ウィキペディアンの読書記録第4弾。今回取り上げるのは『現代用語の基礎知識2017』です。
書誌情報
- 『現代用語の基礎知識2017』自由国民社、2017年。
内容の要約
本書には、ウィキペディアに関する記述がいくつかありました。
「ウィキペディア」という項目
579ページに「ウィキペディア」という項目がありました。そこには、ウィキペディアがウィキに基づくインターネット事典であること、ウィキメディア財団によって運営されていることが記されています。また、ウィキペディアが準拠する「ウィキ」、ウィキを活用したプロジェクト「ウィキリークス」の項目もありました。なお、ウィキリークスはウィキメディア財団が運営するプロジェクトではありません。
クリエイティブ・コモンズ
501ページから502ページにかけて「クリエイティブ・コモンズ」という項目がありました。そこには「ウィキペディアの全記事に付与されるなど、世界で最も普及している」という記述がありました。
「ウィキペディアによると」という記述
97ページから98ページにかけて「空気感」という項目がありました。そこには「事典サイトの『ウィキペディア』によると『空気感』はもともと『芸術表現に用いられる形容の一つ』で、写真に関しては『二次元である写真がまるで立体のように見えることを指す』という」という記述があります。
感想
『現代用語の基礎知識』という有名な書籍で、ウィキペディアが参考文献として使われたことは大変残念に思います。ウィキペディアにおける記述を参照する場合は、ウィキペディアそのものを参考文献とするのではなく、当該記述が出典としている資料を参考文献とするべきだからです。
それでは、実際に筆者が参照したウィキペディア記事 [[空気感]] を確認してみましょう。まず行うべきは、筆者が参照したウィキペディアの版を特定することです。ウィキペディアはいつでも編集ができるので、適宜内容が変化しますが、その履歴は全て残されているので、版ごとの内容を確認することができます。[[空気感]] の履歴は以下のとおりです。

『現代用語の基礎知識2017』が出版されたのは2017年なので、筆者が参照したのは「2016年11月15日19:35 (UTC) 版」だったと推定されます。それでは、その内容を確認しましょう。

『現代用語の基礎知識2017』で紹介されていた記述は、たしかにウィキペディアに存在していました。大竹省二『レンズ観相学』という参考文献も示されています。しかし、「芸術表現に用いられる形容の一つ」という記述については、脚注がありませんでした。つまり、ウィキペディアの無出典記述が『現代用語の基礎知識』で取り上げられていたということになります。
「ウィキペディアに何が書かれているか」をテーマとした論考であれば、ウィキペディアの無出典記述を取り上げることは問題ありません。ただしその場合は、参照した版と、無出典記述をあえて取り上げた旨を明記するのが、誠実な姿勢なのではないかなと個人的には感じます。
補足
筆者が参照した版が2016年11月15日19:35 (UTC) 版ではなく、その一つ前の2009年12月25日 (金) 03:53 (UTC) 版 であった場合でも、本稿で指摘した内容に影響はありません。
参考
「レファレンスサービスに活用されるウィキペディア : 良い例と悪い例」という記事では、ウィキペディアの無出典記述を参照したレファレンス事例を紹介しています。興味があればご覧ください。