初参加@ESEAPカンファレンス ~日本人ウィキメディアン達の学び~

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ESEAP(ウィキメディアの東アジア、東南アジア、太平洋地区地域協定)カンファレンス2024が2024年5月にマレーシアのコタキナバルで開催され、日本から3名の利用者さんが参加しました。それぞれにとって初参加であったESEAPカンファレンスについて、一緒に振り返っていただきました。

左から:Tofeikuさん(ESEAPカンファレンス主催者メンバー)、VZP10224さん、
Wadakuramonさん、Eugene Ormandyさん / Jason Liow, CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons

ESEAPカンファレンス参加のきっかけ

Wadakuramonさんは、2016年3月に編集を開始し、2023年に『70歳のウィキペディアン 図書館の魅力を語る』を出版されました。ESEAPカンファレンスはご存じでしたか。

Wadakuramon:ESEAP Conferenceについては何も知らなかったのです。昨年12月にポーランド(2024年ウィキマニア)の応募書類を出しましたが、1月にスカラーシップ(助成金)締め切り前日の段階でこのカンファレンスについて人から聞いて、一晩考えた末、未経験ですがウィキマニアにも応募したし、とにかく応募してみることにしました。

VZP10224さんは、長年jawpの管理者を務められ、当カンファレンスには2023年に設立したWikimedians of Japan User Groupを代表し、参加されました。なぜESEAPカンファレンスに参加しようと思ったのですか。

VZP10224:ユニバーサル行動規範の草案がかたまるときに、当時財団にいたスタッフが日本語版管理者に話をなげかけたことにより、「民主的なプロセスが動いてものごとがかたまっている」ということを知り、衝撃を受けました。昨年のシンガポールでのウィキマニアの助成金に個人で申し込みましたが準備不足もあり通りませんでした。その後立ち上がったユーザーグループに参加し、ポーランドのウィキマニアの助成金応募に間に合わなかったとう話をしていたらESEAPがあることをグループ内で教えてもらったので申し込みました。

Eugene Ormandyさんは、多くのDiff読者はよくご存じの通り、早稲田Wikipedianサークルと稲門ウィキペディアン会を創設され、ウィキマニア2023では日本から初めてのウィキメディアン・オブ・ザ・イヤー(新人賞)を受賞されました。意外にも今回初めてESEAPカンファレンスに参加されたのですね。

Eugene Ormandy:実は、私は最初から国際的なウィキメディア・ムーブメントに興味を持っていたわけではありません。一応2023年にはシンガポールのウィキマニアに参加しましたが、それは自分から積極的に手をあげて行ったわけではなく、ウィキメディア財団から「あなたをウィキメディアン・オブ・ザ・イヤーに選んだよ。交通費は出すからぜひ来てね」と誘われたから行ったに過ぎませんでした。とはいえ、ウィキマニアで様々なことを学び、そこで出会ったウィキメディアンたちと日本マレーシア友好会や、日本トルコ友好会といったプロジェクトを立ち上げてからは、国際的なムーブメントにも多少関心を抱くようになりましたね。そんな折、ESEAPカンファレンスの主催者メンバーで、マレーシアとの友好プロジェクトにも参加してくれている友人から「もし都合が合えばぜひESEAPカンファレンスに来てね」と誘われたので、スカラーシップに応募しました。

Wadakuramon:トルコにはもともととても興味があったのですが、マレーシアについてはほとんど何も知りませんでした。それでもEugeneさんが立ち上げられた友好プロジェクトに加わりエディタソンに参加したところ、それぞれ知識の下地ができて、マレーシアについてもカンファレンス前にだんだん興味がわいていきました。

Eugene Ormandy:それはよかったです!

実際カンファレンスに参加して感じたこと、今後やってみたいこと

VZP10224:私はテクニカルなカンファレンスかと思ったらメタな話をしていたのが衝撃でした。「こんな活動をしていますよ、という発表の場だろうな」と予想していたのが今回行って、大きく覆されました。ESEAP地域の大きな方針などがこういった場で討議されて、それが方針としておちていくことに感銘をうけました。管理者として長年色々な方針に触れてきてきましたがこれまでは、「メタに行っても、様々な情報がごった返していて、どこに何が書いてあるかよくわからない」という印象でした。つい先日、日本国内で積極的にアウトリーチ活動をされている方とお話したのですが、やはり世界的な潮流についてはあまりご存じなかったのですので、大半の日本語版利用者が似たような状況かと思います。そこで、財団の動き方や方針のプロセスがちゃんとコンプラインスのバランスがちゃんと整っていて、ウィキメディアはの方針は財団の偉い人たちが決めているわけではなく、意思決定のプロセスに個々の利用者が参加できる、というようなことをアピールしていくことが必要なのではないか、と思います

Eugene Ormandy:ガバナンスにユーザーたちが参加するべき、というのは私も同感なのですが、「めんどくさい」「なんとなくだるい」「よくわからない」と戸惑っているひとも多いのではと思います。私もそうでしたし、今も4割くらいはそうですからね。なお、自分が昔よりはガバナンスに興味を抱くようになったのは、ウィキメディアン・オブ・ザ・イヤーに選ばれてある意味「強制的に」ウィキマニアに行ったからです。ここで「自分はウィキメディア財団に投資されたんだな」と思ったので、そのリターンをしっかりと出すために、この1年で国際交流プロジェクトを立ち上げたり、ガバナンスについての勉強をしたりしました。本来であれば、ボランティアたちが自発的にムーブメントに関わっていく姿が理想であり、その機運の醸成が重要なのですが、その一方で「手を挙げていないが色々やってくれそうな人に賭けてみる」といった投資が多少あってもいいのではと思います。

Wadakuramon:Eugeneさんの「投資」という言葉で思い出したのですが、(カンファレンスそのものに加え)報告書作成により、ウィキメディア財団はこういう方法で人を育てているんだな、私も育てられているんだな、感じました。報告書だけではなく、ウィキメディア運動のことを知らないとまず助成金の申請書を書けないので、色々読みました。こうやって自分がどんどん変わっていく、去年までとは全然違う人生を生きている自覚があります。

VZP10224:私は日本で国内だけに目が向いている人たちを、どうやってESEAP地域や世界の動きにつないでいくか考えたいです。ESEAPカンファレンス後に参加したオープンソースカンファレンスでは、エンジニアの方が多く集まるため、ウィキデータに対して「こんなものがあったんだ!」会場に受け入れられたので、ウィキデータを中心に色々なプロジェクトがあること紹介していきたいです。自分もエンジニアという立場から、まずはオープンソースカンファレンスという場を活用していこうと思いますが、国内の色々な場でウィキメディアプロジェクトや運動について説明していく方法を考えていきたいです。

Wadakuramon:ウィキデータに関しては、Diffでウズベキスタンの人がトルコでウィキデータの講習会に参加したことが書いてあったので、「そんなものは日本では聞いたことがない、どうしてやってくれないのか」と思いました。このように、Diffを読んで分かることが沢山あるので、私は個人の利用者としてDiffに「日本のことを海外へ」そして「海外のことを日本へ」書いたり、翻訳していきたいです。ちなみに、つい最近Diff日本語版同好会をフェイスブックでつくったら、まだできて間もないのですが、やっていることを自由に話せる「自分の居場所」が見つかった気がしています。あと、まだどういう形でかは分かりませんが、図書館総合展で何かできれば、と考えております。

Eugene Ormandy:ウィキマニア同様、ESEAPカンファレンスも「カジュアルな学会」という感じでしたね。個人的には、前年のウィキマニアで出会ったユーザーたちとの旧交を温めつつ、新たな出会いも楽しむことができました。また、仲良くなったユーザーたちと一緒にDiffや東アジアに関するテレグラムグループを作ったので、このネットワークを活用して何か新しいことができればなと思っています。なお、今回のESEAPカンファレンスには大変満足していますが、今後改善できる点もありそうだなと感じました。具体的には、ESEAPとそれ以外の地域がどのようにつながっているかという分析や実践紹介などがもっとあるといいのではと思いました。

Wadakuramon:あと驚いたのは、イスラム圏カルチャーのエネルギーですね。お酒を飲まなくてもみんな楽しめるという文化もそうですが、帰ってきてからDiffを訳したメダンという10人くらいのグループだけどいっぱい活動しているのは衝撃でした。また、ウィキ・ヌサンタラの集まりが去年も今年もあって、ヌサンタラはインドネシアの新しい首都ですが、それについて前からウィキメディアンたちが集まって話していたことを知って、若いエネルギーを感じました。そういうものが日本にもあるといいな、と思いました。

Eugene Ormandy:日本で(アクティブな)ウィキペディアンが10人あつまって何かやるという事例は、そこまで多くはないと思います。私の場合でも、集まるときは普段4、5人だったり、エディタソンをやるにしても10人程度ですね。

VZP10224:私はウィキペディアから入り、他のオープンソース・ソフトのコミュニティ活動も見聞きしているのですが、日本では利用者同士がみんなでオフラインで連んで何かをやるという意識が弱かったり、そういうことに対してよくない感情を持つ傾向も正直感じています。でもウィキペディア20周年のときは確か、、、

Wadakuramon:オンラインでしたね。

VZP10224:再来年は25周年になると思うので、まだ先のことですが、そのときにエディタソンなのか、ローカルカンファレンスなのか、何か考えていけるといいですね。

今回みなさんは2日目の「コミュニティ・スポットライト:日本」というセッションにてそれぞれ下記の通り発表されましたがいかがでしたか。また、英語での発表で意識したことはありましたか。

Wadakuramon:機械トラブルが途中であったのですが、質疑のところでは圧倒的にVZP10224さんの発表にあった日本の状況について色んな中身の濃い質問があり、全体としてみなさんちゃんと聞いてちゃんと質問してくださいました。

Eugene Ormandy:VZP10224さんの発表に対しては、主に二方向のコメントや質問がありました。一点目は調査の希少性について。このようなコミュニティが主導するウィキメディアンへの計量的な調査はあまりなかったので、皆さん感心していました。特にオセアニア地域の方は「こんなに詳しい調査をやられたのですね」驚かれていましたね。二点目は「ユーザー数が多いにもかかわらず、なぜグローバルなウィキメディアムーブメントに日本語のユーザーがほとんど参加しないのか」という質問ですね。これに対してVZP10224さんは、「日本のユーザーは特に匿名性を重要視している」と回答されていました。

VZP10224:Wadakuramonさんのセッションで「私本を買います、アマゾンで本を探したけど」という方がいらしたのがよかったですね。

Eugene Ormandy:生涯教育のツールの一つとしてのウィキペディアというWadakuramonさんの分析は、少なくてもESEAPカンファレンスでは似たようなものは見られませんでしたし、タイトルからしてキャッチーでしたので、皆さんの興味を引いたのではないかと思います。また、司書として働いていたWadakuramonさんのプレゼンを聞いて「やはり司書はよいウィキメディアンになれるよね」と話していた方もいました。会議の参加者にはGLAM関係者のウィキメディアンも何人かいらしたので、共感するポイントも多かったのではないかと思います。

Wadakuramon:参加者レポートにも私の本について書いてくださった方がいたのが嬉しかったです。読みたいと言ってくださる方にお会いしたので、想定していなかったのですが、本を少しずつ英語に翻訳しはじめていて、Diffに第一章冒頭を載せました。

Eugene Ormandy:私はアラカルト方式で自分の活動を紹介したため、ウィキメディアムーブメントや私の活動をある程度知っている人は理解してくださったと思いますが、人によっては分かりにくい部分もあったかもしれませんね。

Wadakuramon:英語での発表については、前の仕事でほんの少し経験はありますけど、うまくないから練習するしかないと思っていました。本番2週間前に息子に一度聞いてもらったら、「英語そのものはわかるからゆっくり話すように」「最初に挨拶と自己紹介をするように」とアドバイスをもらったので、家族構成やどこに住んでいるかといった話を原稿にいれてみたのですが、どうでしたか?

VZP10224:自分が何者であるか語ってから中身に入るのは私も大事だと思います。私は今回そこまで事前に準備できなかったのですが、それでもみなさん聞いてくださって非常に有難かったのと、やってみて「なんとかなる」と自信がつきました。次回はWadakuramonさんを見習って、英語で途切れず話せるようにやってみたいと思います。

Eugene Ormandy:英語での発表は「慣れ」だなと感じました。

最後に、まだウィキメディア・カンファレンスに参加したことのない利用者さんに一言お願いします。

VZP10224:「いってみると、世界は変わるよ」
特にアクティブに活動している編集者や管理者を経験したことのある人たちに、リアルで人とつながれる場をもっと知ってもらいたいです。

Wadakuramon:「若い方はもちろんのこと、年齢に関わらず一歩踏み出してみてほしい」
「私の歳だから」「私だから」できることがあればやってみたいのですが、それはどんな人にもあると思うので、こういう機会を大事にしてほしいです。

Eugene Ormandy:「大変残念ながら、行かないと分からないことがいっぱいある」
本来であれば、実際に参加していない人間でも、議事録等を通じて会議の動向を把握できるべきだと思いますし、そのために自分もチマチマと記録を作成していますが、やはり実際に行かないとわからないことは沢山あります。楽しいかどうかは人それぞれでしょうが、自分のスキルをあげたい人は一度いってみるといいのではと思います。ちゃんと機会を活かせば情報収集能力や処理能力が劇的にあがると思いますよ。

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