「ウィキメディア・ムーブメントの今」を語る

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2024年11月6日に神奈川県のパシフィコ横浜で開催の図書館総合展2024のフォーラムで、「ウィキメディア・ムーブメントの今」と題して話をしましたので、その概要をまとめました。このフォーラムはウィキペディア展覧会の後援、Wikipediaブンガク実行委員会の協力をいただいて開催したものです。図書館総合展は1999年から毎年開催され、図書館関係者が何万人も集まる日本のイベントです。ここで2022年からウィキペディア展覧会が始まり、ウィキペディア関連の様々な情報が提供されています。当日はフォーラムの模様をZoomで同時配信いたしました。

図書館総合展2024フォーラムで「ウィキペディアムーブメントの今」を語る筆者

フォーラムの概要

  • タイトル:ウィキメディア・ムーブメントの今:世界で、日本で、GLAMとの協働事例
  • 日時:2024年11月6日(水)10:30~12:00
  • 会場:パシフィコ横浜 第8会場(E25)
  • 主催、登壇者:門倉百合子(『70歳のウィキペディアン』著者)
  • ウェブサイト:https://www.libraryfair.jp/forum/2024/1166

フォーラムの内容

フォーラムではまず自己紹介のなかで、昨年『70歳のウィキペディアン』を出版した後に、私がいかにウィキメディア・ムーブメントに関わるようになったか、またそれによって私の世界がいかにグローバルに広がったか、が話の内容であることを示しました。その後、次の5つのテーマで話をしました。「ウィキメディアって何?」「ウィキメディアのプロジェクト」「ウィキメディアのコミュニティ」「コミュニティのイベント」「グローバルに広がる世界」です。

ウィキメディアって何?

まずウィキメディアという言葉を説明するために、ウィキペディア日本語版の「ウィキメディア運動、あるいはウィキメディアは、ウィキメディア財団プロジェクトに貢献する地球規模のコミュニティを指す」という記述を示し、ウィキメディア・ムーブメント(ウィキメディア運動)の目標が、「地球上の全ての人が、人類の知識の総和に自由にアクセスできる世界を作る」ことであるのを話しました。そして2003年に創設され、ウィキメディア・ムーブメントの運営を担っているウィキメディア財団の概要を紹介しました。

ウィキメディアのプロジェクト

ここではウィキメディアのいくつものプロジェクトの中から、2001年に始まった百科事典の「ウィキペディア」、議論の場としての「メタ・ウィキ」、辞典の「ウィクショナリー」、テキスト集の「ウィキソース」、画像・音声・動画などを集積する「ウィキメディア・コモンズ」、知識ベースの「ウィキデータ」を紹介しました。そしてそれぞれのプロジェクトが網の目のようにつながって、壮大なウィキメディアの世界ができていることを話しました。

ウィキメディアのコミュニティ

ウィキメディアのコミュニティとして、ウィキペディアの言語版ごとのコミュニティ、提携団体としての利用者グループと国・地域別協会、地域ハブとしてのESEAPやCEEなどについて触れ、それぞれウィキメディア財団の下部組織ではなく、独立した組織として連携していることを話しました。ウィキメディア・ムーブメントを実際に動かしているのは、世界各地のボランティアのウィキメディアンであり、ウィキメディア財団は指示を出すのではなく、活動を運営面で支えているのです。

コミュニティのイベント

サバ州立図書館でのウィクショナリー・ワークショップ集合写真。前列右から4人目がマレーシアのタウフィク・ロスマン、その左が筆者(2024年5月7日)

ここではまず今年の5月に参加した、ESEAP2024に触れました。開催地であるマレーシアのコタキナバルを訪れ、最初に参加したウィクショナリーのワークショップで、マレーシア、インドネシア、オーストラリア、ニュージーランドのウィキメディアンに囲まれ、私はあっというまにウィキメディア・ムーブメントの真ん中に飛び込んでしまいました。自分の本について発表する機会もあり、英語でのプレゼンテーションに挑戦しました。また参加するための旅費の助成金を主催者から提供されたので、それに応えるために自分の経験をコミュニティに向け発表していく意義を強く意識するようになりました。

これまで個人のブログは何年もやってきましたが、ウィキメディア財団のブログであるDiffに、日本語英語で精力的に寄稿するようになりました。自分の経験を綴るだけでなく、英語版Diffの記事で興味を引いたものを日本語に翻訳していきました。また私の本の英語版を読みたいというESEAP参加者の声に後押しされて、Diffに少しずつ本の英訳を載せるようになりました。個人のブログはウィキペディアの出典にすることができませんが、Diffであれば公的なメディアとして出典になる、というのも寄稿を続けている理由の一つです。

ウィキマニア2024カトヴィツェでの図書館員のミーティング、前列右から4人目が筆者(2024年8月9日)

コミュニティのイベントの2つ目は、8月に参加したウィキマニア2024カトヴィツェです。旅費の助成金応募が通ったけれど、プログラムに応募した自著についての発表は通らなかったこと、ウィキメディアンのオーケストラであるウィキオーケストラに参加した経緯などに触れました。そして実際にポーランドのカトヴィツェを訪れ、世界中の数多のウィキメディアンと交流できたことを話しました。またウィキオーケストラのウェブページに、イベントに関する情報がまとめられ、常に更新されいつでも読むことができるという、ウィキメディアの記録管理についても触れました。

ウィキマニア2024カトヴィツェの閉会式で演奏するウィキオーケストラ(2024年8月10日)

グローバルに広がる世界

このような経験を経て私の日常がグローバルに広がっている例として、私が書いたり翻訳したウィキペディアの記事を国ごとに並べると、世界各国に渡っていることをまず示しました。また何度も参加しているWikiGapWikipediaブンガクのエディタソンでは、テーマの人物記事で赤リンクになっている外国人の記事を翻訳していることを話しました。さらにマレーシアトルコウクライナに関連したエディタソンにも積極的に参加し、こうした活動により自分の知らなかった世界がどんどん開けていくことを紹介しました。そして5月から始めたFacebookグループ「Diff日本語版同好会」には、日本人ばかりでなく海外からの参加者がどんどん増えていること、2つの海外イベントから始まった海外とのグループチャットが日常的に続いていることにも触れました。

最後にもう一度ウィキメディア・ムーブメントの目標について触れ、分断が深まる現代の社会の中で、コラボレーションを基盤とするウィキメディア・ムーブメントの意義について話しました。これをきっかけに一人でも多くの方がこのムーブメントに参加していただければ幸いです。

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