Foundation Advisory Board。 Deputy Editor of the National Journal。)

向かって左から右へ:R・ワイズナー、ミケルソン、シュラー、マッキノン。CC-BY-SA

この EOI の核心にある理想は、ウィキメディア・ワシントン特別区協会とウィキメディ財団が取り組む国境を超えた会話をもたらそうとする努力を牽引しています。この面ではエストニア大使館を初回 EOI 開催の会場に選んだ意図が感じられます。エストニアは地元に本拠を置く民間機関「自由の家」Freedom Houseの分析によると、インターネットの自由番付で世界1位の国として認められました。エストニアでは技術系あるいはインターネットに特化した企業、創業間もない企業(例:Skype)あるいは知識のイニシアティブが隆盛であり、さらにエストニア語版ウィキペディアも遅れを取っていません。記事総数およそ9万5千件(英語)を数え、月間のページ閲覧件数は8.1百万ビュー、英語版ウィキペディアの統計と対照すると規模が霞むように思えても、エストニアの総人口(1.3百万人前後)を考えるとこれらの数値には重みがあります。
ウィキマニア2012 Wikimania 2012を機会に、ウィキメディアのグローバルなコミュニティはワシントン特別区に集合し、世界は無料のグローバルな知識をどのように協働で実現しているか、この都市に披露してくれるでしょう。上記の人々が世界各国から到着する前から、あるいは催事を終えて故郷へ帰った後も長い間、ワシントンD.C.は今後も将来も、知識の共有を話題に会話を促す好立地の座にあります。それがこの地区における普及活動とプログラム振興の究極の目標であり – EOI と図書館ラボ LibraryLab の間柄のように – すでにこの都市にある協働のチャンスを拾い上げ、グローバルな知識に肯定的で長期にわたる波及効果を及ぼそうとしています。
Nicholas Michael Bashour ニコラス・マイケル・バシュァ、ウィキメディア・ワシントン特別区協会会長

過去版のお知らせ:この記事はかつて blog.wikimedia.org, に掲載されて過去ログ化されています。旧来の投稿に添えた編集とコンテンツのガイドラインは現行のディフ(Diff)のそれとは異なりました。