ウィキメディア・ウクライナが2023年に行なった10のプロジェクト

ウィキメディア・ウクライナはウクライナにおいて、自由な知識の発展のためにおよそ15年間活動してきました。昨年はロシアによるウクライナ侵攻により全土がほぼ毎日攻撃にさらされるという、私たちの歴史上もっとも困難な年となりました。

しかしながら、ボランティアの皆さんとチーム全体の献身的働きにより、私たちは自由な知識発展のために数多くの活動をすることができました。いくつか例をあげると、ウクライナのウィキ・ラブ・モニュメントでは20,000枚近い文化遺産の写真を集めることができ、毎年恒例のウィキ年次大会には100名以上が参加し、ウィキペディアとウィキクォートに1,500の女性項目がキャンペーンのおかげで書き加えられました。

例年通り、私たちの昨年の活動のハイライトを簡単にご紹介したいと思います。ここでご紹介するのはほんの一部のみで、詳細は2月に2023年報告を発表する予定です。

ウィキ会議2023の参加者集合写真 (帰属情報のリンク)

1. 戦時中のボランティアコミュニティを支援し、彼らの物語を語る

全面戦争が始まったことで、ウィキメディア・ウクライナでは地域コミュニティを支援するプログラムを立ち上げ、ボランティアに種々の援助を提供しました。

この活動の公共的側面の一つは、戦争に直面しているコミュニティメンバーの物語を取り上げ、ウクライナ人と国際社会に伝えることでした。例えば、2023年に私たちはロシア占領地域から脱出しなければならなかった大学研究者や教師たちについて書き、ウクライナのウィキペディアで最も多作の編集者であるオーレ・ショスタクにインタビューしました。

2. ウクライナのウィキ・ラブ・モニュメント – 約2万枚のウクライナ文化遺産の写真

2012年からウィキメディア・ウクライナは、ウクライナでのウィキ・ラブ・モニュメントを毎年支援しています。国際コンクールの一環として、ウクライナの文化遺産の著作権フリーな写真をウィキメディア・コモンズに載せデータベース化することで、文化遺産保護への関心を喚起するのが目的です。

戦争とその後の安全保障上の制限にもかかわらず、今回10月のイベントでは約20,000枚の写真を278人の参加者から集め、参加46か国中の3位を得ました。国外からも46人が参加しました。大賞のほかに、公式サイトには載っていない文化遺産に関するノミネートもありました。

ロシアのロケット弾で攻撃されたハルキウの歴史的建物。この写真は、戦争が文化遺産に与えた影響に関する特別推薦に提出された。 (Mykhailo Titarenko, CC BY-SA 4.0)

3. ウィキ・ラブ・アース – 国際レベルでの記録的成績を支援する、全面戦争開始以来最初のウクライナのコンテスト

戦争による2022年の中断後、2023年には私たちはウクライナでのウィキ・ラブ・アース写真コンテストを開催しました。ウクライナは121人の参加者から4,600枚以上の写真を集めることができ、参加50か国中3位となりました。ウクライナの2枚の写真は、国際的な入賞者上位20に入りました。

ウィキメディア・ウクライナが支援した別の国際チームは、グローバルなウィキ・ラブ・アースを開催しました。このプロジェクトでは2023年に50か国と地域でコンテストを開催し、61,000枚以上の自然遺産の写真を3,300人の参加者から集め、記録的成果を収めました。

ウクライナの保護地域ビラ・ディヴロヴァに生息する、ハンミョウ属の昆虫。国際コンテスト「マクロ」部門優勝。 (Serhii Miroshnyk, CC BY-SA 4.0)

4. 「教室でウィキペディアを読む」 – 教育者のための最初の大規模公開オンライン講座

2023年に私たちはウィキペディアに関する最初の大規模公開オンライン講座を開設しました。ウクライナの教育者300人が7月の講座に参加し、授業にウィキペディアを取り入れる方法を学びました。

この講座は、ウィキペディアがどのように教育者たちに機能しているかの認識を高め、神話を払拭し、彼らの仕事にウィキメディアプロジェクトをどのように使うことが役立つかを指導するのに役立ちました。最初のコースが無事に修了した後、より多くの教育者がこの講座を受講してもらえるように、規模を拡大しています。

5. 教育者のコミュニティを、オンラインと対面で開発

年間を通じて、私たちは教育者たちに対し、ウィキペディアとウィキプロジェクトを彼らのカリキュラムに取り入れるのを支援しています。この活動の一環で、教育者たちの間にコミュニティを発展させ、相互のつながりや経験を交流するのを促進しました。

7月には、2日間のオフライン会議をキーウで開催し、35名が参加しました。毎月私たちはオンラインミーティングを開催して経験を交換し、ウィキデータを使った活動やウィキペディアへのオフラインでのアクセスについて有用なスキルを学ぶ活動も行っています。また地方での教育者の会合も支援し、教育者のためのウィキペディアハンドブックについてもプレゼンテーションしています。

7月のオフライン会議で戦略的セッションの後に、ウィキペディア教育プログラムの開発ヴィジョンを発表する教育者グループ (Vitalii Petrushko, CC0)

6. ウィキ会議2023 – これまでで最大の会議を開催

ウィキ会議には毎年ウクライナ全土から私たちのコミュニティが集まっています。このイベントは2011年から毎年開催していますが、昨年は過去最大の参加者が集まりました。

会議では4種類のミーティングが9月と10月に行なわれました。オンラインデイと、キーウで2日間の会議、リヴィウ州コマールノでの会議とウィキトレーニング、そしてハルキウでも集会がありました。その結果イベントには、全体で100人以上が参加しました。

7. ウクライナのウィキペディア誕生日を祝うウィキマラソンを、ウクライナと海外で開催

毎年1月30日に私たちはウクライナのウィキペディア誕生日を機会に、ウィキマラソンを開催して祝い、多くの新しいボランティアをウィキペディアに誘うキャンペーンとしています。このアイデアはウィキペディアの誕生日を祝うために、誰もがウィキペディアに記事を投稿する、というものです。

2023年のウィキマラソンは1月26日から2月5日にかけて開催され、オンラインキャンペーンと35のオフラインミーティングも行なわれました。346人が参加し、約1,900の新規記事が投稿されました。ロシアによる全面戦争により、このイベントは初めてウクライナ国内だけでなく、海外のポーランド、オランダ、スペイン、そしてイスラエルでもローカルイベントが行なわれました。

オランダのウクライナ人のウィキマラソン集会 (Mariannaglagola, CC BY-SA 4.0)

8. ローカルコミュニティをトレーニング、表彰、オンデマンドサポートで支援

ウィキメディア・ウクライナの目標の一つは、ウクライナのウィキメディアコミュニティを支援し発展させることです。例えば2023年に私たちは次を実施しました。

詳細「ウィキ・コンデンスミルク」「偽情報についてのウェビナー」のDiff記事

9. ウィキペディアと姉妹プロジェクトのジェンダー・バランス改善キャンペーン

私たちは常にウクライナのウィキペディアと姉妹プロジェクトのジェンダーギャップを埋める支援をしています。2023年には次の3つのキャンペーンを行いました。

  • WikiGapをウクライナ・ウィキペディアで3月に開催
  • #SheSaidをウクライナ・ウィキクォートで10月~11月に開催
  • ”She did it”マラソンをウクライナ・ウィキペディアで11月に実施

このプロジェクトの一環として、2つのオフラインミーティングを3月と11月にキーウで開催しました。しかしほとんどの活動はオンラインで行なわれ、100人以上の参加者が1,500以上のウィキペディア記事とウィキクォートを作成、改善しました。

キーウで開催されたWikiGap2023の参加者 (Vitalii Petrushko, public domain)

10. ウィキマニアと他の場所での国際交流

年間を通じて私たちはウィキメディアの国際イベントに参加し、学びを共有してきました。シンガポールのウィキマニアでは、知識の脱植民地化について話し、「ウィキ・コンデンスミルク」プログラムウクライナ文化外交月間の経験をシェアしました。また偽情報と闘うウクライナ・ウィキぺディアの経験を、ベルリンで開催されたre:publica会議で語りました。そして、もちろん、できるだけDiffで情報をシェアし、――私たちがどのようにDiffでの共有に取り組んでいるかを他の皆さんとシェアしています。 

ウィキマニア2023でウィキメディア・ウクライナのメンバーによる知識の脱植民地化のセッション

この記事はウィキメディア・ウクライナのブログに最初ウクライナ語で掲載されました。