ドロシー・ディレイの弟子がたった6人なわけないやろ！ワイが修正したる！：クラシック音楽オタクが Wikidata Graph Builder で遊びながらデータを整備した話

稲門ウィキペディアン会の Eugene Ormandy です。2024年7月、Wikidata Graph Builder というツールで遊びながら、クラシック音楽オタクの知識を活用してウィキデータを整備したので、その模様を記録します。本稿がウィキデータの活用やクラシック音楽に興味のある方のお役に立てば幸いです。

Wikidata Graph Builder の存在を知る

ウィキデータ上のページ [[Wikidata:データ提供]] を眺めていたら、「ウィキデータのデータを使って、概念とその関連概念を図表化」するツールとして Wikidata Graph Builder が紹介されていたので、早速遊んでみることに。アクセスしたところ以下の画面が表示されました。

Wikidata Graph Builder で遊ぶクラシック音楽オタク

まずは、上記のホームページに記載されていたクエリ例をいくつか試してみました。

その後、自分が好きなクラシック音楽に関するクエリをいろいろと作成して遊んでみました。まずは、フィンランドの名指揮者で、数多くの弟子を育てたことで名高いヨルマ・パヌラを師匠にもつ人物をマッピングしてみました。結果は以下のとおりです。クエリの設定は画面左右のメニューよりご確認ください（以下同様）。

数多の音楽家に影響を与えたヨハン・ゼバスティアン・バッハを師匠にもつ人物もマッピングしてみました。また、「Iterations」欄は思い切って20にしてみました。つまり、20世代下の弟子まで辿れるということですね。結果は以下のとおりです。数が多すぎて全体像を把握できないグラフとなりました。

「そんなわけないやろ！」とツッコミを入れたのち「自分で修正すればええんや」と気づく

その後、多くのヴァイオリニストを育てたドロシー・ディレイを師匠にもつ人物もマッピングしてみました。

思わず「ドロシー・ディレィの弟子がたった6人なわけないやろ！」と叫びそうになりました。しかし私はウィキメディアン。コンマ1秒後には「ワイが修正せなあかんな」と思い直し、行動に移りました。

多くの弟子を育てたはずのドロシー・ディレィを師匠に持つ人物が、Wikidata Graph Builder ではわずか6人しか表示されなかった理由は明確です。ディレィの弟子たちのウィキデータのうち、プロパティ「師匠 (P1066)」に「ドロシー・ディレイ (Q452057)」が入力されているものが少ないからです。もしくは、そもそも弟子たちのウィキデータが立項されていないからです。

ウィキペディア同様、ウィキデータはウィキシステムに準拠しているので簡単に編集ができます。ということで、クラシック音楽オタクのウィキメディアンとして修正作業に取り掛かりました。

ウィキペディア図書館に収録された Grove Music Online を活用

ウィキペディア同様、ウィキデータも編集するときは出典が必要となります。そこで、今回は音楽に関するオンライン百科事典 Grove Music Online を活用することにしました。なお、Grove Music Online にはウィキペディア図書館経由でアクセスできます。最高ですね。

ということで、Grove Music Online で “Dorothy DeLay” というキーワード検索を行い、ヒットした項目を確認の上、雨域データを改善していきました。なお、ウィキデータが存在しなかった音楽家については、新規立項しました。

ウィキデータ整備後のグラフ

データを整備したのち、Wikidata Graph Builder を活用して「ドロシー・ディレイを師匠にもつ人物」を再度検索。条件はもちろん同じです。その結果、見事にグラフが改善されていました。改善前と改善後を比較してみましょう。

まとめ

Wikidata Graph Builder で遊んでいる最中にウィキデータの未整備な分野に気づき、データを修正した経緯についてまとめました。本稿がウィキデータの活用やクラシック音楽に興味のある方のお役に立てば幸いです。