日本語版ウィキペディア女性参加者へのインタビュー《後半》—— Wadakuramonさん

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紀美野町 みさと天文台, CC BY-SA 3.0 https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0, ウィキメディア・コモンズ経由で

女性ウィキペディア編集者に個別にお話をうかがうインタビューの後編です。前編はこちらをご覧ください。

後編に登場してくださるのは、Wadakuramonさんこと門倉百合子さんです。長年、司書として働き、そのご経験とウィキメディアとの関わりをご著書『70歳のウィキペディアン 図書館の魅力を語る』(郵研社,2023年,ISBN 978-4-907126-61-2)につづっておられます。日本語版Diffの常連寄稿者でもあります。
今回は、女性ウィキメディアンとして、貢献の楽しさや、さまざまな立場にいる女性の参加方法についておうかがいしました。

前世紀にはなかった仕事をしたから、学ばなければならなかった

—— 昨年、ユーザーグループでアンケートを取りました。その結果、日本語版ウィキペディアの参加者に女性が非常に少ないことがわかりました。原因を探ろうと女性参加者にインタビューを行っているところです。一人で集中して作業できる時間がないとか、周りの人に嫌がられるとか、いろいろな原因を考えてみました。

門倉:そういうことですと、私はあまりお役に立てないかもしれません。今は365日、24時間いつでもウィキメディア・プロジェクトに参加できる状態ですし、「やっては駄目」という人もいません(笑)

—— ご著書を拝読して、疑問に思ったことや新しいことを知るために、身軽にイベントや学習会に出かけていかれるお姿に感銘を受けました。

門倉:そういうことができる職場にいたのが大きいですね。私は2005年くらいから、インターネットを通じて、ブログで情報を発信する仕事をしていました。20世紀にはなかった仕事です。だから誰もやり方を知らないし、だからみんなで勉強した。視野の広い、若い先端の人たちに教わりました。教えてもらうのは恥ずかしいことではないと思っています。むしろそういう人たちに学ばなくちゃという切迫感がありました。
イベントに参加するのはお金もかかるし休みも必要で、人によっては困難かもしれません。とはいえ、どんな人でも、スキルを向上させないと前に進めません。今ならオンラインもあるし、自分にあったやり方で、でもちょっと背伸びしながら学び続けるのが大切と思います。

ウィキペディアの記事執筆はハードルが高い

—— ウィキペディアの女性参加者へのインタビューで、お一人がおっしゃっていたのは、とにかくやり方が難しい、調べものの仕方もわからないということです。

門倉:日本では、ウィキペディアが発達して、よく知られています。ですが、ウィキペディアに記事を書くのはハードルが高いですね。まず、ある程度きちんとした文章を書かなければなりません。
良い記事を書くことを目指すのはもちろん素晴らしいのですが、最初から完璧を目指す必要はないと思います。
私も良い記事などはまったく目指したことがありません。

—— そうなのですか!?

門倉:私が書いている記事はマイナーな分野です。それでも何か書けば、誰かが続けてくれるかもしれないと思っています。誰もやってくれなくても、とにかく外国語版にあるのに日本語版にないのは、日本人の視野が狭いといわれてるみたいで悔しいので、簡単でもいいから追記したり立項したりしています。


マレーシアのESEAP会議で考えたこと

門倉:先日、マレーシアでのESEAP会議に行って感じたのですが、海外のウィキメディアンの多くは、ウィキペディアだけに参加しているわけではないんですよ。たとえばウィキクォートやウィクショナリーなどは単語単位だから参加しやすい。ウィキペディアは大変だけど、それ以外にもたくさんのプロジェクトがあることをもっと知って欲しいと思っています。

—— たとえばウィキメディア・コモンズに参加する方法などもあります。

門倉:そうですね。得意な分野で貢献すれば良いのです。私自身はウィキデータの可能性に惹かれています。
ウィキペディアを開くといつもその記事のウィキデータを見て、そして、ウィキデータに定義が書いてなければ、ウィキペディアからコピーします。これをいつもやっています。本当に単純な、1分もかからずにできることですけど、充実感があります。今日一日、これで幸せっていうね(笑)それにウィキデータを見ると、海外の人たちがこの言葉をどうみているのかよくわかり、これはウィキペディアでは味わえません。

—— 私はほとんどウィキデータを触ったことがありません。

門倉:ぜひ今日すぐにでもやってください。

—— はい(笑)


さまざまなプロジェクトに参加している女性たち

—— 参加方法がわかりやすければ、ウィキメディア・プロジェクトに加わってくださる女性もたくさんいらっしゃると思います。その方たちをお誘いする方法について、門倉さんのお考えをお聞かせください。

門倉:ウィキメディア・プロジェクトは「集合知」です。(ウィキペディア日本語版「集団的知性」 )これに参加するのは、男女に関わらずとても楽しいことです。1人が知っていることはほんのわずかでも、多くの人が自分の知識を提供し、皆で共有できるって素敵じゃないですか。ひとりひとりの教育程度の差は確かにあるでしょう。ですから、ウィキペディアではなく、もっと参加しやすいプロジェクトに誘うことも重要ではないでしょうか。
私はDiffで海外の事例をたくさん見ています。女性の事例も多い。彼女たちはウィキペディアではなく、たいてい別のプロジェクトに参加しています。その方たちの活動や楽しさを翻訳して紹介していくのが、私にできることのひとつではないかと思っています。

—— 今日は貴重なお話をありがとうございました。

2024年6月19日 オンラインにて


今回は4人の日本語版ウィキペディアンの女性にインタビューを行いました。それぞれの貢献年数や技術、興味はさまざまです。
複数の協力者のお話から見えてきたこととして、1.『自分のセンスや感想より、客観的な事実』を重視するウィキメディアのあり方が多くの女性の興味を引かないのではないか、という仮説です。
2.問題点としては、これは女性対象に限らないのですが、ルールやガイドへの誘導があまりスムーズではないということです。十年以上貢献なさっているエイナさん(仮ユーザー名)が、つい最近まで『五本の柱』をご存じなかったのは代表的な例です。3.また新規参加者の白文鳥さん(仮ユーザー名)からは「難しい、不安」という率直な感想をいただきました。3-1.ウィキペディアの編集そのものの難しさに関しては、4番目のWadakuramonさんこと門倉さんとのインタビューが解決法のひとつを示していると思います。

今後もWikimedians of Japan User Groupではインタビューやアンケートといった調査を継続的に行っていく予定です。どうぞご協力をお願いいたします。

今回の反省点

  • アンケートから時間が経ってしまったためか、インタビュー依頼メールをお送りしても返信をいただけない場合がありました。
    • 改善策 → これはアンケートの時に、「このメールアドレスからインタビュー依頼を送ります」といった形でこちらのメールアドレスを紹介しておく。

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