ウィキメディア財団は毎年「年次計画」を策定し、そこで当財団の主要な目標や優先事項を概説し、これから着手する取り組みについてご説明しています。当財団の活動がウィキメディアのコミュニティを支え、同時にコミュニティによって支えられていることを再確認する意味でも、私たちは計画を策定する際に、コミュニティからのご意見を積極的にうかがっています。その方法の一つとして、今年は「話し合い:2024」という取り組みを行い、現在も継続しております。それに加え、ウィキ上で年次計画草案を発表した際には、具体的な問いを投稿させていただきました。ここでは日本語版ウィキペディア(jawp)の例をご紹介いたします。
この度、より質の高い編集をサポートする方法から、新しい投稿者や管理者を惹きつける方法まで、「新人」にまつわるテーマについて、26名のjawp利用者よりご意見をうかがうことができました。質問内容と共に、問1、3、5については円グラフの形で、問2、4、6については全体的な傾向を表すご意見を抜粋いたしました。現在当財団がまさに取り組んでいる内容と直接関連するご意見については、コメントを追記いたしました。
ウィキメディア・プロジェクトにおけるコンテンツの信頼性について
「5本の柱」や「検証可能性」などに支えられているコンテンツ(記事)における信頼性は、ウィキメディアの独自性として、多くの人がウィキメディア・プロジェクト上で活動を続ける原動力となってきました。
問1.この考え方は、jawpにも当てはまると思いますか。 ― 73.6%が「そう思う」、「ややそう思う」と回答
問2. 信頼性の高いコンテンツをより迅速に成長させ、なおかつjawp内で合意されている品質基準にも準じる方法について、ご意見やご質問はございますか。
「Wikipediaが掲げる崇高な理念が、単なるまとめサイトとWikipediaを区別する理由になっていると感じる」
「Wikipediaは検証できる情報しか載せないということをもっと知らせる必要がある」
「極端なまでに規範に厳しいコミュニティ内コミュニケーションの見直し」
「出典を用意せずに編集する新規加入者が目立ち、外部SNSなど不確かな情報に基づいて編集している場合も多い」
1月にjawp上で、編集チームが試験的に「出典チェック」を導入しました。この機能は、新規利用者やIP利用者が段落を追加する際に出典を追加することを促すものです。これらの編集はタグ付けされ、特に利用者が引用を追加しなかった場合、例えば「最近の変更」に戻って見つけることができます。以前は、新規利用者の25%が自ら出典を追加していました。出典チェックを導入することで、この数字は49.7%に増加しました。 編集チームは他の 「チェック」機能にも取り組んでおり、皆さまのコミュニティに役立つアイデアを模索しております。
利用者および閲覧者を惹きつけ続けるために
利用者や閲覧者の獲得を巡り、大型オンライン・プラットフォーム(大規模なオンラインサービス基盤を意味し、ここでは特にSNSや私たちが情報を得る方法に大きく影響を与える巨大IT企業を指します)による激しい競争が繰り広げられています
問3. jawp上でも、他のオンライン・プラットフォームの影響を受けた変化があると思いますか。 ― 81.0%が「そう思う」、「ややそう思う」と回答
問4. jawpが今後もあるべき形であり続けるには、どうすればよいと思いますか。特に若い世代を中心とした新しい利用者や読者の心をつかむ取り組みについて、ご意見やご質問はございますか。
「自動車免許の初心者マークのようなものがあればよいと思う」
「最近の変更」または「ウォッチリスト」に、強調表示を適用することにより、新規利用者を絞り込む、または強調表示することが可能です(例えば、この画像では新規利用者は緑色で強調表示されています)
「高齢者を含めた幅広い世代の利用者を取り込むことも重要だと思う。若い世代の参加はもちろん大切だが、高齢化社会である日本の現実もある」
「教育機関などでの編集イベントを行い、若い世代に編集が誰でもできることをアピールしていくべき」
「これは教育の問題であってウィキペディアの問題ではないかもしれないが、若い世代は、検証可能性を理解できず、真実かどうかを求める傾向がある」
若い世代の、情報に対する考え方や感じ方の傾向をより理解するために、「未来の観衆」という取り組みを実施しています。詳しくは、こちらのDiff(日本語)をご覧ください。
セキュリティおよびコンプライアンスについて
ウィキメディアに対する大規模かつ多様なサイバー攻撃が日常化しています。同時に、世界各国で政策立案者が個人情報の取り扱いやオンライン上の情報共有のあり方に注目しています。そのような中で、ウィキメディアは、地域ごとにそれぞれ進化しているコンプライアンス(ここでは、公正で公平なサービス提供を行う上で、法令を順守し、社会的な規範に従うことを指します)への対応にも直面しています。
問5. 進化するコンプライアンスへの対応の課題は、jawpにも今後影響する可能性が高いと思いますか。 ― 70.6%が「そう思う」、「ややそう思う」と回答
問6. セキュリティやコンプライアンスの観点から、jawpの持続性を保つ方法について、ご意見やご質問はございますか。
「募金キャンペーンなどの際、『ウィキメディアはコンプライアンスを重視しています』というようなアピールをしていってはどうか」
「荒し対策もそうだが、AIを利用してある程度自動で対応するようにしてほしい」
オートモデレーターという、最近の変更を分析し、不適切な編集の予防・差し戻すツールモデルを現在構築中であり、これが強力なツールになることと期待しております。
その他の学び
複数の問いに対するご意見より、「IPユーザー対策」への課題や関心が浮かび上がりました。
「5本の柱や検証可能性に反した編集を行うのは、IPアドレス利用者(特に可変IP)の方が多いため、一定の品質を保つことを目的とするのであれば、IPアドレス利用者の編集を禁止した方がよいと思う」
「セキュリティおよびコンプライアンスの観点からJawpで喫緊の課題は、公開プロキシ規制強化の推進と考えます」
「長期荒らし利用者(LTA)ではない荒らしは、新規登録利用者よりIPアドレス利用者の方が多いように感じる。単なる荒らしだけでなく、コンプライアンスに問題のある投稿も減らすには、IPアドレス利用者の編集を禁止すれば、それに対応するコミュニティの負担が減り、持続性も保てるのではないかと考える」
これは実に興味深い話題です。ポルトガル語とペルシア語の2つのウィキペディアはすでに未登録利用者による編集を無効にしていますが、結果は良し悪しです。荒らしの数は減少しましたが、善意の投稿への副作用は気になるところです(英語で恐縮ですが、詳細はこちらです)。さらに、IP編集の代替としての臨時アカウントの導入により、恐らく未登録編集体験、登録利用者と臨時アカウント所有者間のコミュニケーションのあり方、パトロールの不正利用防止の作業フローも変わることでしょう。上記を考慮し、私たちはコミュニティが未登録編集を無効にすることは推奨しておりません。匿名編集、荒らし対策関連については、お気軽に日本語で信頼と安全製品チームまでお問合せください。
製品&技術OKR類では、具体的なプロジェクト計画を共有しており、WE4やWE4.2のようなプロジェクトはIPユーザーの問題に関連しており、ご意見にもみられた管理者への過剰負担がjawp特有の課題ではないことがお分かりいただけるかと思います。
「jawpの管理者の過少により、荒らしの対処が疎かになっている」
管理者が抱えている荒らし対策の負荷の大きさについては財団側でも理解しており、前述の通り、IP編集の代わりとして臨時アカウントを導入する予定です。さまざまな場合や側面に適切に対処しなければ、管理者に負担がかかり続ける危険性があります。そこで私たちは、今後の臨時アカウントによる不正使用や荒らし行為に対処するために、管理者をサポートするさまざまなプロジェクトに取り組むことにしました。これには、不正利用フィルターの変更、チェックユーザー・ツール、一時アカウントのグローバルブロックなどが含まれます。来年度には、IPアドレスのみに依存することなく、悪用行為を軽減する方法を検討します。そのためには、より多くのシグナルを使用して不正使用を検出し、軽減する必要があります。今月末には、提案されたプロジェクトの詳細をウィキ上でお知らせします。
年次計画を作成の中で、どのように利用者に更に寄り添えるかはまだ模索最中であり、改善に向けて今後も皆さまと議論を続けていきたい次第です。Wikipedia:ウィキメディア財団年次計画2024-2025やメタページでは年次計画について、引き続きご質問やご意見をお待ちしております。
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