「図書館総合展2024 フォーラムin昭島」に参加する

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2024年5月18日(土)、東京都昭島市のアキシマエンシスで開催された「図書館総合展2024 フォーラムin昭島」に参加しました。

図書館総合展とは

神奈川県横浜市のパシフィコ横浜において、毎年11月初旬頃には図書館業界の見本市である「図書館総合展」本展が開催されます。

公共図書館・大学図書館・学校図書館・専門図書館など各種別の図書館員、図書館システム関係の企業、出版業や印刷業など近接分野の企業、図書館コンサルタント、図書館情報学の教員や学生、熱心な図書館利用者などが出展または来場し、図書館に関係するビジネスの場となるだけでなく、交流や情報交換の場にもなっています。

11月に行われる本展とは別に、年間に2~3地域で地域フォーラムと題されたイベントが開催されています。近年開館の公共図書館を図書館関係者にお披露目する場にもなっており、2024年度の第1回目の地域フォーラムが今回のイベントです。

「図書館総合展2024 フォーラムin昭島」

地域フォーラムの会場であるアキシマエンシスは2020年(令和2年)3月に開館したばかりの複合施設です。核となる施設は昭島市民図書館であり、その他には昭島市郷土資料室なども含まれています。

2016年(平成28年)に閉校となった昭島市立つつじが丘南小学校の敷地を用いており、主となる国際交流教養文化棟は新築された建物ですが、つつじが丘南小学校の校舎と体育館は既存の建物が改修されて活用されています。

2020年(令和2年)3月は新型コロナウイルス感染症が世間をにぎわせており、アキシマエンシスは開館日から長期休館を余儀なくされています。実質的な開館日は同年6月9日であるほか、外出を自粛する風潮もあって大々的な開館の宣伝もできなかったと思われます。

この地域フォーラムは昭島市市制施行70周年記念事業に位置づけられており、昭島市の臼井伸介市長も挨拶を行っています。アキシマエンシスは興味深い複合施設であり、Wikipedia記事の作成を通じて認知度が向上することを期待しています。

edit Tangoの活動

私は市民団体「edit Tango」の一員として参加しました。edit Tangoは京都府北部の丹後地方を拠点とする団体であり、中心メンバーの漱石の猫さんは2023年(令和5年)12月に『ウィキペディアでまちおこし』を出版されました。

ウィキペディアでまちおこしを 学校司書が体験もとに出版」朝日新聞、2014年1月24日

edit Tangoは丹後地方でウィキペディアタウンなどのWikipedia編集イベントを行うだけでなく、図書館総合展の本展や地域フォーラムなどにおけるアウトリーチ活動も行っています。図書館関係者や図書館に関心のある市民に対して、ブース出展やワークショップなどを通じてWikipediaの有用性を知ってもらうことを目標としています。

今回の「図書館総合展2024 フォーラムin昭島」には、edit Tangoから私(User:Asturio Cantabrio)と漱石の猫さん(User:漱石の猫)の2人が参加しました。

10時から12時には図書館に関心がある市民向けのワークショップ「ウィキペディア編集体験会 in 昭島市民図書館」、13時から17時には図書館関係者向けのブース出展「ウィキペディア展覧会 図書館総合展フォーラムinアキシマエンシス」と、対象が異なる2種類の活動を行いました。

ワークショップ「ウィキペディア編集体験会」

ワークショップ「ウィキペディア編集体験会 in 昭島市民図書館」の会場は昭島市民図書館1階の「交流ひろば」です。

昭島市民図書館の一般書の書架は、交流ひろばを中心として放射状に配置されており、図書館利用者の多くが交流ひろばの周りを通ります。交流ひろばの上部は吹き抜けになっており、交流ひろばで何らかのイベントを行っているときは、交流ひろばの賑わいが図書館全体に拡散するような設計になっています。

東京都多摩地域は人口420万人を有する大きな地域ですが、ウィキペディアタウンなどのWikipediaイベントの開催自体が少なく、今後のWikipediaのアウトリーチ活動が求められる地域です。ワークショップでは漱石の猫さんがPowerPointのスライドを用いてWikipediaの特徴や有用性について紹介した後、参加者に対して個別に編集相談を行いました。

参加者のひとりとして、多摩地域における図書館サポーター団体の方がいました。この方はこれまでにWikipediaの編集を行ったことがないとのことでしたが、「多摩地域における合唱団の活動について後世に伝えていきたい」という思いのある方でした。合唱団に言及している文献をお持ちでしたが、この文献以外には出典となりそうな文献が見つからないとのことでした。

このような状況で「〇〇合唱団」という記事を新規作成した場合、文章が少なすぎて削除されてしまう可能性も考えられます(いわゆる「特筆性」、Wikipedia:独立記事作成の目安 – Wikipedia 等も参照)。そこでより大きな記事、例えば「多摩市」の「文化」節に記述していく方法もあることを伝えました。ウィキペディアンではない参加者にとって独立記事作成の目安を考慮した上で最適な選択をするのは困難であり、昭島市でワークショップを行う意義があったと感じます。

ブース出展「ウィキペディア展覧会」

午後は体育館で図書館総合展のメインプログラムが行われ、図鑑の出版に関するトークセッションや、アキシマエンシスの開館に関するパネルディスカッションなどが行われました。edit Tangoは体育館内で「ウィキペディア展覧会」と題したブース出展を行い、イベント時間中にWikipedia記事を新規作成するデモンストレーション、舞台に登壇しての活動PRなどを行っています。

edit Tangoでは、一般市民を対象としたWikipedia編集会やWikipedia編集相談会に加えて、図書館員や行政職員に対するWikipediaの有用性の周知も重要な取り組みだと考えています。「Wikipediaは信頼のおけないもの」だと考えている図書館員や行政職員は多いと感じますが、彼らの身近な題材で高品質な記事を投稿することで、Wikipediaに対する認識を変えてくれることを期待しています。

今回の会場はアキシマエンシスであり、昭島市ではアキシマクジラが町のシンボルとなっていることから、「アキシマエンシス」とWikipedia「アキシマクジラ」を編集(新規作成)しました。なお、私はこれまでにもWikipediaに多数の図書館記事を新規作成しており、うち15記事は良質な記事に選定していただきました。図書館員に対するPRも目的のひとつであり、実際に図書館員から肯定的な反応を得ています。

昭島市民図書館に対しては事前に2記事のレファレンスを依頼し、これらに言及している文献を集めてもらいました。これらの文献に加えて、郷土資料コーナーで独自に『広報あきしま』などを閲覧し、私がアキシマエンシスを、漱石の猫さんがアキシマクジラを新規作成しています。

5月20日には「アキシマエンシス」が、5月21日には「アキシマクジラ」が、それぞれWikipedia日本語版の利用者による選考を経てメインページに掲載されました。Wikipedia日本語版には一日に約100記事が新規作成されますが、メインページに掲載されるのはこのうちわずか3-5記事であり、質の高い記事だと認められたことになります。

アキシマクジラは生物の種に関する記事です。投稿の翌日には生物学に詳しいウィキペディアンが専門用語の修正などを行ってくださり、翌々日以降には計1万バイトを超える大幅加筆をしてくださいました。もとの記事は人文科学的要素の強い記事でしたが、この方の加筆によって自然科学的要素も充実し、百科事典の記事としての質が劇的に向上しています。

5月26日、記事「アキシマクジラ」は良質な記事の選考を経て良質な記事に選出されました。選考では「郷土史の記事としても、古生物の記事としても、十分なものになっていると考えます」、「古生物と町おこしが含まれた内容も興味深かったです」などと評価されています。多くの参加者が手を加えて作り上げるWikimedia(Wikipedia)の理念を体現した記事といえます。

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