イベントレポート2024/№12 ウィキペディアタウンin栗山

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遠く1,000キロメートルは離れた日本の北端、北海道の栗山町からウィキペディアタウン開催の伝手とノウハウを習得すべく、熱意漲る新人ウィキペディアンのuser:満月のライオン氏が、私たちの地元・京都府京丹後市にやってきたのは、2024年5月最後の週末のことでした。それから5カ月。数多の試行錯誤を重ねつつも、町を動かし、企画実現に漕ぎつけた彼の並々ならぬ根気と努力に敬意を表します。

ファーストコンタクトとなった京丹後市のイベントについては、こちら↓。

2024年10月6日、ウィキペディアタウンin栗山をウィキペディアンとしてサポートするため、初めて北海道を訪れました。このイベントについては、下記2本の主催者のレポートに詳しいので、本稿では、その前後の印象深いエピソードについて紹介します。

edit Tango参加イベント2024 / №12 ウィキペディアタウンin栗山 

北海道では、私の知る限り、2015年に森町で二度、2016年には北海道大学で、2020年には様似町、2022年にも士別町でウィキペディアタウンが行われています。しかし北海道は広大なためか、いずれの地域の企画も主催者やWikipedia講師は異なり、各企画間で主催者や参加者の横のつながりが育まれるところまでは至っていません。

2024年には、1月にウィキペディアタウンのガイドブックとして私が著した『ウィキペディアでまちおこし みんなでつくろう地域の百科事典』の書評が北海道新聞でも紹介されて反響を呼び、やはり別々の主催者によって、少なくとも3地域でウィキペディアタウン開催が立案されました。しかし、意気込みは盛んであるものの準備不足であったり、地元住民の参加希望者が無く開催されなかったケースもあり、公共交通で移動するだけでも一苦労のある地方でのWikipedia普及啓発活動の難しさを感じます。

そのようななか、地元自治体の公的なバックアップのもと開催されたのが、ウィキペディアタウン in 栗山でした。栗山町はこのイベントを皮切りに、町に関する様々な情報をインターネット上に蓄積し充実させていくデジタル化戦略の一助として、また、ネット上にまだ無い埋もれている知見を広く共有する手段として、ウィキペディアに期待し、その取り組みは時事通信社の機関誌『地方行政』(2024年10月21日刊行, 第11329号)でも特集されました。

(編集題材「小林酒造」を見学する参加者達 漱石の猫, CCBY4.0, ウィキメディア・コモンズ経由で)

エディタソン会場となった栗山町立図書館の図書館職員や、その他の関係者と、私たちWikipedia編集サポートスタッフとの最後の打ち合わせは、イベントの2日前、オンライン会議Zoomで行われました。本州から現地までの交通手段の都合上、すでに北海道に向かっていた私は、ビジネス支援を強く打ち出しオンライン・ミーティング環境の整っている札幌市の札幌図書情報館からミーティングに参加しました。札幌図書情報館は2019年にLibrary of the Yearを受賞しており、同年に私の勤務先も同賞を受賞しているため、いっしょに新聞報道された縁があったりします。私の旅程を知った職員の皆さまのご厚意で様々な様々な資料提供と詳細な案内をいただき、ウィキペディアタウンに先立ち、「札幌からの車での移動所要時間」で分類された郷土資料コーナーなど、北海道特有の地域色を体感することができました。

栗山町との打ち合わせでは、参加予定者の名簿が共有されました。イベントには栗山町民だけではなく、札幌市や小樽市からも市民参加があることをこの時点で知り、ちょうどこの日の夜、関東地方から小樽市に転居したウィキペディアンの知人と夕食を共にする約束をしていたので、共に鍋をつつきながらそのことを話題にすると、急な話にも関わらず、片道約3時間の道のりもなんのその、彼もイベントに参加してくれることになりました。

(札幌市内の飲食店で提供された「しゃぶしゃぶ」 漱石の猫, CC0, ウィキメディア・コモンズ経由で)

ウィキペディアは、1人でも編集できます。しかし、身近に編集者がいることは、時に孤独な編集活動の支えになることもあります。

栗山町のウィキペディアタウンには、かつてアクティブな編集者であったものの、15年以上、編集活動から離れていた元・ウィキペディアンも参加していました。Wikipedia編集はボランティアなので、時間のある若い頃には熱心に参加していても、家庭を持ち仕事が忙しくなると編集活動から離れてしまう人は多いでしょう。しかし、近隣地域でのエディタソン開催は、そんな元・ウィキペディアンの青年がコミュニティに復帰するきっかけともなりました。これは地域エディタソンが開催されることの、とても大きな意義であると思います。

栗山町では、ウィキペディアタウンで立項した項目にリンクする二次元バーコードを、看板に加工して現地に設置するプロジェクトも公民連携で実現しようとしています。2012年にウェールズのモンマスで実施されたような「ウィキペディアタウン」は、日本ではまだ多くはありません。地方の町が、ウィキペディアによって今後どう拓かれていくのか、今後がますます楽しみです。

(Wikipedia日本語版メインページ「新しい画像」にも選出された、イベント当日に撮影された小林酒造の写真 Asturio Cantabrio, ウィキメディアコモンズ経由で CCBY4.0)

2024年10月6日「ウィキペディアタウン in 栗山」編集題材

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