このワークショップはウィキメディア財団の助成金を受けて実施しました。
また、この記事は2023年8月11日にワークショップ主催者(映像ワークショップ合同会社)のウェブサイトで公開されたレポート記事を一部変更して掲載しています。
イベント概要
ウィキペディアタウンとは、地域の記事をインターネット百科事典であるウィキペディアへ公開するために必要な技能を身につける、街歩きと編集作業を組み合わせた体験型講座のこと。
今回の舞台は石川県加賀市大聖寺地区で、テーマは「加賀の暮らしと災害史」。全6回の講座で、7月15日から10月14日までの約3ヶ月にわたり開催。この記事では、7月15日に加賀市立中央図書館で行われたワークショップの様子についてお届けします。
当日の参加者は5名、見学者は4名。ウィキペディアに詳しい二人の講師をお招きして、ウィキペディアへ記事を公開するための調査から執筆・公開までを行いました。
講師
あらいしょうへい
ウィキペディア日本語版管理者。鉄道や地理に関する記事を執筆する傍ら、記事に掲載する各種写真を撮影・提供している。全国各地のウィキペディアタウン開催支援や2021年には「林先生の初耳学」に出演するなど、幅広く活動している。
中俣保志
鹿児島県出身。香川短期大学経営情報科教授。2001年、北海道大学大学院教育学研究科修了。2003年、北海道大学公共政策大学院研究支援員。2006年、香川短期大学経営情報科に着任。2017年以降、同大学で司書養成校担当。香川県内の公共図書館で図書館協議会委員を歴任。
タイムスケジュール
2023年7月15日
09:30 | 開場〜開催趣旨説明 |
10:10 | ミニレクチャー |
10:30 | ワーク〜チームで自己紹介 |
10:45 | 図書館ツアー |
11:30 | 昼休憩 |
13:00 | ウィキペディア執筆 |
15:10 | 公開準備 |
16:30 | 公開 |
開場〜開催趣旨説明
会場は加賀市立中央図書館の1階の会議室。
受付ではスタッフがオリジナルTシャツでお出迎え。
参加者の皆さんにもプレゼントさせていただきました。
参加者の方たちが続々と集まってきました。
それぞれパソコンやタブレット端末を持ち寄って、席に着きます。
「これからどんな1日になるだろう」
参加者の皆さんからは、そんな期待と緊張が入り混じった表情が伺えました。
まずはスタッフから、このイベント開催の経緯をお話させていただきました。
きっかけとなったのは、映像ワークショップが現在取り組んでいる加賀市デジタルアーカイブプロジェクト「かがが」。アーカイブ活動をする中で大先輩となったのが、ウィキペディアの存在。ウィキペディアタウンを加賀市で開催することで、参加者と共に学びを深めていけるのではないかという思いで開催に至りました。
加賀市でウィキペディアタウンを開催するのは2回目。前回よりも更なる広がりがあることに期待して今回を迎えました。
ミニレクチャー
講師からウィキペディアについてミニレクチャーを受けます。
まずは中俣先生から、ウィキペディアのワークショップを開催する意義についてお話していただきました。
「今回の作業は、インターネットの世界の大脳に加賀市のことを埋め込むこと」
なんだか壮大なスケールのことのように思えますね。自分たちの手から地域のことが世界に羽ばたいていくと思うと、ワクワク感が高まります。
次は、ウィキペディアの”中の人”であるあらい先生からお話をいただきました。
「記事になっていないものが見つかると調べたくなる≒目の前に山があったら登りたい」
ウィキペディアン(編集者)の頭の中は、登山家のように常にこのような思考を持っているのだそう。なかなかストイックな考え方ですよね。
あらい先生からは執筆の際の注意点もいくつかご紹介いただき、ミニレクチャーの時間を終えました。
ワーク〜チームで自己紹介
ミニレクチャーの後は、5分間ワークに取り組みます。
これから行うウィキペディアの執筆のウォーミングアップとして、まずは複数の発行物から分かる事柄を抜粋する練習を行いました。
題材は、NHKの朝ドラ「らんまん」のモデルにもなっている牧野富太郎博士についての記事。牧野博士が植物標本作りに使用した古新聞が、全国各地の歴史を伝える資料としてのちに注目を集めることになったという内容です。
記事の中から大切な箇所を抜き出していきます。
集中力が上がるにつれて、皆さんだんだん無口に…
真剣にワークに取り組んでいます。
ここでタイムアップ。「全然時間が足りないー!」という声が多くあがりました。
5分という短いワークでしたが、ウィキペディア執筆のコツが何となく掴めたように思います。
その後は「大聖寺大火」と「大聖寺川の水害」のチームごとにワークの成果を発表しつつ、チーム内で自己紹介。
興味も年代も様々、個性豊かなメンバーが集まりました。
図書館ツアー
午前の部の最後は、図書館ツアーへ。図書館の中谷さんに案内していただきます。
まずは基本である本の探し方についてお話していただき、いざ出発!
最初に訪れたのは、貴重書書庫。靴底の汚れをしっかり落としてから入室します。
歴史的な資料の数々が大切に保管されています。
通常の書庫も案内していただきました。
加賀市の資料もたくさん保管されています。
最後に案内していただいたのは、閲覧室の郷土資料コーナー。
実はこのコーナー、頭上に「議会図書室」「市政図書室」という看板があります。議会図書室は議員や議会のスタッフの方たちの業務を助ける役割があります。市政図書室は行政に関わる方たちの業務の支援に加えて市民への情報開示の役割を担っています。
これらは一般の図書館と別の場所に設置されることが多く、普通の市民(私も含めて)にはなかなかその存在が知られていないのですが、加賀市では通常の閲覧室と併設という形をとっていることが珍しい、と中俣先生から教えていただきました。
図書館ツアーを終えて午前の部は終了です。
昼休憩
お昼はそれぞれで好きなところへ行き、昼食を済ませました。
1時間半の休憩時間を終えて、午後の部スタート!
ウィキペディア執筆
ここからは、実際にウィキペディアにログインして執筆を始めていきます。
まずはあらい先生から、ウィキペディアの使い方をレクチャーしていただきました。
「とにかく今回は文章をどんどん書こう!分からなくなったら協力!質問!」というアドバイスのもと、早速執筆を始めていきます。
今回使った資料は、当時の新聞や大聖寺町史、加賀市史など多岐に渡っていました。
まずは各グループそれぞれ役割分担。各々で担当する項目について調べていきます。
資料を読み込む時間。皆さん真剣モードに突入。
その様子を見て、中俣先生が一言。
「後半はこれが運動会のようになっていきます」
私たちは後々その言葉の意味を知ることになります…
ある程度調べたところで、同じ分野を担当しているメンバーと進捗を共有。内容が被らないようにするための大切な時間です。
その後は校正タイム。グループ内の他のメンバーが書いた内容を読み、誤字脱字がないか確認していきます。
公開準備
いよいよ公開に向けて動いていきます。イベントも佳境に突入。皆さんの書いた内容をあらい先生がチェックして回ります。
グループ毎にメンバーが書いた内容を1箇所に集約していきます。
この作業がなかなか難しく、苦戦する場面も。あと一息!頑張れー!
予定時刻が迫り、会場の慌ただしさもピークに。ここで先ほど中俣先生が言っていた「後半は運動会のようになっていく」という言葉の意味が分かりました。
その様子を見た講師のお二人から「ウィキペディアタウンらしい雰囲気になってきましたね」と、笑いがポロリ。皆で四苦八苦するのも、ウィキペディアタウンの醍醐味ですね。
公開
試行錯誤の結果、ついに記事が公開されました!
公開の瞬間、拍手に包まれる会場。長丁場となりましたが、皆さん本当に根気よく頑張りました。
最後は皆で記念撮影。お疲れ様でした!
執筆・公開した記事
試行錯誤の結果、ついに記事が公開されました!
- 大聖寺大火 – Wikipedia
- 大聖寺川の水害 – Wikipedia
今回は、大聖寺で過去に起きた二つの災害についての記事を公開しました。
今後は編集サークルや質問会などを経て、更に記事を充実させていきたいと思います。
イベントを終えて
始まる前は「結構時間があるのかな」と思っていましたが、終わってみるとあっという間の1日でした。
前半であらい先生が、執筆作業を山登りに例えていましたが、終わった後の達成感は山の頂上に辿り着いた時と似たような感覚があったように思います。
今後は約3ヶ月かけて編集サークルと質問会を行い、10月には発表会も予定しています※。この記事を読んで、ウィキペディアタウンin加賀に興味を持ってくださる方が増えると嬉しいです。
※初版公開時点。現在は全ての日程が終了しています。
Can you help us translate this article?
In order for this article to reach as many people as possible we would like your help. Can you translate this article to get the message out?
Start translation
Related