自由な知識を共有するという広大で多様な世界での私の体験談から始めましょう。それはテルグ語ウィキメディアンのベテランが、初心者に対し電話で会話しながら指導した時のことでした。経験も知識も豊富なウィキメディアンは、新人にまずウィキペディアのアカウント作成と、編集のやり方を説明しようとしました。しかし、新人は理解するのにとまどっている様子でした。彼は指導者が示す、特に新しい記事を作成する際のオプションを見つけられませんでした。指導者は新人に対し、編集したいトピックを探し、赤リンクを見つけるようにアドバイスしたのに、新人はそれを見つけることができなかったのです。
原因はすぐにわかりました。その新人はウィキペディアにアクセスするのに携帯電話を使っていたのですが、指導者はデスクトップでやっていたのです。これはウィキペディアコミュニティにおいて、新人と経験者との間でおこるギャップをよく反映しています。この逸話はテルグ語コミュニティあるいはインドに限った話でなく、世界的な課題、特に大きな国にとっての課題です。1
インドでアウトリーチ活動を組織し支援してきた者として、私はモバイル編集への投資の必要性を強く感じ、それはインド、南アジア、そしてその他の国々のウィキメディア運動に革命をもたらすだろうと思っています。これはインドだけの問題でなく、世界的なものです。ノートパソコンを人々に提供できない多くの国々に、モバイルインターネットを提供でき、モバイルインターネットの利用が飛躍的に広がっています。
2016年はインドのインターネット業界にとって、「ジオ」が無料インターネットを数ヶ月間提供すると発表したことで、大きな転機となりました。その結果データ通信料が安くなり、その後数年間インターネット利用者が急増しました。グーグルのような大ハイテク企業は、ヒンディー語、ベンガル語、マラーティー語、テルグ語、タミール語など様々なインド語に対応した技術開発を始めました。これらの努力は、彼らのアプリと技術のモバイル経験の向上を目指しており、モバイル・ファーストに向かう世界的なシフトに同調していました。2
インドにおける民主的なインターネットへのアクセスは、手ごろなデータプランの後押しで、ウィキメディア運動に大きなインパクトとなりました。ウィキペディアへアクセスする利用者の増大は、インターネット利用の増大パターンを反映しています。この開発はウィキメディアコミュニティの成長を加速させる大きな機会となったかもしれません。しかし、ウィキペディアのモバイル編集が初期段階だということは、成長の可能性を抑制しています。
ウィキペディアに新たにアクセスする利用者の多くは、モバイル端末を使っています。彼らの多くは、単に記事を読むだけではなく、新しいエネルギーとアイデアでの貢献を目指していました。しかし、使いやすいモバイル編集ができないので、彼らはしばしば挫折しているのに気が付きます。
こうしたモバイル編集者が直面した困難は、不便さだけではありません。効果的に貢献したいという彼らの可能性にとって明らかな障壁なのです。モバイル編集体験は最適からは程遠く、多くの人にとってフラストレーションになっています。その結果、インドでのインターネット利用者の急増に比べて、ウィキメディアコミュニティの成長はそれほどでもありませんでした。
プロジェクト・タイガーやウィキメディア財団のハードウェア寄贈プロジェクトのような取り組みは、大きな貢献をしながらノートパソコンを必要としている貢献者を支援するために始められました。貢献者たちのノートパソコンは機能せず、あるいは最初から持たず、モバイル端末あるいは学校や大学からコンピュータを借りていました。プロジェクト・タイガーが南アジアだけを対象としているのに対し、ハードウェア寄贈プロジェクトは全世界が対象で、減価償却済だがまだ使えるハードウェア(主にノートパソコン)を必要な利用者へ届けるものです。プロジェクトの2017年-2019年報告書によると、インドの受領者が最も多く(12件)、インドからはまだ多くの申し込みがあります。この傾向は、ノートパソコン利用者とモバイル利用者との間の溝をできるだけ埋めるために、モバイル編集経験の改善が必要なことを示しています。
従って、この状況はウィキメディア運動にとって、モバイル編集体験の開発への投資が必要な事を浮き彫りにしています。これは代替アクセス手段の提供ということだけではありません。大多数の利用者にとっての主要なアクセス手段であるモバイル端末を、できる限り使いやすく直感的なものにすることです。
ウィキメディア財団が現在モバイル編集の改善に投資しているのは、歓迎すべき取り組みです。既に大きな進展がありましたが、さらに進める必要があります。CIS-A2Kが貢献し関与しているグローバル・マジョリティ・ウィキメディア技術優先課題は、モバイル編集を優先項目の一つに挙げています。その文書には次のようにあります。「グローバル・マジョリティの70%の人々はインターネット接続にモバイル携帯を使っているので、モバイルの基盤を最適化し、モバイル端末のためのヴィジュアルエディターの開発を優先的に行うことで、自由な知識の生態系へのアクセスと貢献を妨げる障壁を取り除いていきます。」
こうした状況の中で、CIS-A2Kがインドでのコモンズ・モバイル・アプリとその投稿者に関する調査をしています。私たちはモバイル編集の現状、将来の機会と課題を理解するために、インドの長期間にわたるウィキメディア貢献者であるゴパーラ・クリシュナ・A.と協力しています。この調査を完成させ出版することで、課題を理解し可能性を探るのに役立つと信じています。
モバイル編集の改善へ向かうこの旅は、ウィキメディア運動の包摂性とアクセスビリティへの約束の証です。旅はまだまだ続き、技術と利用者の要求の変化に応じて進化し続けます。しかし目標は変わりません。誰にとっても、デバイスや場所に関わらず、世界で最大の自由な知識のプラットフォームである、ウィキメディアに貢献できるようにすることです。
- Global South represents the Global Majority; Ref: https://meta.wikimedia.org/wiki/Global_Majority_Wikimedia_Technology_Priorities ↩︎
- https://www.businessinsider.in/how-the-jio-effect-brought-millions-of-indians-online-and-is-reshaping-silicon-valley-and-the-internet/articleshow/70723349.cms ↩︎
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