WikiGapマレーシア2023:先住民族の言葉で女性の力を高める

元記事:WikiGap Malaysia 2023: Empowering women in indigenous languages / 28 March 2023 by Tofeiku

マレーシアのWikiGapは、2021年にZoomで、2022年にはクアラ・ルンプール記念図書館を会場に対面で開催されました。3年目を迎えた今回のイベントの特徴は、マレー語、バジャウ・サマ語、中央ドゥスン語、セマイ語という4種類の固有言語を対象に、全マレーシアの中から4つの地域で行なわれたことです。この4地域イベントは、駐クアラルンプールのスウェーデン大使館および、各地域の地元主催者の協力で成功裏に行なわれました。

The view of the UKM WikiGap event from the organiser’s view.
マレーシア国民大学で行なわれたWikiGapマレーシア2023エディタソン (Zahirulnukman, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

WikiGapマレーシア2023は、国際女性デーにマレーシア国民大学 (UKM) において、マレーシアの国語であるマレー語版ウィキペディアに焦点を当ててスタートしました。マレー語版ウィキペディアのジェンダー・ギャップは、記事全体の19.74%しか女性記事が無いことです。マレー語版ウィキペディアンたちは、トゥン・ファティマ・ハシム女性リーダーシップ・センター(PKWTFH)の協力を得てイベントを開催しました。参加者のほとんどは教師と学生で、皆ウィキペディアの編集は初めてでした。アカデミックなバックグラウンドがあるので、彼らは学術文献とウィキペディアの記事を書く際に、信頼できる情報源を出典にするという共通点を見出しました。教師の何人かは、引退してもウィキペディアの編集をするだろう、と語りました。共催団体は利用者グループと、マレーシアの女性研究者を力づけるイベントをもっと開催しようと話し合いました。

WikiGap button badges and a tablet showing the WikiGap background.
参加者に提供されたWikiGapバッジと大使館トートバック (Syafiq.y, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

翌週には、3つの地域、3つの固有言語での3つのWikiGapイベントが開催されました。これらの言語には、まだ独自のウィキペディアがありませんでした。従って、これら3つのイベントは新たな言語用のウィキメディア・インキュベーターに焦点を当てていました。バジャウ・サマ・コミュニティは、ボルネオ島サバ州で2番目に大きい固有言語のコミュニティですが、他の3地域よりずっと少ない参加者であったにもかかわらず、コタキナバルのサバ財団大学 (UCSF) で数多くの著名なマレーシア人女性の記事を書きました。バジャウ・サマ・コミュニティは利用者グループと共に、バジャウ・サマ語版ウィキペディアを始めるために、パンデミック以来何年もバジャウ・サマ言語文化協会 (BSBB) と協力してきました。彼らは年度末恒例の文化祭を目標に、インキュベーターから言語版をリリースする予定です。

A female lecturer learning how to edit Wikipedia from a Wikimedian volunteer.
ボランティア・ウィキメディアンによるウィキペディア編集の指導 (Syafiq.y, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

3つ目のイベントは、教師研究所 (IPG) ケントキャンパスでの1週間にわたるイベントの一部として開催されました。その1日で利用者グループは、教師および研修中教師たちに、中央ドゥスン語でたくさんの女性に関する記事を書いてもらうことができました。中央ドゥスン語科の学生全員が、講義の代わりにWikiGapイベントに参加することになりました。私たちは広い講義室いっぱいの参加者に圧倒されました。中央ドゥスン語はサバ州の公立学校で教えられている唯一の固有言語ですが、2011年からインキュベーターが設置されたものの、長い間放置されていました。このイベントは長年の放置を中断し、参加者たちは彼らの固有言語を近い将来にウィキクラブの活動としてリリースすることでしょう。

Participants editing Wikipedia in their laptops.
セマイ語の教師が母語のウィキペディアをインキュベータで編集する (Syafiq.y, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

最後のイベントは、ペラ州タパーの先住民の村で、セマイ語のために開催されました。会場は村の小さな集会所で、中規模の教室が満員になるほどでした。インキュベーターでのウィキペディア編集に慣れているバジャウ・サマ語のボランティアと、共催のバタンパダン先住民福祉協会 (PEROABP) がイベントに協力しました。セマイ語版ウィキペディアがインキュベーターに初めて書かれましたが、今ではたくさんの女性関係記事がはいっています。参加者の何人かは、州教育局による昨年のウィクショナリー・トレーニングで編集に慣れていました。イベントは、オブザーバーのスエーデン大使館スタッフによる閉会の挨拶で終了しました。

Two female participants editing Wikipedia.
マレー語版ウィキペディアで女性記事を編集する女性参加者 (Zahirulnukman, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

イベントを通して私たちが直面したのは、インターネット接続の問題でした。セマイ語参加者たちはインターネットのデータを友人たちと共有しなければなりませんでした。ウィキメディアン・ボランティアの一人でさえ、訓練のためのインターネットを参加者と共有しなければなりませんでした。将来的には、利用者グループはエディタソンの円滑な進行のためにスムーズなインターネット接続をサポートすることになるでしょう。そのほかに、3月は学校と大学の学期休みでしたので、利用者グループはいくつかの学校と大学でのイベント開催ができませんでした。

Group photo of WikiGap Malaysia 2023 - Tapah
セマイ語コミュニティとスウェーデン大使館スタッフとの集合写真

WikiGapマレーシア2023は閉幕し、4つのエディタソンでは全マレーシアから103人が編集に参加し、272の新しい女性記事がマレーシアの4つの固有言語で立項されました。できることなら、来年のWikiGapまでに、インキュベーターからいくつかの言語版をデビューさせたいものです。来年は駐クアラルンプールのスウェーデン大使館や既存また新規のパートナーと共に、より多くのWikiGapエディタソンを開催できることを期待しています。