私たち映像ワークショップは「眠っている文化・芸術資源を掘り起こし、次世代の創造性につなげる」をテーマに活動しています。2018年に結成し、郷土資料アーカイブプロジェクト「モモモモンタージュ」に着手し、2021年からはMediaWikiを使ったコミュニティ・アーカイブプロジェクト「かがが」を始動しました。

郷土資料アーカイブプロジェクト「モモモモンタージュ」

プロジェクトの中心となる石川県加賀市は福井県との県境に位置し、加賀温泉郷、九谷焼や山中漆器等の伝統工芸、橋立や瀬越といった北前船の船主集落でも知られる地域です。
「モモモモンタージュ」では、この地域に眠る古いアルバムや8ミリフィルム、VHSなどを掘り起こしてデジタル化し、それらを活用した上映会やワークショップなどを行ってきました。
これらの資料は、一般家庭へ呼びかけて収集したもの。「丁寧に残された日常から学ぶこと」をテーマに、アーカイブを通じてオンサイトとオンライン両方の新しい交流の形を模索してきました。



こうした実践の中でコミュニティ・アーカイブ*という言葉に出会い、地域のアーカイブを住民と一緒に作り続けるという発想を次の展開への足掛かりとしました。
*コミュニティ・アーカイブとは、市民自らが、自分の暮らす地域や、関係するコミュニティにおいて生じた出来事を記録し、それをアーカイブとして継承しようとする活動のことである。
「アーカイブを憎むな、アーカイブになれ」佐藤知久
「モモモモンタージュ」から「かがが」へ
「かがが」は、図書館や地区会館などの公共施設に残されていた郷土資料をデジタル化、オンライン上に公開、そして活用していくと共に、市民からも広く資料を募り加賀市全体の記録を残していくプロジェクトです。見る人が「加賀が〜」と語りたくなるアーカイブを目指して「かがが」と名付けました。
「かがが」の開発にMediaWikiを選んだ理由
「日本語で操作できる」「安価である」「開発が継続されている」「マニュアルやサポートが充実している」を重視し10種類のソフトウェアを比較しました。

その中でMediaWikiの共同編集を重視した思想に注目しました。持続可能で市民に開かれたデジタルアーカイブを想定した場合、その地域に関心を持つ人が写真をアップロードしたり編集に参加したりできる事が大切だと感じ、MediaWikiを採用しました。
「かがが」の資料

「かがが」では、多種多様な資料が公開されています。最も古くて大正時代、メインは1970〜80年代の資料(災害の記録写真や映像、映画制作クラブによるドキュメンタリーフィルム)です。中には、個人的な結婚式の記録映像も含まれています。
これらの資料は2種類に分ける事ができます。
- 行政などが記録した公的な記録
- 市民が残した私的な記録
これまでに1.を活用した上映会『加賀市立図書館で眠っていた70〜80年代の8ミリフィルムをみんなで見て話す会。』と、2.の活用をゲストと共に考えるトークイベント『地域の記憶を現在と未来に活かす「コミュニティ・アーカイブ」』を行いました。
大きな歴史(公的な記録)の傍らには、小さな歴史(私的な記録)の集積があります。これらの記録が財産として継承され、みんなが利活用できるように、クリエイティブ・コモンズで「かがが」に残す道を模索しています。


コミュニティ・アーカイブにおけるMediaWikiの可能性
「かがが」は、2023年3月より一般公開されています。同サイトでは、市民を巻き込んで編集することを目標にしていますが、まだまだ私たちが資料を公開したり編集している段階です。今後、「かがが」に公開されている資料を見た人が「かがが」へ資料を公開するなど、みんなで編集する事で成長していくアーカイブになったら面白いと思います。これは、MediaWikiだからこそ切り開けるコミュニティ・アーカイブの可能性だと思います。