本稿では、学生サークル「早稲田Wikipedianサークル」の2023年の活動についてまとめます。執筆者の Eugene Ormandy は、2019年に当サークルを立ち上げたボランティアのウィキメディアンであり、2024年1月現在は卒業生サークルの稲門ウィキペディアン会のメンバーとして活動しつつ、早稲田Wikipedianサークルのサポートも継続して行っています。
なお、早稲田Wikipedianサークルが創設された2019年から2022年の活動史については、ウィキメディア財団のブログ Diff に寄稿した「早稲田Wikipedianサークル活動史 (2019-2022年)」という記事をご覧ください。
サークル概要
早稲田Wikipedianサークルは、ウィキメディアンの Eugene Ormandy が2019年に立ち上げた学生サークルです。早稲田大学の学生のみならず、日本各地の大学生・大学院生が参加するインカレサークルで、グループチャットでのおしゃべりや、SNSでの情報発信、オンライン勉強会の開催、さらにはGLAM(美術館、図書館、公文書館、博物館)での編集イベントの開催などを行なっています。
なお、2023年12月時点でのメンバー数は23名で、2022年には卒業生サークルの稲門ウィキペディアン会が設立されています。
グループチャットでのおしゃべり
グループチャットでは、ウィキメディアに関するニュースの共有、編集方法に関する質問、各自が編集した記事の報告・批評などが行われました。また「日本語版ウィキペディアに〇〇の記事がないので、どなたか詳しい方立項してください〜」などの陳情(?)もありました。
SNSでの情報発信
昨年に引き続き、Twitter (X) を活用した情報発信を行いました。サークルで開催した勉強会や、メンバーが執筆した記事を紹介したほか、メンバーの投稿を随時リツイート(リポスト)しました。
勉強会
早稲田Wikipedianサークルは月に1回程度、サークル内のオンライン勉強会を行っています。勉強会では、各自が書いた記事を報告したり、気になったニュースについてシェアしたりしています。勉強会は基本的に、サークルメンバーの Takenari Higuchi さんとEugene Ormandy が、ウィキメディア財団のブログ Diff で連載している月例対談にあわせて開催されます。
また、2022年に引き続き、勉強会の簡単なレポートを Diff に寄稿しています。2022年に作成したレポートは「早稲田Wikipedianサークルと稲門ウィキペディアン会が、ウィキメディア・コモンズに関する勉強会を開催」といった、長いタイトルのものが多かったのですが、2023年のレポートは「早稲田Wikipedianサークル勉強会(2023年x月x日)」と簡素化しました。
3月には、前年に引き続き、国語辞典編纂者の飯間浩明先生をお招きした勉強会を開催することができました。勉強会では、プロの辞書編纂者とアマチュアの百科事典作成者(ウィキペディアン)との共通点や違いが浮き彫りになる、刺激的なディスカッションを行うことができました。改めて飯間先生に心よりお礼申し上げます。
エディタソン
2023年も、GLAM や大学で編集イベント(エディタソン)を実施することができました。具体的には、大宅壮一文庫、三康図書館、東京国立博物館、東京外国語大学などで、様々なテーマに基づいたエディタソンを開催しました。ウィキペディアやメタウィキ上にそれらのイベントのプロジェクトページを作成しているほか、ウィキメディア財団のブログ Diff にもレポートを寄稿しています。
また、編集イベントのみならず、図書館の見学会も実施しました。ご協力いただいた関係者の皆様に心よりお礼申し上げます。
海外のウィキメディアンとの提携
2023年8月、シンガポールでウィキマニアという国際イベントが開催されました。このイベントに招待された Eugene Ormandy は、当地でマレーシアのウィキメディアン Taufik Rosman、トルコのウィキメディアン Caner と親しくなり、帰国後に Wikimedia Japan-Malaysia Friendship と Wikimedia Japan-Türkiye Friendship というプロジェクトを立ち上げました。
これらのプロジェクトに基づき、国際交流イベントをいくつか開催しました。9月にはマレーシアのウィキメディアンとのウィキペディア編集イベントを開催したほか、10月にはインドネシアのウィキメディアンも交えたウィクショナリー編集イベントを開催しました。また、12月には東京国際大学とマレーシア国際イスラーム大学の協力のもと、ウィキペディアの編集イベントを開催しています。なお、このイベントはASEAN、在マレーシア日本大使館、ウィキメディア財団の協力を得ました。
トルコとの交流プロジェクトではまず、早稲田Wikipedianサークルとイスタンブール・ビルギ大学ウィキペディアクラブとの姉妹協定を結びました。
その後、日本、トルコそれぞれで編集イベントを開催しました。時差の関係もあり、Zoom 等で交流した同時エディタソンはまだ開催できていないのですが、今後実施できればと思います。
メンバーによる多様な活動
上記以外にも、様々な活動が行われました。
2023年11月には、Takenaei Higuchi さんが「要出典なウィキ話」というポッドキャストを立ち上げました。このポッドキャストでは、ウィキペディアにまつわる様々なニュースのほか、Takenari Higuchi さんが執筆活動を通して経験したことなどが紹介されます。管見の限り、ウィキペディアをテーマとした継続的な日本語ポッドキャストはこれが初めてです。
また、辞書に関心がある Lakka26 さんは、2023年9月に「辞書尚友」という学生サークルを立ち上げました。このサークルは、辞書好きの学生による勉強会を開催したり、SNS やブログメディア note での発信を積極的に行ったりしています。辞書尚友に入会した学生が早稲田Wikipedianサークルにも加入するという流れも生じており、今後の動向が楽しみです。なお、Lakka26 さんは、初心者ウィキペディアンのための講師としても活躍しました。
他にも、Uraniwa さんがウィキメディア財団のブログ Diff にご自身の編集論を寄稿しました。特に「調査手法の一事例:些細な誤謬を訂正する」という記事は、国立国会図書館デジタルコレクションの活用記録としても非常に有用な資料です。また、コヨミヤさんも Uraniwa さんとの対談記事で Diff デビューを果たしました。
さらに、『慶應塾生新聞』の学生記者としても活躍する和田幸栞さんは、同紙の「「架空の歴史」気付かず10年…本当に使えるウィキペディアの”認定記事”」という記事で早稲田Wikipedianサークルを取り上げてくれました。その素晴らしい取材スキルについては、Diff でまとめていますので、こちらもあわせてどうぞ。
また、他のメンバーも、各自のペースでウィキペディア編集を行いました。2月には Dassaim さんが大幅加筆した「民藝運動」の記事が良質な記事に選出されたほか、12月には Gynaecocracy さんが翻訳した「北京クィア映画祭」が新着記事に選出されました。また、McYata さんは「アイスクリーム・フォー・ブレックファスト・デー」「アイスランドにおける禁酒法」といったユニークな記事を翻訳立項しました。
メディアに登場
早稲田Wikipedianサークルの活動は、しばしば各種メディアで取り上げられました。
3月には、日本の出版社ダイヤモンド社のウェブメディアにて、インタビュー記事が2本公開されました。このインタビューでは、同社から出版された書籍『独学大全』とウィキペディア編集の相性の良さについて、サークルメンバーが語っています。
また、東京都の大宅壮一文庫で開催した編集イベント WikipediaOYA について、同館職員の鴨志田浩さんが、雑誌や学会で紹介してくださいました。鴨志田さんには常日頃お世話になっており、頭が上がりません。
他にも、ウィキペディアでは「利用者:さえぼー」として活動する、シェイクスピア研究者の北村紗衣さんも、各種メディアで当サークルを紹介してくださいました。『白水社の本棚』に寄稿したエッセイ「東京国立博物館ウィキペディアエディタソン」では、当サークルが同館で開催したエディタソンを取り上げてくださったほか、アルク社のウェブメディア『ENGLISH JOURNAL』で行っている連載の後継者として Eugene Ormandy を推薦してくださいました。なお、12月には両名の対談記事が公開されました。
8月には、Eugene Ormandy がウィキメディアン・オブ・ザ・イヤー2023の新人賞を受賞し、ウィキメディア財団とジミー・ウェールズ(ウィキペディア創設者)から表彰されました。これを受けて、ウィキマニアにおける表彰式や、受賞者を紹介する Diff 記事で、早稲田Wikipedianサークルの名前が紹介されました。
また、受賞を受けて Eugene Ormandy は、マレーシア・シンガポールのテレビ番組や、BBCのポッドキャスト番組に出演しました。残念ながら早稲田Wikipedianサークルについて語った部分はカットされてしまいましたが、ウィキペディアの魅力などはアピールできました。
感想
サークルが想像以上に発展し、創設者として大変嬉しく思います。このサークルはもともと、私がGLAMにウィキペディア編集イベントを開催するよう交渉する際のペーパーカンパニーのつもりで立ち上げたのですが、いつの間にか実際に人が集まり、様々な活動を行うようになっていました。メンバーがそれぞれの強みを生かして、独自の活動を行っていることは非常に嬉しく思います。
サークルに携わる上で私が肝に銘じているのは「自分のコピーを作ろうとしない」「できないことや苦手なことをメンバーに強制しない」「完璧や大成功を目指さない」です。今後も卒業生として、学生メンバーの主体性を重視したサポートを行えれば幸いです。
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