ウィキメディアの世界 3

註 : 本稿は英語版 Diff に寄稿された下記の記事を Wadakuramon が日本語に翻訳したものです。

Eugene Ormandy (25 February 2024) “Wikimedia World 3” Diff.

「ウィキメディアの世界」シリーズでは、ウィキメディア運動の様々な活動記録をキュレーションしていきます。ウィキメディアンたちが世界中のウィキメディア運動についてもっと知り、他のウィキメディアンたちの活動を自分たちのそれと比較し、自分たちの経験のアーカイヴを作成するきっかけになることを願っています。

Uraniwa, CC0

バリの文化をウィキメディアプロジェクトで保存する

ウィキメディアプロジェクトは固有言語や文化を保存するための素晴らしいツールです。カルマ・チトラワティさんは椰子の葉に書かれたバリの古文書をデジタル化し翻訳する、熱心なウィキメディアンです。

質問:このプロジェクトはあなたのコミュニティにとって、また他のコミュニティにとって何が重要ですか?

「バリの古文書所有者の多くは、古文書コレクションの目録を持っていません。私はそうした古文書のデータをデジタルプラットフォームに保存するのを手伝っています。そして古文書のメタデータを学び、古文書を再入力し、校正する機会を得ています。それはバリの人々にとって価値があります。一方で研究者は一つのプラットフォームにデジタル化されたデータにアクセスできます。将来的には、ウィキペディアは古文書を保存し理解するための重要な資源となるでしょう。」

ウィキメディア財団 (2021年8月15日)「カルマ・チトラワティさんに会おう:ウィキメディアン・オブ・ザ・イヤー2021年新人賞」 Diff.
カルマ・チトラワティさん (Carma Citrawati, CC BY-SA 4.0)

カルマさんはバリ語の文字をどのように発音するか、ウィキメディアコモンズで紹介しています。「カテゴリー:カルマ・チトラワティによるリンガ・リブレ」を参照ください!

ウィキメディア・コモンズ [[File:LL-Q33070 (ban)-Carma citrawati-aab.wav]] (Carma citrawati, CC BY-SA 4.0)

こうした素晴らしい活動に対し、カルマさんはウィキメディアン・オブ・ザ・イヤー2021年新人賞を受賞しました!

ウィキマニア2023での受賞式のウィキメディアン (Mike Peel, CC BY-SA 4.0)

ウィキメディアンがウィキメディアンにインタビュー

ジャーナリストや研究者からインタビューを受ける時、彼らがウィキメディア運動についてほとんど知らないことに、私は多少ストレスを感じることがあります。もちろん、初心者に繰り返しこの運動について説明するのは私の役目なのだとは理解していますが、「さあ、みなさんがプロのインタビューアーなら、どうか事前に基本的な情報を確認してくださいよ!」とも思うのです。

疲れるインタビューの後の私 (Free Clip Art, CC BY-SA 4.0)

こうしたことは、インタビューアーが同じウィキメディアンなら起こりません。幸いなことに、ここにいくつかの良い例があります。

ウィキメディア・エストニア協会をちらっと紹介:ウィキメディア・エストニア協会の顔、イヴォ・クルサマジさんへのインタビュー」という記事は、よい手本です。この記事ではマレーシアのウィキメディアンであるアスマ・フェデリコさんが、ウィキメディア・エストニア協会のイヴォ・クルサマジさんにインタビューしています。

質問:ウィキメディア・エストニア協会では、地域コミュニティやウィキメディア貢献者とどのように関わっているのですか?共同体意識を育み参加者を動機づけるために、どのような戦略や取り組みが効果的であるとされているのでしょう?

回答:内向的な人が多いエストニアのウィキメディアンに働きかけるのは、とても大きな課題の一つでした。しかしながら、ウィキメディア・エストニア協会は、ウィキメディアの誕生日、クリスマス集会、写真撮影ツアーやその他ウィキメディアンたちが一緒に集える機会を提供することで、共同体意識を育む独創的な戦略を考えてきました。2009年から続いているウィキメディア夏の集会がその中心で、年に1度のチームワークを育てる極めて重要な役割の集まりです。対面で会うことで、オンラインでは得られないような相互理解を進めることができます。

AssFeder(2024年1月18日)「ウィキメディア・エストニア協会をちらっと紹介:ウィキメディア・エストニア協会の顔、イヴォ・クルサマジさんへのインタビュー」 Diff.
ウィキメディア・コミュニティ・ユーザーグループ・マレーシアのメンバー、アスマ・フェデリコさんが、ウィキメディア・エストニア協会の事務所を訪問
ウィキメディア・エストニア協会事務所でのイヴォ・クルサマジさん (AssFeder, CC BY 4.0)

ウィキメディア財団の職員もまた、ボランティアのウィキメディアンをインタビューしています。特に、シニア・ムーブメント・コミュニケーション・スペシャリストのクリス・ケルナーさんは、Diffで素晴らしい仕事をされています。「デプス・オブ・ウィキペディアから:ウィキメディアンでインフルエンサーのアニー・ラウダさんインタビュー」という記事は、私がこれまで読んだウィキメディア関連の記事の中で、間違いなく最も素晴らしいものの一つです。これは双方の知恵を示しています。全文をお読みくださるよう強く推奨します。

あなたが書かれた内容は様々なトピックスにまたがりますが、読者の共感を呼びます。あなたはトリヴィアのどこに価値を見いだしますか?

人生の多くの楽しみがそうであるように、トリヴィアは非現実的なものです。しかしそれは、重要ではない、ということではありません!楽しい出来事はとても嬉しいですが、「役に立たない知識」という考えは嫌いです。なぜならどんな小さな事実もあなたの視野を広げてくれるのです。どうしてたいていの学習は、好奇心を満たす以上の目標を設定するのでしょう。私は学習というものが、つまらないもの、例えばCEOとかVPという略語の羅列に向かっていたら、楽しくないのではと思えます。さらに、「些細な」トピックスが些細でない意味を持つこともあります。際限の無い研究はいつだって大地を揺るがす発見をもたらします!

確かに、ウィキペディアの記事を読んでもあなたは専門家にはなれません。酵素の研究に人生を捧げている研究者は、ただ単にウィキペディアの酵素のページを読んでいる読者より多くを知っているでしょう。けれど、みんなが全てのものに「深い理解」を持つと想像するのは全くばかげたことで、なぜそれが百科事典の目標なのか、私にはわかりません。 

クリス・ケルナー(2021年12月7日)「デプス・オブ・ウィキペディアから:ウィキメディアンでインフルエンサーのアニー・ラウダさんインタビュー」 Diff.
デプス・オブ・ウィキぺディア」を主催するアニー・ラウダさん。彼女は2022年の最優秀メディア貢献者賞に選出された。 (Annie Rauwerda, CC BY-SA 4.0)
クリス・ケルナーさん (Myleen Hollero, CC BY-SA 3.0 DEED)

様々なウィキメディア運動を知らせるコミュニティのオンライン新聞「サインポスト」の編集者も、ウィキメディアンとウィキメディア財団の職員にインタビューしています。どの記事も興味深く、それらのうちいくつかは歴史的な価値(「サインポスト」は2005年1月創刊)を持つだろうと思っています。2008年からウィキメディア財団の理事になったドマス・ミツサスさんのインタビュー記事をみてみましょう。

理事会メンバーとして、理事会事項の公開性と必要なプライバシーとのバランスをどのように保証しますか?

直近の理事会で、私は事務局長に選ばれましたが、これからは情報を公開することが私の大切な役目になります。私たちは運営について徹底的に公開してきましたが、これを維持していきたいと考えています。これはコミュニティの組織であり、理事会はコミュニティの代表が含まれていますので、私は物事が長期にわたり隠蔽される理由は何もないと信じています。

英語版ウィキペディア [[Wikipedia:Wikipedia Signpost/2008-03-03/Domas Mituzas interview]] 00:50, 6 January 2024 (UTC)‎ 
ドマス・ミツサスさん (Lane Hartwell, www.fetching.net, CC BY-SA 3.0)

ウィキメディア・キュートネス協会

ウィキメディア・キュートネス協会を聞いたことがありますか?これはウィキメディア運動において、かわいらしさを推進するための、キュートなぬいぐるみで構成されたクラブです。

キュートなぬいぐるみ@ウィキデータ会議2017 (Rama, CC BY-SA 4.0)
キュートなぬいぐるみを写真に撮るウィキメディアン@ウィキマニア2018 (Subhashish Panigrahi, CC BY-SA 4.0)
ジミー・ウェールズもぬいぐるみが大好き@ウィキマニア2017 (Katie Chan, CC BY-SA 4.0)
ESEAPの公式マスコット、クオッカ@ESEAP戦略会議 (Vanjpadilla, CC BY-SA 4.0)
ウィキメディア・キュートネス協会のロゴ (Petit Tigre, CC0)

上の写真をみていただくとわかるように、キュートなぬいぐるみたちはしばしばオフライン・ミーティングで集まっています。もちろん、ウィキメディア財団の職員は彼ら/彼女らを歓迎しています!ウィキマニア2023の参加者メルダト・プルザキさんのコメントを見てください。

キュートなぬいぐるみが大好きな皆さんへ

ウィキマニア・シンガポールにはキュートなぬいぐるみが必要です。もしあなたが現地参加されるなら、ぬいぐるみを持ってきてください。来られないなら、ぬいぐるみを送ってください。ウィキマニア2023の開会式や、8月16日水曜日夕方のウィキメディアン・オブ・ザ・イヤーの表彰式では、広いステージをたくさんのぬいぐるみでいっぱいにしたいのです。ウィキメディアンならではの、ぬいぐるみで溢れたステージを想像してください。この呼びかけに応えてくださいますか?挑戦してみませんか?柔らかさが大切です。プルザキ(ウィキメディア財団) (talk16:22, 4 July 2023 (UTC)

メタウィキ [[Talk:Wikimedia Cuteness Association]] 16:22, 4 July 2023 (UTC)
ぬいぐるみと一緒に@ウィキマニア2023開会式 (Gnangarra, CC BY 2.5 AU DEED)
ぬいぐるみと一緒に@ウィキマニア2023開会式 (Pedro J Pacheco, CC BY-SA 4.0)
ウィキメディアンとぬいぐるみたち@ウィキマニア2023開会式 (Jeromi Mikhael, CC0)

次のオフライン・ミーティングに参加するなら、是非ぬいぐるみと一緒に旅行を!