東京外国語大学「知られざるウィキペディアの世界」レポート

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稲門ウィキペディアン会の Eugene Ormandy です。2024年12月12日、東京外国語大学で開催されたイベント「知られざるウィキペディアの世界」に登壇したので、その模様をまとめます。なお、イベントではウィキメディア財団中山純子さんがモデレーターを務めたほか、早稲田WikipedianサークルLakka26さん、Wikimedians of Japan User Groupコヨミヤさんも登壇しました。

稲門ウィキペディアン会のロゴ。(Uraniwa, CC0)
早稲田Wikipedianサークルのロゴ。(Takenari Higuchi, CC0)
Wikimedians of Japan User Group のロゴ。(Wikimedians of Japan User Group, CC BY-SA 4.0)

経緯

イベントに先立つこと数ヶ月、ウィキメディア財団職員の中山さんから「登壇しませんか」とお誘いがあったのでお引き受けしました。その後、登壇メンバーが確定したので、2度オンラインミーティングを実施。1度目に大まかな役割分担を決定し、2度目に各自が作成したスライドを用いてリハーサルを実施しました。中山さん、Lakka26さん、コヨミヤさんとは数年来の付き合いなので、スムーズに話が進みました。

また、中山さんは大学と別途打ち合わせを実施し、PCのセッティングや進行について調整してくださいました。我々プレゼンターが、自分たちの発表に集中できるような環境を整備してくださったのには感謝しかありません。

東京外国語大学。イベント当日に撮影。(Eugene Ormandy, CC0)

当日

17時40分よりイベントが開始。オフライン、オンライン合わせて30名程度が参加しました。まずは、東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授の久野量一さんから挨拶と登壇者紹介がありました。

中山さん発表

はじめに、中山さんがイントロダクションを実施。ウィキペディアに限らない「ウィキメディア」の話や、それに携わるボランティアたちの話を展開し、さらにウィキメディアに関連するクイズを実施しました。

なお、このクイズは Mentimeter(https://www.menti.com) というサービスを用いて行われました。中山さんが示したQRコードにアクセスし、画面に示される選択問題に答えていくというものです。回答結果の統計はリアルタイムで画面に反映されるので、回答のばらつきなどがわかって興味深かったです。

「クイズの回答はあえてこの場では発表しません。この後続く御三方の発表を聞いていただければ、答えがわかる仕組みとなっています」という工夫も見事でした。登壇者としては、聴衆が自分の話を聞くインセンティブが上がるので、ありがたかったです。

コヨミヤさん発表

その後、コヨミヤさんが「ウィキペディアの仕組み」と題した発表を実施。ウィキペディアはフリーの百科事典であること、編集には方針やガイドラインが存在することを示したのち、「中立的な観点」「独自研究は載せない」「検証可能性」という三大方針について、それぞれ解説を行いました。また、日本語版ウィキペディアでは異例の未成年管理者としての業務や、ウィキペディアに出会ったきっかけなどをお話しされました。

コヨミヤさんが人前でウィキペディアの発表を行うのは初めてとのことでしたが、信じられないほど冷静に進められていて、大変頼もしかったです。また、方針等についての説明内容も過不足なく、ウィキペディア初心者の聴衆にとって非常にわかりやすいガイドとなっていたと思います。

また、ウィキペディア「玄人」の聴衆にとっても、コヨミヤさんの編集内容や、ご自身の来歴についてのお話は大変興味深いものだったのではないでしょうか。特に、小学生の時点で「新着記事」を書き上げてしまう実力には、多くの人が驚いたことでしょう。

余談ですが、私は以前コヨミヤさんへのインタビュー記事を作成しています。コヨミヤさんの活躍にご興味がある方はこちらも是非ご覧ください。

Eugene Ormandy発表

コヨミヤさんの発表ののち、私 Eugene Ormandy が「ウィキメディア・プロジェクトを編集する人々のモチベーション」と題した発表を実施。ウィキメディア・プロジェクトを編集する人々のモチベーションについて、インタビュー記事などの一次資料を紹介したのち、研究者による論文等をごくごく簡単に紹介しました。

また、いわゆる「少数言語」の話者たちは、自分たちの言語を保存するためにウィキメディア・プロジェクトを編集していると説明し、中央ドゥスン語を保存するマレーシアの友人たちの活動を紹介しました。また、「ウィキメディア・プロジェクト」は「ウィキペディア」に限らないことも簡単に示しました。

さらに、さまざまな言語を研究する東京外国語大学こそ、積極的にウィキメディア・プロジェクトに関わってほしいことをアピールしつつ、これまでにも様々な編集イベントを開催してくださっていることのお礼を述べました。

ウィキメディア・プロジェクトを活用した中央ドゥスン語の保存に取り組む、マレーシアの学生クラブ「ケント・ウィキ・クラブ」(Nurainucil24, CC BY-SA 4.0)

Lakka26さん発表

その後、Lakka26さんが「外から見たウィキペディア」と題した発表を実施。辞書マニアとしてウィキペディアを編集するモチベーションや、当初は「敵」だと思っていたウィキペディアのガイドラインなどを知るにつれ、辞書が学べきシステムが色々あると気づいたこと等について説明されました。

ウィキペディアは全ての編集履歴がアクセス可能なのに対し、電子版の辞書はいつの間にか追加修正が行われ、その詳細を確認する手段がないという現実を批判した「再現性がない辞書を誰が信用するだろうか」という一言は、非常に重みがありました。

Lakka26さんとは数年来の交流がありますが、経験を重ねるたびに発表内容・発表スキルともに大幅に進歩していて、頼もしいばかりです。また、Lakka26さんは、上述の「再現性がない辞書を誰が信用するだろうか」のような、人々の印象に残るフレーズを作ることが非常に上手で、自分も大いに見習わなくてはと思わされます。

なお、コヨミヤさん同様、私はLakka26さんのインタビュー記事も下記のとおり作成しています。辞書文化とウィキメディアの比較などに関心がある方は是非ご覧ください。

質疑応答

その後は質疑応答を実施。オンラインツールに寄せられた「ウィキペディア編集者あるあるはありますか?」「荒らしにはどのように対処していますか」「編集にはどのくらい時間を使っていますか」などの質問に、3人が回答しました。「仕事の合間にウィキペディアを編集するのではなく、ウィキペディアを編集する間に仕事をするのだという名言があります」と紹介したところ、そこそこ笑っていただけたので満足です。

また、ウィキメディア・コモンズにおける肖像権についても質問があったので、ウィキメディア・プロジェクトが採用しているクリエイティブ・コモンズ・ライセンスは著作権に関するライセンスであること、著作権の問題はないが肖像権の問題がある画像等は、ガイドラインなどに則り削除の議論が行われることを解説しました。

質問はまだまだたくさん来ていましたが、いつの間にか終了時刻となっていたので、泣く泣く終了。次回に期待です。

まとめ

2024年12月12日に東京外国語大学で開催されたイベント「知られざるウィキペディアの世界」について、いち登壇者の視点から振り返りました。

東京外国語大学ではこれまでに何度もウィキメディアイベントが開催されており、ありがたいことに私も携わらせてもらっています。ウィキメディア・プロジェクトと大学の提携は、双方にとってメリットがあると私は信じているので、今後も協力できれば幸いです。

末筆にはなりましたが、本イベントの開催にご協力いただいた皆様に改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。

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