辞書マニアのウィキペディアンへのインタビュー記事が公開される

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稲門ウィキペディアン会の Eugene Ormandy です。早稲田Wikipedianサークルのメンバーで、辞書マニアの Lakka26さんにインタビューを行った記事が、2024年5月31日にアルク社のウェブメディア『ENGLISH JOURNAL』で公開されました。本稿では、公開までの経緯と記事概要についてまとめます。

書誌情報

公開までの経緯

Lakka26さんの出会いは2022年に遡ります。私が立ち上げた学生サークル「早稲田Wikipedianサークル」にLakka26さんが入会してくださり、私がレクチャーを行ったことで交流が始まりました。その後、私は卒業生サークル「稲門ウィキペディアン会」のメンバーとして活動することになりますが、Lakka26さんを含む早稲田Wikipedianサークルの皆様とは定期的に協働していました。

入会以降、Lakka26さんは着実にウィキペディアンとしてのスキルを高めていったほか、趣味の辞書にまつわる学生サークル「辞書尚友」を立ち上げるなど、精力的な活動を展開。また、ウィキペディアンの視点から辞書文化の魅力や問題点をSNSやブログで分析・発表していました。

私は「このような知見は商業媒体にまとめられるべき」と常々思っていました。そこで、自分がアルク社で連載している「ウィキペディアの歩き方」シリーズでインタビューを実施したいと Lakka26さんにオファー。幸いご快諾いただいたので、4月末から5月にかけて、インタビューと写真撮影を実施しました。

Takenari Higuchi, CC0

記事概要

以下、インタビュー記事の概要を記します。

第1章「ウィキペディアの編集を始めたきっかけ」で Lakka26さんは「辞書の『敵』を知るために」早稲田Wikipedianサークルに入会したと語り、続く第2章「辞書のライバルから学ぶ:ウィキペディアンになってから」では、実際に編集を行うようになったことで生じた、ウィキペディア観の変化、さらには辞書観の変化について紹介します。

第3章「辞書好きが作るウィキペディア記事」では、ご自身が編集したウィキペディア記事「明鏡国語辞典」や「LARME」を紹介。続く第4章「辞書のウィキペディア記事を編集する難しさ」では「辞書文化そのものにまつわる資料があまり存在しないため、辞書に関連するウィキペディア記事を編集するのは難しい」と指摘したうえで、辞書業界への提言を行います。

辞書関係者の方々には、辞書に関する記録を多くの人が見られる媒体で残してほしい――私はそう強く願っています。これは決して、私がウィキペディアの記事を書きたくて言っているのではありません。どんな文化も記録しなければ途切れてしまいます。特に高齢化が進んでいる辞書業界において、これはもっと危機感を持って取り組まなければならない課題のように思います。

インタビュー記事より引用

第5章「今の辞書の魅力と課題とは?」で Lakka26 さんは、辞書業界は記録文化を醸成するほかにも、売り方を工夫する必要があるのではと指摘。この時は私も盛り上がってしまい、『旺文社国語辞典 第12版』の宣伝文句についてダラダラと愚痴を述べてしまいました。

第6章「辞書を編さんしたいとは思わない」ではタイトルのとおり、Lakka26さんは「実際に辞書編さんしたいと思っているわけではなく、辞書の構造やユーザー意識を分析することにより興味がある」と語ります。また、「ウィキペディアの編集も、辞書をより深く分析するために行っているという感覚です」とも語ります。

話が逸れますが、私は Lakka26 さんのような「手段」としてのウィキペディア編集は、今後ウィキメディア・プロジェクトが発展していく上で非常に重要なものだと思っています(もちろんそれらの編集が各種方針を遵守していることが前提ですが)。ウィキペディアを編集すること自体が目的である人や、私のようなウィキメディア・オタクしか編集に参加しなかった場合、ウィキメディアは人手不足で滅びるからです。

閑話休題。第7章「辞書コミュニティにおけるウィキペディア」で Lakka26 さんは、既存の辞書とウィキペディア等が対立構造で語られる現状に対し、どちらもなくなることはないからこそ共存・使い分けの道を探ってほしいと指摘。その上で第8章「辞書コミュニティでの新たな目標」にて、今後は辞書・ウィキペディアのユーザー研究や、辞書文化の記録に携わりたいという目標を掲げます。心強いですね。

感想

「辞書マニアのウィキペディアン」による言説をきちんと記録することができ、とりあえずほっとしています。幸い、辞書ファンの皆様やウィキペディアンの皆様からも、好評をいただくことができました。

このインタビュー記事が、辞書文化の発展に役立てばいいなと個人的には願っています。また、ファンダムとウィキペディア編集の関係にまつわる研究・分析の役に立てば望外の喜びです。

末筆にはなりましたが、インタビュー記事をご覧いただいた皆様、編集と撮影を担当してくださったアルク社の山本様、そして Lakka26さんに心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

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