本稿では、東京都荒川区の公共図書館全7館を訪問し、その全てをウィキペディアの編集に活用したユーザーとして、振り返りを行います。
編集した記事
2023年春に、荒川区の公共図書館全7館を訪問して、以下の記事を編集しました。
編集した記事 | 活用した図書館 |
尾久橋 | 尾久図書館 |
尾久の原公園 | 町屋図書館 |
日暮里大火 (1925年) | 日暮里図書館 |
北豊島中学校・高等学校 | 冠新道図書サービスステーション |
荒川区民会館 | 中央図書館(ゆいの森あらかわ) |
南千住浄水場 | 南千住図書館 |
マイクロコンピュータ | 汐入図書サービスステーション |
基本的には、図書館が所蔵する郷土資料を用いて、その土地に関するウィキペディア記事を加筆しています。小規模な加筆がほとんどですが、[[日暮里大火 (1925年)]] については、既存の記事を全面的に加筆しました。なお、この記事はメインページ強化記事に選出されました。
また、図書館を訪問する前に、編集できそうな記事に目をつけていたのですが、これがなかなか難しかったです。事前のチョイスがうまくいかなかったため、思うように編集できなかった事例もしばしばありました。
図書館のレファレンスカウンターで「尾久の原公園についての資料があれば教えて欲しい」と伝えたところ、地図や DVD を示していただきました。ただし、これらのメディアをウィキペディアの出典として利用するのはあまり好ましくないと私は考えているため、郷土資料コーナーにある本を確認することにしました。
- 荒川区編『荒川区史 下巻』荒川区、1989年。
- 池享、櫻井良樹、陣内秀信、西木浩一、吉田伸之編『みる・よむ・あるく 東京の歴史 8』吉川弘文館、2020年。
- 『日本歴史地名大系 第13巻 (東京都の地名)』平凡社、2002年。
- 浅井建爾『東京の地理と地名がわかる事典 : 知れば知るほどおもしろい』日本実業出版社、2018年。
- 松平康夫『荒川区の歴史』名著出版、1979年。
上記の本に目を通したものの尾久の原公園に関する記述はなかったため、新聞データベースを利用することにしました。その結果、なんとか朝日新聞クロスサーチで、公園に関する記事を発見。2012年のダイオキシン検出について、ウィキペディアに加筆しました。編集の差分はこちら。
『東京23区の公共図書館をウィキペディアに活用する #2 荒川区立町屋図書館』より引用。
汐入公園についての記述を探したのですが、新しくできた公園なので区史には記述がありませんでした。レファレンスカウンターの方にも「汐入公園について記載がある資料はないでしょうか」と質問したのですが、見当たらないとの回答。
どうやら郷土記事を加筆するのも難しそうです。こうなったら棚にある本を一つ一つ確認して、ウィキペディアに使えそうなものを探し出すしかありません。気合いだ!気合いだ!気合いだ!
『東京23区の公共図書館をウィキペディアの編集に活用する #7 荒川区立汐入図書サービスステーション』より引用。
レファレンスについて
どの図書館の方も、丁寧なレファレンスをしてくださいました。特に日暮里図書館、南千住図書館の方は、一通り回答された後も、追加で色々と調べてくださいました。
さらに、レファレンスカウンターの方が「こんな本がありました」と『カメラがとらえたあの日あの場所 : Arakawa photo history : 令和4年度荒川ふるさと文化館企画展』を持ってきてくれました。相談終了後も、何か資料がないか探してくださったそうです。ありがたい限りですね。
『東京23区の公共図書館をウィキペディアの編集に活用する #3 荒川区立日暮里図書館』より引用。
レファレンスカウンターで「南千住浄水場について記載がある資料はありますか」と質問したところ、『荒川区史 下』を紹介していただきました。ありがたいことに、私が資料を読んでいる間も司書の方は色々と調べてくださり、追加で『証言に基づく東京下水道史 資料編』『東京近代水道百年史』を紹介してくださいました。
『東京23区の公共図書館をウィキペディアの編集に活用する #6 荒川区立南千住図書館』より引用。
プロレス本について
どの図書館でも、プロレス本のコーナーを確認しました。結果、冠新道図書サービスステーションと荒川区立汐入図書サービスステーション以外は、プロレス本が置かれていました。尾久図書館、中央図書館(ゆいの森あらかわ)、南千住図書館は特に印象に残っています。
尾久図書館は、私が愛してやまないプロレス関連の書籍も充実していました。原悦生『猪木』などの、最近出版されたプロレス本が何冊か置かれていたことにも大感動。
『東京23区の公共図書館をウィキペディアの編集に活用する #1 荒川区立尾久図書館』より引用。
私が愛してやまないプロレス本も大変充実していました。吉田豪の名著『書評の星座』シリーズや、『日本プロレス全史』といった大型本のほか、『1985年のクラッシュ・ギャルズ』や『ダンプ松本『ザヒール』』といった、女子プロレスの本もきちんと置かれており「信頼できる……!」と感じました。男子プロレスの本ばかりで、女子プロレスの本が全然置かれていない図書館もありますからね……。
『東京23区の公共図書館をウィキペディアの編集に活用する #5 荒川区立中央図書館(ゆいの森あらかわ)』より引用。
今回もウィキペディアの編集を始める前に、私が愛してやまないプロレス本の棚を確認したのですが、その質の高さに度肝を抜かれてしまいました。まず目に止まったのは、大仁田厚『人生に必要なことは、電流爆破が教えてくれた』。そしてジャスト日本『インディペンデント・ブルース : 月で生まれ輝くレスラーたちの物語』。さらには高木三四郎『年商500万円の弱小プロレス団体が上場企業のグループ入りするまで』やロッシー小川『〈実録〉昭和・平成女子プロレス秘史』。そうです。南千住図書館は、新日本プロレスや全日本プロレスといった、いわゆる「メジャー」以外のプロレス団体を取り上げた書籍もきちんとカバーしているのです。さらに、雑誌コーナーには「世界最高の雑誌」と名高い『週刊プロレス』が!これでプロレスの主要な流れもばっちりカバーできます。完璧。何も言うことがありません。プロレスファンは絶対に南千住図書館へ!!!
『東京23区の公共図書館をウィキペディアの編集に活用する #6 荒川区立南千住図書館』より引用。
小規模な「図書館」について
荒川区には、小規模な「図書館」が2つあります。冠新道図書サービスステーションと荒川区立汐入図書サービスステーションです。これらの「図書館」は資料の種類が限られているため、上述のとおりプロレス本は置かれていませんでした。また、作業ができる机もありませんでした。
「ウィキペディアの編集には向かないなあ」と感じたのも、否定できない事実です。しかし、このような小規模な「図書館」の意義を考えるきっかけとなりました。
今回は小規模な冠新道図書サービスステーションを訪問しました。「もっと色々な資料を置いてほしい」「作業ができる机がほしい」「ウィキペディアの編集には使いにくい」と感じたことは否定できません。しかしその一方で、「このような小規模な分館を軽視し、大規模な図書館を数館作って満足する社会にはなってほしくないな」と感じたことも事実です。
日本の図書館はどうあるべきか、そしてどのように配置されるべきなのか、現実を踏まえながら、市民、そしてウィキペディアンとして考えなければと感じた今回の訪問でした。
『東京23区の公共図書館をウィキペディアの編集に活用する #4 荒川区立冠新道図書サービスステーション』より引用。
限られた種類の資料しか置かれていない小規模な図書館を、どのようにウィキペディアの編集に活用できるか考えた回であり、雑誌をウィキペディアの編集に活用する難しさを痛感した回でもありました。制約の中でできることを考えるのは大変ですが、やりがいを感じますね。
荒川区の冠新道図書サービスステーションを訪問した時と同様「もっと色々な資料を置いてほしい」「作業ができる机がほしい」と感じたのは、否定できない事実です。しかし、小規模な図書館をないがしろにして、大規模な図書館を数館作って満足するような社会にはなってほしくないなと感じたことも、紛れもない事実です。
このシリーズを立ち上げたことで、小規模な図書館について考える機会が増えました。今後も色々と訪問しながら、考えてみようと思います。
『東京23区の公共図書館をウィキペディアの編集に活用する #7 荒川区立汐入図書サービスステーション』より引用。
まとめ
とても楽しかったです。ウィキペディアンとしても「与えられたお題で何か編集する」というスキルが向上したように思います。今後も東京23区の図書館を色々と訪問しようと思います。
参考資料
各図書館を訪問した記録は以下のとおりです。
Can you help us translate this article?
In order for this article to reach as many people as possible we would like your help. Can you translate this article to get the message out?
Start translation