先日の記事では、MediaWikiを使ったコミュニティ・アーカイブプロジェクト「かがが」についてご紹介しました。今回は、2022年11月3日に開催したワークショップ「ウィキペディアタウン〜歩く・調べる・書く 大土町 」について書きます。
講師には、あらいしょうへいさん(ウィキペディア日本語版管理者)、中俣保志さん(香川短期大学経営情報科教授)をお招きしました。
山中温泉大土町
大土町は、加賀東谷(重要伝統的建造物群保存地区)の最奥部に位置し、人口わずか1人の超限界集落です。住民の二枚田昇さんは生まれ育った集落が消滅の危機に晒される中、若いボランティアたちを迎え国際的な関係人口をつくってきました。そうした人々の力によって、昔ながらの風景が蘇っていきました。
大土町で開催する理由は2つあります。
- ウィキペディアに大土町の記事がない
- 共同編集のための基礎的なスキルを身につけたい
私たちも今回初めてウィキペディアを編集しました。
町案内
二枚田さんから湧き水や家の造り、棚田など、住民だからこそ知っている情報を交えて案内して頂きました。
レクチャーと執筆
レクチャーで重要に思った点です。
- 中立的な観点で書く
- 信頼できる情報源を可能な限り集約する
- 独自研究は載せない
- 編集履歴が残るので責任が伴う
- 誰でも使える(=コピーレフト)記事・画像のみ掲載する
- 誰に使われても良いという事に同意して執筆する
一人では悩んでしまう事も、ワークショップではすぐに講師に聞いたり参加者同士でアイデアを出し合えました。
この日は山中温泉大土町と加賀東谷を公開できました。
「かがが」の方向性
イベントを通して、短時間で資料を見つけて他人に伝わる文章を書く事の難しさを実感しました。これはリサーチ力と文章力が鍛えられるだけではなく、論理的思考やITリテラシーのトレーニングにもなりそうです。また、世界中の人に地域の事を知ってもらえる可能性も感じました。しかし、ウィキペディアには書けない情報が多くある事も学びました。
例えば、書籍や新聞は信頼できる情報源である一方、地域住民による口承伝承や生活史などはそれらからあまり見つかりません。「かがが」では、そのような(真実性においては)不確かな記録を含める事も重要だと思っています。そこで、ウィキペディアと「かがが」の特性を活かしながら、共生するビジョンを考えました。
- かがが:一次資料の保管庫
- ウィキペディア:知識のインデックス
「かがが」は、そこに確かな人の営みがあった事を伝えてくれる記録を郷土資料として残せます。
例えば、こんな写真です。
- 今は無きスキー場での思い出
- 潟のほとりで行われた相撲大会
これらは、いつ、どこで、誰が、何を、といった情報を添える事で、貴重な一次資料になると考えます。
これらをクリエイティブ・コモンズで公開する事で、ウィキメディア・コモンズのソースとして利用したり、新聞や論文でも活用して貰える可能性があります。また、ウィキペディアの記事が充実すれば、「かがが」の資料に関連する情報をウィキペディアから得られます。ウィキペディアの記事にとっても、参考情報として「かがが」の資料が役立つかもしれません。
このように、ウィキペディアと「かがが」を相互に補完し発展する事で、地域を知りたいと思う人の情報源になる事を期待しています。
「地域の記憶は誰のもの?」
これは、私たちの活動の根底にある考えのひとつです。地域の記録を残すのは行政やマスメディアだけでしょうか?資料に残されていない地域の記憶はまだまだあります。日本で発行される地方紙が年々減少*している状況下で、地域の記憶をアーカイブする役割を担える可能性があると考えています。試行錯誤中のプロジェクトですので、みなさんからのフィードバックを歓迎します。
*「地域紙の廃刊・休刊が全国で続々と、“新聞が消えた”地域は何が起きるか」政治ジャーナリスト 高田 泰
「かがが」と加賀のこれから
加賀市は2024年春に北陸新幹線が開業予定です。加賀に観光で来られた際には、新しく知った事をウィキペディアに書いて頂けると嬉しいです。また、今後もウィキペディアタウンを開催予定です。最新情報をウェブサイトやSNSで発信しています。是非フォローしてください。
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