edit Tangoレポート2024 / №2 ウィキペディア編集体験会 in アキシマエンシス & ウィキペディア展覧会

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「ウィキペディア展覧会」は、日本最大の図書館・出版関係企業の見本市である図書館総合展に2022年から毎年出展している、Wikipediaのアウトリーチ活動のひとつです。図書館総合展運営委員会に複数名いるウィキペディアン達の期待とサポートを受けつつ、私ことuser:漱石の猫を中心に、edit Tangoのメンバーとその時々の会場関係者や、他の出展者、図書館員、ウィキペディアン達の協力を得ながら、Wikipediaとウィキメディア財団や他のユーザーグループの活動も紹介し、広くウィキメディア運動参加へのきっかけの種を蒔く取り組みを行っています。

図書館総合展は、2024年は5月18日に東京都昭島市で、6月29日~7月7日にオンラインで、9月20日に福岡県行橋市で、11月5日~7日に神奈川県横浜市で、11月16日~24日に再びオンラインで、半年間の長期にわたり全国区で開催が決定しており、その参加者は11月の横浜本展だけでも3万人規模と大きなものです。そのため、これまでWikipedia編集者と縁がなく、ウィキメディア運動に関わる機会を持たなかった人々にも私たちの声が届く機会となっており、毎回様々な相談事と、新しい出会いがあります。

図書館総合展

edit Tangoイベント2024 / №2 東京都昭島市 

今年最初の地域フォーラム会場となった東京都・昭島市のアキシマエンシスは、2020年に開館した複合施設です。市民図書館、郷土資料室、市民ギャラリー、講義室、体育館などが併設されており、週末には様々な市民イベントが開催されています。

図書館総合展フォーラムのメインである様々な講演は、午後に体育館で行われることになっていて、ウィキペディア展覧会はその会場のロビーにて、様々な企業とともにWikipediaの展示紹介ブースを出展することになっていました。しかし、今回は、午前中に、図書館棟の交流広場でもWikipedia編集体験会をやらないかと、会場のアキシマエンシス側から提案があり、2拠点体制で取り組みことになりました。

地域フォーラムのブースは広くはないので、予定していたスタッフは私とuser:Asturio Cantaburioの2名のみ。運営委員会や図書館のみなさんがそれぞれの拠点に机や電源、モニター類をあらかじめ用意してもらっておき、私が持ち込む資料や機材もスーツケース1つずつに拠点ごとにまとめておくことで、途中の会場移動と設営は15分程度とスムーズに進めることができました。

アキシマエンシス

ウィキペディア編集体験会 in 昭島市民図書館

Wikipedia編集には出典となる文献資料が必要ですが、地域の項目を編集テーマとする場合、必要な文献資料はやはり現地に行ってみなくては十分とはいえません。仮に編集するのが地元から参加する初心者のみなさんだけであったとしても、講師役が地域の題材に無知では話にならないので、午前中の編集体験会に備え、私たちは前日のうちに昭島市民図書館を訪れ、予備知識を仕入れることにしました。

図書館に着いて、まず驚いたのは、天井から吊り下げられた巨大なクジラの骨格標本のレプリカでした。アキシマクジラというそうです。昭島市を含む多摩川流域は、哺乳類の大型化石が多数見つかっている日本でも珍しい地域で、「昭島脊椎動物化石群集」と呼ばれていることは後に知りましたが、この骨格レプリカを見た時点で、翌日のWikipedia編集体験会の題材は「アキシマクジラ」を立項することにしました。

クジラは昭島市のマスコットキャラクターでもあり、これほど大きく取り上げられ、市民に親しまれている題材ほど、ウィキペディアタウンにぴったり題材はないからです。図書館総合展に参加するだろう図書館関係者向けのアピールとして、もともと立項を予定していた「アキシマエンシス」が、調べてみると歴史が複雑で、初心者の方の体験編集の題材としては難しく思われたという理由もありました。

昭島市民図書館 と アキシマクジラ

当日の午前中は、Wikipedia編集体験会のほかにも、図書館見学ツアーや探求学習体験会など、より図書館職員に馴染みやすい企画が同時刻に複数あり、編集体験会への参加者は多くはないと思われましたが、クジラの化石という目に見える題材はそれほど大きな記事でもないので、2時間という短いWikipedia編集時間でもそこそこの記事にはなるだろうと考えていました。

そんな当日午前中の編集体験会場は、図書館1階の閲覧室中央に開けた吹き抜けの空間「交流ひろば」。スライドを使って30分のガイダンスを行ったのち、ウィキペディアタウンを紹介する動画をエンドレス再生で流しながら、ノートパソコン持参で参加された昭島市民や近隣・多摩市の住人の方の書きたいWikipedia記事の相談にのりつつ、通りすがりに動画を見て足を止めてくれる図書館の来館者の質疑に応じたり、資料を配って普及活動に取り組みました。

Wikipedia編集の参加者は2名だけではありましたが、図書館見学ツアーや他の学習会に参加していたフォーラム参加者が、「ほんとうはWikipedia編集会にも参加したかったんだ」と後から資料をもらいにきたり、差し入れのお菓子や名刺を持って企画相談にきてくれた方も複数ありました。

「次回の編集会はいつやるの?」と昭島市での継続開催を期待する市民の方や、「2026年に開館する図書館の記念イベントとしてウィキペディアタウンをやりたいので、折をみて相談させてほしい」といった他地域の図書館員からの気の早い相談もありました。

日本の図書館ではまだ「おしゃべりは控えめに」という方針の図書館が多いため、閲覧室のど真ん中で講習をしたり動画を流すのは少々気が引けましたが、開催してよかったなあと思います。

図書館中央「交流ひろば」

しかし、参加された方々はそれぞれ編集したい項目が他にあり、当初参加者での編集活動を予定していた「アキシマエンシス」と「アキシマクジラ」のWikipediaは、参加者の誰も編集しないうちに午前の回は閉幕してしまいました。いろいろ準備していただいたアキシマエンシス職員のみなさんには申し訳なく、また、図書館総合展フォーラム参加者へのWikipediaアピールとしても少々弱く思われたので、準備していただいた資料はそのまま午後の体育館のフォーラム会場に持ち込み、私たちウィキペディアンのスタッフで2項目を立項することにしました。

ウィキペディア展覧会 図書館総合展フォーラムinアキシマエンシス

午後からの図書館総合展の地域フォーラムには、今回約100名の参加者があったようです。ウィキペディア展覧会は、二部構成の講演の合間に5分間のプレゼンテーションと、ロビーのブースでWikipediaを編集しているパソコン画面をモニターに投影しながら、適時ウィキメディアに関するよろず相談会を行いました。講演パートの進行中に、会場やフォーラム内容に関係するWikipedia項目を立項し、その記事の成長過程や編集画面を実際に見てもらうことで、Wikipedia編集やウィキペディアタウンへの興味関心を喚起することをねらい、プレゼンや会場の掲示物でも、ブースでの編集活動をアピールしておきます。

メインスタッフのuser:Asturio Cantaburioは、数々の良質な図書館記事を立項した経験があり、図書館司書ではないにもかかわらず『司書名鑑』(岡本真・編 青弓社2022年)にウィキペディアンとして紹介された、図書館業界では特に著名な実績のあるウィキペディアンでもあります。彼に委ねたアキシマエンシスの項目の質はまったく心配しておらず、期待通りしっかり書かれたアキシマエンシスの記事はその日のうちにコミュニティ内でも注目され、立項から2日後の5月20日にはWikipedia日本語版のメインページ「新しい記事」にも掲載されました。イベントの成功に尽力してくれたアキシマエンシスの関係者の方もきっと喜んでくれたことでしょう。

一方、アキシマクジラの項目を担当することになった私の方は、地質学はまったく素人です。アキシマクジラの化石発見の経緯は児童書や絵本にもなっていて、本は読んでいてとても面白い題材とは思いましたが、専門的な記述の正確さにはなはだ不安がありました。しかし、立項後、生物や地質に詳しいウィキペディアン達が監修し、しっかり加筆修正に取り組んでくれて、そのおかげで、こちらも短期間のうちに読み応えのある項目に成長し、立項から3日後の5月21日にはメインページの「新しい記事」に掲載される結果となりました。立項からの4日間のページビュー回数は、アキシマエンシスが650回以上、アキシマクジラは1,600回以上でした。

図書館総合展フォーラムに参加し、記事の成長を目の当たりにしたみなさんが、自分もWikipedia編集をやってみよう!自分の町でもウィキペディアタウンをやってみよう!と思ってくれていたら、私たちの企画は大成功といえるでしょう。結果を焦らず、地道な活動を続けていきたいと思います。

末尾になりましたが、ウィキペディア内外で様々なサポートをくださいましたウィキペディアンの皆さま、図書館総合展の皆さま、アキシマエンシスの皆さまに、この場を借りて御礼申し上げます。図書館総合展は上述のとおり、秋まで各地で続きます。もし私たちの活動に興味をもってくださったなら、いつかどこかの会場で、またお会いできればうれしいです。

ウィキペディア展覧会ブース・立項展示

ウィキペディア展覧会inアキシマエンシス のまとめ

参加者 : ウィキペディアン2名、図書館総合展参加者(不特定多数)
編集会場: アキシマエンシス  (1)午前 – 昭島市民図書館 (2)午後 – 体育館
調査地域: 昭島市民図書館(文献調査のみ)
プレゼン: (1)午前 – 昭島市民図書館1階交流広場30分 & 動画90分
(2)午後 – 図書館総合展フォーラム 5分 & ブース対応
新規立項: 2項目(いずれもメインページ「新しい記事」掲載)
アキシマエンシス 
アキシマクジラ
支 出: 旅費 71,000円(交通費1名分、宿泊費2泊×2名、距離算出のedit Tango規定額)

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