ウィキペディア記事「パリ原則 (図書目録)」を立項する

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稲門ウィキペディアン会Eugene Ormandy です。2024年7月に「パリ原則 (図書目録)」という記事を日本語版ウィキペディアに立項したので、その過程についてまとめます。本稿がウィキペディアの編集に興味のある方のお役に立てば幸いです。

パリの光景 (Yann Caradec, CC BY-SA 2.0)

きっかけ

ウィキデータの勉強のために、谷口祥一さんの図書『知識資源のメタデータへのリンクトデータ・アプローチ』を読んでいたところ、パリ原則が言及されていました。「パリ原則って、むかし図書館情報学の本を読んだときに目にした記憶があるけど、内容は全く覚えてないなあ」と思ったので、復習がてらウィキペディア記事を立項することにしました。この程度の気楽さで編集できるのがウィキペディアの魅力ですね。

自宅の本で復習

まずは、自宅の本棚にあった『図書館情報学用語辞典 第5版』などの図書数冊を確認し、パリ原則の概要を把握しました。この時点で、短いウィキペディア記事を立項することが可能な程度の情報が集まりましたが、念のためもう少し調べてから編集に移ることにしました。ウィキペディアンの編集スタイルは様々ですが、私はある程度情報を収集し、頭の中である程度構成を思い描けてから編集に着手するタイプなのです。

図書館の本で追加の情報収集

その後、図書館に行って図書館情報学に関する本を借りました。また、参考図書の複写も行いました。ちなみに、資料の調査にあたっては「図書館 目録」というクエリをOPACに入力しています。単に「パリ原則」と入力しても、ヒットする資料は少ないだろうと予想したので、その上位概念で検索しました。

自宅の本とあわせて、参考資料は9冊となりました。徹底的に情報を収集したい場合は、J-STAGEグーグルスカラーウィキペディア図書館などを活用してもっと資料を集めますが、今回は数千バイト程度の記事でいいだろうと思っていたので、資料収集はこれにて終了しました。

編集

まずは参考資料における「パリ原則」関連部分に全て目を通しました。ここで重要なのは、全資料を通読したわけではなく、パリ原則に関連する部分のみをピックアップして読んだということです。というのも私は大学時代「調べ物をする場合『資料全部を読まずとも、必要な部分を適切にピックアップし、その内容と文脈を把握すること』ができなければいけない」と教わったので、ウィキペディア編集のための情報収集にもそれを活かしているのです。ちなみに、ライターの読書猿さんも『独学大全』という著書で似たようなことを言っているので、参考までに引用します。

最初から順番に読む読書は、小説などのフィクションには相応しいが、それ以外にも書物はたくさんある。そして独学において付き合うことになるのも、もっぱらそれ以外の書物である。

多くの書物は、辞典・事典のように必要なところだけを探して読んだり、すべてを読むにしても、全体を何度も(そのために一回一回は薄く)繰り返し読むものである。

読書猿『独学大全』ダイヤモンド社、2020年、473ページ。ISBN 978-4-478-10853-6.

なお、今回の調査においては、パリ原則に関連する部分を6回ほど読み直しました。

資料読解1周目の目的は「パリ原則の概要を把握した上で、ウィキペディア記事の構成の見通しを立てること」でした。幸い目的はクリアし、この内容であればウィキペディア記事の章立ては「沿革」「内容」「評価」とすれば良いだろうという見通しを立てることができました。なお、この際ウィキペディアの下書きは全く編集していません。あくまで概要把握と構成の予想が目的なので。

資料読解2周目は、ウィキペディアの下書きを編集しながら実施しました。2周目では、資料にある記述のうち、成立年などの基本情報や、識者によるパリ原則の評価といった「簡単に書き込めるもの」を箇条書きに近い形で下書きに追加。なお、評価については「Aはパリ原則について『〜』と述べている」という形で書き写せばよいだけなので、文章構成などを考えることなく手軽に記入できます。

資料読解3周目も同じく、ウィキペディアの下書きを編集しながら実施。3周目の目的は「資料に記載された情報のうち、ウィキペディアの下書きに未反映なものを追記すること」です。2周目とは異なり、文章の流れなどを考えた上で下書きに追記しなくてはいけないので、カロリーを使う作業でした。また、3周目の反映を終えた時点で下書き全体を改めて読み直し、きちんとした文章になっているかを確認しました。

資料読解4周目は、資料の読解というよりウィキペディアの下書きチェックといった方がいいかもしれません。下書きの文章および脚注を一つ一つチェックた上で、脚注に示されているページに、下書きにおける記述と同じ内容が記されているかを確認しました。きわめて面倒くさいのですが、ウィキペディア記事を公開する以上、必要な作業です。

資料読解5周目では、改めて資料を読み、ウィキペディアの下書きに反映できていない点がないかの最終確認を実施。この際、いくつか情報を追加しました。

資料読解6回目では、4周目と同じく「脚注に示されているページに、下書きにおける記述と同じ内容が記されているか」を確認しました。5周目で新たな情報を追加した分、4周目の作業をもう一度行う必要があるのです。ああ面倒くさい。

これらの作業を行なったのち、日本語版ウィキペディアに記事を公開しました。なお、パリ原則のウィキデータ Q19298228 は既に存在していたので、追加する必要があったのですが、公開した安堵で失念してしまい、他のユーザーが処理してくださいました。

なお、ウィキペディア記事「パリ原則 (図書目録)」は「Wikipedia:メインページ新着投票所/新しい項目候補」での投票を経て、メインページ新着記事に選出されました。

まとめ

パリ原則 (図書目録)」を日本語版ウィキペディアに立項した経緯についてまとめました。ウィキペディア記事の立項プロセスに関心がある方のお役に立てば幸いです。

なお、ウィキペディアの編集記は他にもいくつか作成しておりますので、関心がある方はご覧くださいませ。本稿では取り上げなかった、英語資料の調べ方などもまとめています。

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