ウィキメディア財団では複数のウィキにおいて、アカウント登録をしていない(ログアウト)編集者に臨時アカウント付与を実施します。2025年半ばの導入に向けて、この機能をそれぞれのコミュニティで試用し、改善に向けたコメント共有をお願いします。
ウィキ類でログインしていない利用者が編集すると、その帰属はほとんどのウィキで編集を公開した時点に使った特定の IP アドレスになります。ここで言う特定の IP アドレスとは、インターネットに接続されたデバイス(PCやスマホなど)を識別する固有の番号です。臨時アカウント(Temporary accounts)とは新しいタイプの利用者アカウントで、現状では12件のウィキ類に展開しており、来年にはどのウィキでも利用可能になる予定です。ログアウトした利用者が新しい編集をするときに臨時アカウントを使うと、IP アドレスではなくそれを使ってそれを特定します。ただし、次のように完全な代替にはなりません。第1に、臨時利用者はログアウトした編集者が現状でアクセスできない機能を使えるようになります。第2に、ウィキメディアのプロジェクトではログアウトした編集者の IP アドレスを引き続き使えるし、コミュニティの経験豊富な参加者も今後ともそれにアクセスできます。この変更が特に関係があるのは、ログアウトした編集者ばかりか IP アドレスを用いて利用者をブロックしてウィキ群を安全に保つすべての人です。
この投稿は、 臨時アカウントをめぐるシリーズの第1回です。ここではプロジェクトの基本や、利用者のさまざまなグループへの影響、変更をすべてのウィキ類に導入する計画を大まかに説明します。次の投稿ではさらに詳しく、コミュニティで技術面の高度な権限を預かる利用者と連携してきた経緯について説明します。それらの皆さんのアドバイスに従って、特定の機能に関する作業と導入を対応させました。
この変更に関連する法的義務
ウィキメディアのプロジェクト群ではインターネットの個人情報保護に関する法律や規制の改訂を受け、個人データをより強力に保護する必要性が高まっています。このニーズを満たすため、ウィキメディア財団ではログアウトした編集者がウィキ類とやり取りする方法と、個人データの取り扱い方法を変更しなければなりません。解決策として臨時アカウントを導入 – これによりログアウトした編集者の個人情報保護が向上します。臨時アカウントの必要性について、詳しくは財団の担当部署が設けた「よくある質問」の法務関係の見出しや法務部門による2021年の更新をご参照ください。
臨時アカウントの仕組み
ウィキメディアのプロジェクト群では誰でも編集でき、アカウント作成の有無に差はありません。それは私たちの設立の原則の1つでもあります。登録済みアカウントで編集を行うと、その編集は「最近の変更」や「ページの変更履歴」など、さまざまなログやページでそれぞれのアカウントに帰属します。アカウントなしで実施した編集は、自動生成された臨時アカウントに帰属させます。臨時アカウントは、ログアウトした編集者当人に代わって自動生成され、有効期間は90日間です。それ以降、同じデバイスで編集すると、すべて同じ臨時アカウントに帰属します。
このアカウントの命名は右の基準に従います。~2024-1234567(半角チルダ1個、西暦の当年の4桁の数字、任意の番号)。末尾の番号は自動的に増加し、左の例の次のアカウント番号は~2024-1234568という具合になります。この仮の名前は利用者に割り当てられ、選択はできません。
この番号の組み合わせは、たとえ IP アドレスが変わっても一意であり、利用者がブラウザのクッキーをクリア(除去)した場合、もしくは利用者が別のデバイス(端末機器)もしくは異なるブラウザを使った場合は一意になりません。編集のたびにどの IP アドレスを使ったか、記録はその編集から90日間、保存されます。それを閲覧できるのは、ログインした利用者のうち限定された人々だけです。
アカウント作成から90日が過ぎると、クッキーが無効になります。それまでに公開した編集は、以前と同じアカウントに引き続き帰属しますが、利用者がログアウトした状態で編集を続けた場合は新しい臨時アカウントを割り当てます。臨時アカウントを登録済みアカウントに変換することはできません。臨時アカウントの仕組みの詳細は、こちらのヘルプページを参照してください。
どこで臨時アカウントを有効にするか
現状で臨時アカウントは次のウィキペディアで利用できます。中国語版(広東語)、デンマーク語版、イボ語版、ノルウェー語版(ブークモール)、ルーマニア語版、セルビア語版、セルビア・クロアチア語版、スワヒリ語版。これらに加えてチェコ語版ウィキバーシティ、イタリア語版ウィキクォート、日本語版ウィキブック、ペルシャ語版ウィクショナリーにも導入しました。
これはそれぞれの利用者グループにどう波及するの?
ウィキペディアにアカウントを登録していない読者の場合
何も変わりません。ウィキペディア(あるいはウィキデータやウィキメディア・コモンズなど)を閲覧するだけで編集をしないなら、ログインしていなくてもご本人の側からは何の変化も起こりません。
非ログイン利用者の場合
- これによりプライバシーが向上します。現在、登録済みのアカウントを使用した編集をしないと、90 日後でも、どの IP アドレスから編集したか誰でも見ることができます。臨時アカウントを有効にしたウィキ類では、それができなくなります。
- 特定の臨時アカウントを使って過去90日以内に複数の場所から編集した場合は(例えば自宅と喫茶店など)、その編集履歴も編集した場所の IP アドレスも1件の臨時アカウントに紐づけて一緒に記録されます。これらのデータは要件を満たす利用者が閲覧できます。もしもそれにより個人の安全が心配になると思う場合は、メールにて
talktohumanrightsアットマークwikimediaドットorg
宛に助言を求めてください(訳注:メールアドレスに混じったカタカナ部分を半角記号に変換)。
コミュニティの参加者で非ログイン利用者とのやりとりをする場合
- 臨時アカウントはデバイス(端末機器)に一意にリンクされます。これに対して IP アドレスはさまざまなデバイスや人々と共有できます(たとえば学校や職場でさまざまな人が1件の IP アドレスを共有する場合があります)。
- IP 利用者と比べると、臨時利用者の識別子は安定しています。臨時利用者の編集を確認して、その人のトークページにメッセージを残せるし、時間はかかるかもしれませんが、当該の編集を行った人がそのメッセージを読む可能性は高くなります。
- 臨時アカウントは登録済みアカウントと複数の点で同様の働きをします。将来は、さらに多くの機能を有効にするかもしれません。上記の画面キャプチャに示したように、臨時アカウントの利用者は通知を受けます。またその人に編集に感謝を送ったり、議論で言及したり、コミュニティへ参加するよう招待することもできます。
それぞれのウィキで仲裁や管理に IP アドレスを使う利用者の場合
- 巡回係で執拗な不正利用者を追尾し方針違反の審査などをする人:要件を満たす利用者は、臨時利用者の IP アドレスと、特定の IP アドレスまたはアドレス範囲を使う臨時アカウントが実施した投稿全件を明示できます。また IP 情報機能により、IP アドレスに関する有用な情報にもアクセスできます。その他の多くのソフトウェアは臨時アカウントでも動作するように構築または調整されており、対象に不正使用フィルタ AbuseFilter、グローバル・ブロック、利用者のグローバルな投稿などを含みます。
- 非ログイン編集者のブロックを担当する管理者:
- スチュワードなど高度な権限を持つ利用者との連携はこれまでも、また今後も保っていきます。これら利用者から貴重なコメントや質問を受けてツールを更新し、展開はその更新に合わせて日程を調整してきました。
- 展開前に行われた貢献にさかのぼって臨時アカウントを適用することはできません。Special:Contributions(特別:投稿)では既存の IP 利用者の投稿を確認はできても、その IP アドレスを割り振った臨時アカウントが実施した新しい投稿の確認はできません。その代わり、要件を満たす利用者ならこれを実行するとき、Special:IPContributions (特別:IP投稿)を用いてください。
いつ、臨時アカウントをもっと多くのウィキ類に展開するの?
- 上記で述べたように、ウィキ類の最初の一群にはすでに臨時アカウントを導入済みです。この段階を小規模パイロット導入と呼びます(minor pilot deployment)。もっと多くのウィキ類で実際に臨時アカウントを有効にする前に、修正が必要な問題の特定に役立つという利点があります。確認が必要な点として見込んでいるのは、コミュニティの参加者の皆さんが臨時アカウントをどのように操作するか、既存のツールと新しいツールがすべて機能するか、経験豊富な利用者が通常のタスクを快適に実行できるかなどです。このプロジェクトの影響を持続して監視し、定期的にレポートを共有していく予定です。リアルタイムの指標データを含め、公開のダッシュボードを確認してください。
- もしも予想外の作業が大量に発生しなければ、2025年2月には規模の大きなウィキ類に導入の予定です。これを大規模パイロット導入と呼んでいます。対象は規模順に上位10件前後のウィキ類で導入に関心を示したところです(ご連絡はこちらへ文書でお願いします)。英語版ウィキペディアへの導入は、この段階では回避する所存です。
- 次の段階として2025年半ばには、残りのウィキ類への導入は慎重に検討して一意に実施します。その後、支援の提供、指標を見守り、発生した問題への対処を進めます。
最善を尽くして影響を受けるすべての人に事前に通知します。臨時アカウントに関する情報は技術ニュース(Tech News)、この「Diff」を含めたブログ類やさまざまなウィキページ、バナーその他の形式で発信します。カンファレンスではこのプロジェクトについて当部署または財団の職員から出席者の皆さんに説明する場を設けています。さらにコミュニティを運営する提携組織には、支援プログラム類を連絡します。
ニュースレターが新しくなりましたので、購読して直近の状態を見逃さないようにしましょう。プロジェクトの詳細はよくある質問 (FAQ)をチェックして、最新の情報更新を確認してください。お問い合わせはプロジェクトのページまたは(メールなど)オフウィキでどうぞ。それではまた!
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